平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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修行開始


赤き龍帝36

 

 

「だから、他人にトレーニングメニューを決めさせるのは嫌なんだ」

一誠は大きく溜息をつく。

「お前に全体的な身体能力が足りてないってのは事実だと思うが?」

「そう思われるのがまず大きなお世話なんですよ」

『相棒が肉体的に弱いのはどうしようもない。人の身で高い魔力を持って生まれたことの代償のようなものだ』

「そもそも俺は戦士じゃなくて魔術使いだし」

「リアス=グレモリーの兵士だろう?」

「ええ、俺は部長の兵士(ポーン)です」

兵士(ポーン)には他の駒の役目を代わることもあるんじゃないか?」

「だとしても俺の身体能力をこれ以上上げようってのは非効率通り越してナンセンスです。…そりゃ、成長限界じゃないかもしれませんけど、劇的な上昇はどうやっても無理です」

これはもう、そういうもんだとしか言えない。一誠は鈍臭いということはないが運動が苦手。その事実は変えられない。ただ、基準が変わるだけだ。

「…面倒くさがってるだけ、ってわけでもなさそうだな。…なら、こうしよう。"実践訓練"だ。そっちならやるだろう?」

「…そこで妥協しておくしかなさそうですね。何処までやっていいんですか?」

「神器を一切使わないか、神器のみを使うかの二択だ。流石に、お前の魔術が神器で強化されたら分が悪そうだからな」

「じゃ神器禁止で」

『即答?!』

ショックを受けた様子のドライグに一誠は平然と返す。

「そりゃ、普通に勝率高そうな方選ぶに決まってるだろ?」

その言葉にタンニーンも苦笑した。

「いずれにしても勝ち目がない、とは思わないのだな」

竜殺し(ドラゴンスレイヤー)の"経験"も皆無ではありませんからね」

何時の間にか、一誠の手には分厚い書物があった。

魔導書(グリモワール)起動」

書物に淡い光が灯り、独りでにページがめくれ始める。

「術式構築開始。217~223ページ、"空に向かいて地に堕ちるもの"、起動準備。114ページ、"光を背に立ちはだかるもの"、簡易起動、発動待機。77ページ、"睨みつけるものたち"、即時展開」

「っ、見たことのない魔術だな」

「この世界じゃ使われてないんですか?魔導書(グリモワール)。詠唱破棄より安定して使えるのに」

「俺は魔術は専門外だ」

 

「…大口を叩くだけのことはある、というわけだ」

「伊達に精神世界でドライグをボコしてるわけじゃありませんから」

状況は一応互角。一誠はタンニーンの攻撃を紙一重で避け続けているし、タンニーンの方も一誠の魔術はいくらか食らってはいるが決定打たり得るものは食らっていない。消耗は双方ともにそれなりである。

「成程、ドラゴンとの戦いも一応経験していると言えるわけか。…だが。俺は神器に封じられたもの(そいつ)とは違うぞ」

「そんなことわかってますよ」

『うおおおおん』

ドライグの嘆きを黙殺し、一誠は新たな魔術を起動する。

魔導書(グリモワール)五章第一節から第七節まで順次起動。"始まりの始まり"、発動準備。第二十三節、"祝福のラッパをかき消すもの"、遅延起動。第十二節、"凍れる焔"、即時発動」

魔導書から焔が吹き出し、触れたものを凍結させていく。タンニーンの火の息(ファイアブレス)がそれをかき消そうとするが、炎と焔で上手く打ち消せない。

「くっ」

空に逃れたタンニーンを次の術式が追いかける。

 

龍王(オレ)相手に此処までやるとは、噂もあながち侮れんものらしい」

「一体、俺についてどんな噂が流れてるっていうんですか…俺、そんな言われる程大したことした覚えはありませんよ」

「あのコカビエルを負かしたんだろ?下級悪魔には本来手に余る相手だ」

「無名であることと弱小の存在であることは必ずしもイコールじゃありませんよ」

「だが、話題になるには十分だ。"格下が格上を負かした"ってな」

「実際のところ、言うほどの力量差はなかったんで、そう言われても困るんですけどねー」

『寧ろそれが問題だろう』

「…お前、本当にリアス=グレモリーにたった(・・・)八つの兵士(ポーン)使っただけ(・・)で悪魔に転生させられたのか?」

「ええ。まあ、兵士(ポーン)兵士(ポーン)でも、変異の駒(ミューテーションピース)ですけどね」

「変異こみで八つ分、か。これは価値が付けづらいな」

タンニーンは僅かに考えるような素振りを見せる。悪魔になったドラゴンとして、思う所があるらしい。僅かに誤って理解されたようだが、一誠は訂正しない。面倒だからだ。それに、その場にいた一誠とリアスとドライグしか知らないということを、何らかのアドバンテージに使える可能性もなくはないんじゃないかと思う。別に、使えなくてもいいが。

「駒の価値?王の力量で同じ駒でも転生させられたりさせられなかったりするんですから、比べる意味はないと思いますけど」

あるいは、王の力量に対する指標にはなるかもしれないが。その相手を従えられるだけの力がある、という意味で。

 

 

 

 




凍れる焔の正しい対処法はお湯をかける事である
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