「これは…ギャスパーの神器、か?」
『だろうな』
室内にいた者の様子をざっと見る。止まっていないのは各勢力トップ、ヴァーリ、グレイフィア。学生組では一誠と祐斗、ゼノヴィアに小猫、アーシア、匙。それ以外の者は停止させられているようだ。
「サーゼクス様、俺をギャスパーの救出に向かわせていただいても構いませんか?」
「策はあるのかい?」
「策と言う程のものはありませんが、気付かれずに彼のところまで向かって合流することまでは出来ると思います」
ただし、一人で行動するなら、という注釈はつくが。
「一人で合流して、何ができるのかな」
「少なくとも、このままギャスパーを一人で敵の中に置いておくよりはこの状況を好転させられる可能性があります」
「それなら、私も一緒に行きたい、です」
「一人でどうにかしようとするのは君の悪い癖だよ、イッセー君」
「…。…転移で向かうのであれば、一緒に向かっても気付かれないでたどり着けるだろうけど…」
「ステルス特攻でもする気だったのか?別の場所に陽動を出して引き付けるとかではなくて?」
「陽動ならうちのヴァーリにやらせればいいんじゃないか?白龍皇が出てくりゃあ、あっちも無視できないだろうからな」
「私は…ついていっても足でまとい、ですよね…」
「…では、リアスの眷属の君たちに命じよう。
サーゼクスの鶴の一声に、彼らは口々に了承の意を返す。
「じゃあ、敵の真ん中に突入することになると思うから、そのつもりでいてくれ」
一誠が踵を三度鳴らして柏手を打つと、足元に大きく魔法陣が広がる。
「"開"」
その一言で転移魔術が発動し五人の姿が消える。
「…策がない、っていうよりも必要ない、って感じみたいだな。おいヴァーリ、お前も行ってきてくれるか?」
「…ああ、わかった」
オカ研の部室、その中空に転移した五人の足元に、すぐさま仮の足場が形成される。それによってすぐ体勢を整え、前衛三人はその場の魔術師の無力化に向かう。アーシアと一誠はギャスパーに駆け寄る。
「ギャスパー!」
「ギャスパーさん!」
「…ぁ、先輩…?」
ごすっと音が出るレベルで一誠はギャスパーの頭にチョップした。
「いっ…」
「イッセーさん?!」
「男の癖に囚われのお姫様になってどうする!君は、強くなるんだろ?こういう時に奮起しないで、何時奮起するんだ」
「そ、そんなこと言われても…一人で、心細くて、多勢に無勢だし、痛いし、苦しいし…」
「それでも、途中で諦めるなよ。コウモリ化してあっちまで逃げてくるとか、色々あっただろ。ちゃんと助けを求めてくれなきゃ、俺たちも君を助ける必要があるって気付けない」
「…すいません」
「…とまあ、説教はこれくらいとして。助けに来たぞ。もう大丈夫だ」
ギャスパーを拘束していた術式は破壊され、"外部からの干渉"も破棄される。
「うぅ、イッセー先輩~」
「君はもう一人じゃない。…神器の制御も、ちゃんとできるな?」
「はい、頑張ります!」
「怪我等はない、みたいですね」
「アイツらにとってはギャスパーの禁手が長時間続いた方が都合が良いはずだからな。不用意に体力を減少させることはしないだろう」
或いは、傷を負わせても回復させたかもしれない。
「イッセー君、こっちも片付いたよ」
「ギャー君も、ピンピンしてるみたいですね」
「此処からどうするんだ?また転移して魔王様方のところに戻るのか?」
「…いや、今転移で戻るのはあまり良くなさそうだ、歩いて戻ろう。此処に留まっている訳にもいかないだろうし」
「何か、起こっているんですか?」
「そこら辺に転がってる魔術師たちよりは強いけどレヴィアタン様よりは弱いかな、程度の敵があの場に突入してきているみたいだ。俺たちがサーゼクス様たちの気をそらしたらいけない」
「それは、微妙な評価だね。僕たちじゃ相手にならない、かな」
「それはちゃんと会ってみないとわからない。…でも、とりあえず移動しよう」
「僕とゼノヴィアさんが先行すればいいんだね?」
「ああ。あ、だが、ゼノヴィアのデュランダルは狭いところの戦いに向かないから…これを使ってくれるか?」
「これは…アスカロンか?何故君が…いや、それは後にしよう。ありがたく使わせてもらう」
「私はアーシア先輩の護衛、ですか?」
「ギャスパーが大丈夫そうならな。…ギャスパー、いけるか?」
「え、は、はい。僕だって男ですから、女の子に守られてるつもりはない、ですよ。いけます!」
「アーシアは皆のサポートを頼む」
「はい!」
「それじゃあ、皆、行動開始だ」
「ああ」「ああ!」「はい」「はい!」「はい」
『…これではグレモリー眷属というよりイッセー眷属だな』