「朱乃先輩ってそうしてると悪魔に見えないですよね」
朱乃は巫女装束に身を包んでいた。しかし、巨大な胸部装甲を誇るという意味でも性的な匂いを消しきれていないので(本人に消す気がないのもあるだろうが)清らかには見えないのだが。そういう意味では、やはり巫女らしくもないのだとも言える。
「私も生まれながらの悪魔ではありませんから」
「堕天使と人間のハーフ、ですよね」
驚いた顔をした朱乃に一誠は穏やかな笑みを返す。
「…何時から気付いていたんですか?」
「堕天使の血を引いているというのは最初に顔を合わせた時から気付いていましたよ。丁度堕天使、それも自分の力を隠している(と思っている)堕天使を見たところでしたし。ハーフだと断定できるようになったのは最近ですけど」
だから、一誠は朱乃が年長者として頼りになるタイプではないと思っている。
「…イッセー君は、堕天使の血を引く私を軽蔑しますか?」
「何故?堕天使の血を引くことは姫島朱乃というヒトを形作る一つの要素ではあっても、それ自体はただの事実であって美点でも悪点でもないでしょう」
まあ、と一誠は付け加える。
「何らかの事情が有って己の中の堕天使を嫌っているにしても、全力を尽くすべきところで全力を尽くそうとしなかったことに関しては軽蔑していると言ってもいいかもしれません」
小猫のように己の力を恐れていたわけではない。ギャスパーのように制御しきれなかったわけでもない。ただ、使いたくないから使わないだけだ。そうやって手段の選り好みができるだけの高い実力を備えているわけでもないのに。
「・・・」
「あなたは弱い。弱いことは必ずしも悪いことじゃありませんけど、強さを装いたいなら相応に力を尽くさなければ中途半端です。己の弱さを認めて、それと向き合っている人の方がよっぽど強いでしょうね」
「…確かに、私は弱いのでしょうね」
朱乃は堕天使と悪魔の二対の翼を広げる。
「
朱乃の自虐的な言葉を一誠のチョップが遮る。
「それ以上は言わせません。それはあなた自身を傷つける言葉であると同時にリアス部長たちへの侮辱です。堕天使も悪魔も化け物じゃないし醜悪でもない。そうなったとしたら本人の問題だし、勿論朱乃先輩は当てはまらない」
「…イッセー君」
「あなたは両親に愛されて生まれたはずだ。それなのに、自分の両親の言葉より、あなたが堕天使の血を引くという事実だけを見てあなたを否定する人たちの言葉を重要視するんですか?」
真っ直ぐに己を見る一誠を見つめ返し、朱乃は涙ぐむ。
「…だって、私がいなければ、母様が殺されることはなかった…!」
「違います」
静かに断言され、朱乃は思わず呆けた顔をする。
「どんな事情であれ、意図して殺したのであれば罪は殺した人にあります。何もできない子供に負うべき罪はありません」
何故なら、その時の朱乃に変えられることは何もなかった。無力を罪とする者もいるかもしれないが、この場合は当てはめるべきではないだろう。
「でも…」
一誠は静かに朱乃を抱きしめる。
「自分を責めなくてもいいんです。悪魔になることを選んだのなら、悪魔らしく自分の幸福のために生きてもいいんです」
泣いている子供を宥めるように、一誠はぽんぽん、と朱乃の背を撫でる。
「俺は、朱乃さんに今が幸せだって笑って欲しいです」
「…ありがとう、イッセー君」
肩口に顔を押し付けて静かに泣く朱乃の背を撫でながら、一誠はちらりと襖の一つに目をやる。声をかけるのは朱乃が落ち着いてからにするべきだろう。…あちらから出てこなければ、だが。
暫くの沈黙の後、一誠は朱乃に問いかける。
「落ち着きましたか?朱乃先輩」
「…ええ。イッセー君には見苦しいところを見せてしまいましたね」
「俺たちは仲間ですから、頼っていいんですよ。…ね、リアス部長」
「…気付いてたのね、イッセー」
「リアス」
「部長の気配は俺が知る悪魔の中で一番わかりやすいですからね」
襖を開けて入ってきたリアスに、一誠はにっこりと笑う。リアスは少し気まずそうな顔をした。
「出歯亀なんて無粋じゃないかしら、リアス」
「私はそんなつもりで居たんじゃないわよ…っていうか、
「そうかしら」
うふふ、と笑ってみせる朱乃に一誠は苦笑する。正直、一誠は邪な気持ちは一片たりとも持っていなかったのでそう言われても困る。
ちなみにヤンデレ依存系ヒロイン怖いマンなので俺が、じゃなくて俺たちが、って言うんですこいつは