平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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アスカロンのこととか


赤き龍帝25

 

「"初めまして"。私はミカエルといいます」

「"初めまして"。赤龍帝、兵藤一誠です」

二人は平然と微笑みを交わす。

茶番である。

今回の会は"非公式の顔合わせであり会見という体の公式の場"という他勢力にも知られた公にされたコンタクトである。"前回"の秘密の会合とは違う。お互い公の立場に基づいた言動をする必要がある。

熾天使(セラフ)のミカエルさんが俺に何の用ですか?」

「三勢力が再び戦争を始めることを未然に防いでくださったあなたにお礼を言いたかったのです」

「俺は降りかかる火の粉を払っただけです」

「その火の粉の源となったのはこちらの不始末でもありますから」

ミカエルは二振りの聖剣を取り出す。一振りは真新しい鞘に収められた偽造の聖剣(エクスカリバー・カウンターフェイト)。もう一振りは何やら竜殺しの力の秘められた聖剣だった。

「…これは?」

「あなたへの感謝と期待と誠意、といったところでしょうか。あなたが生まれ変わらせた聖剣(エクスカリバー)に教会の保有していた最後の聖剣(エクスカリバー)を合わせたものと、アスカロンです」

一誠はまずエクスカリバーを手に取って調べる。

「…この鞘が祝福の聖剣(エクスカリバー・ブレッシング)、ですか」

「比較のために並べたところ、砕けてしまったので作り直したのですよ」

「…確かに、これ(・・)は己の居場所がないことを嘆いていますね。…悪いことをしたかなあ」

悪気はなかったのだ。やるならできる限り完璧に近いものにしたかっただけで。

「聖剣の意思、ですか」

「そういう雰囲気を感じるというだけですけどね」

エクスカリバーを籠手に収納し、今度はアスカロンを手に取る。このレベルなら、普通の剣よりはダメージが大きいだろうが、致命的という程ではないだろう、と思う。

「ところで、よりにもよってアスカロンってのは、何かの皮肉ですか?」

アスカロンの伝承上の担い手は(セント)ジョージ、或いは聖ゲオルギウスという人間である。竜退治の代わりに苦しんでいた民にキリスト教への改宗を迫ったり、異教徒に改宗を迫ったり、死にたくなかったら改宗しろと迫ったり…簡単に言うと戦士であり宣教師であった人物である。聖騎士(パラディン)の走りといってもいいかもしれない。とある世界では敵対者に竜属性を付加し、竜特攻武器で斬りかかってくるヤバい人だった。よく考えなくとも狂信者である。

「あなたに贈る相応しい格の高い聖剣、というだけで、深い意味はありませんよ。…あなたのライバル(・・・・)との戦いで活用して頂ければ、とは思いますが」

「剣術の心得のない俺に扱いきれるかわかりませんけどね」

まあ、常識的な大きさと形の剣なのでどうにかなるだろう、と思いたい。

"以前"見たアスカロンは、到底常人の扱えるものではない大きさと重さとギミックを備えた、規格外の霊装だった。まあ、50フィート(約15m)のドラゴンをそれ一本で斬ることを目指した結果生まれたものらしいが。

「でも、ありがたく受け取っておきます」

二振りの聖剣を籠手に収納し、一誠はミカエルに礼をする。

内実、アスカロンは前回ミカエルに渡した12本の量産型聖剣(コピー・カリバーン)と七つに分たれた聖剣(エクスカリバー)と同じ能力を備えた偽・破壊の聖剣(ディストラクション・カリバーン)他5本の対価である。

18本の聖剣(カリバーン)と2本の聖剣というのは等価と言っていいものか一誠にはよくわからない。何故なら、いずれも一誠にとっては大した価値はないし無用の長物でしかないからである。それでも受け取って籠手に収納したのは、ドライグが活用してくれないか、という希望的観測からだが。

「あなたと争わねばならない日が来ないことを心から願います」

「俺も、無用な争いのないことを心から祈りますよ」

偽りのない本心である。一誠が祈る相手は聖書の神ではないが。彼が祈るのはまあ、兵藤家の氏神か仏あたりである。"聖書の神"ではないので祈りのダメージも発生しない。まあ、そうでなくともダメージを受けないようにできるのだが。

 

「どう、ドライグ。エクスカリバーは使えそう?」

『…慣れるまで練習が必要かもしれないが、使えそうだ。アスカロンの方は、籠手に竜殺しを付加させるくらいならやってやれないことはないだろうが…特に特殊な力を持っているわけでもなさそうだからな…』

「それだけできれば十分だよ。仲間に渡して使ってもらう、って手もあるしね。俺が直接使うよりは祐斗かゼノヴィアに任せた方が活用してくれそうだし」

『仲間、か…まあ、そういう手もあるか』

しみじみと、ドライグが呟く。

『どちらも信頼できる相手でなければ渡せない聖剣ではあるだろうが…まあ、相棒ならどうにかなるのだろうな』

色々な意味で。

一誠には聖剣もさして大きな意味を持たないのである。普通の悪魔であれば弱点を突かれることになってしまうのだが。

 

 

 




某ゲオルギウスさんとは多分敵対状態での遭遇での感想

ちなみに天閃は実質量産型が上位互換化しているので偽・天閃の聖剣(ラピッドリィ・カリバーン)はない
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