「今回のことはコカビエルの独断専行であり、堕天使、そして
「そうか…またお前と刃を交えることにはならないようで何よりだ。流石にまだお前とやりあって生還できる自信はない」
「俺も今の君の聖剣を無傷で乗り切れる自信は流石にないがな…」
「…二人で勝手に納得してないで、私たちにもわかるように説明して欲しいのだけれど」
不快感をはっきり表に出してそう言ったリアスに、ヴァーリは平然と返す。
「そういえば、君たちにはちゃんと言ってなかったな。俺は
ヴァーリがアザゼル直属なのは他の人の下についてもアザゼルを最優先するから、である。忠誠心とはまた違うのだが。実力的にはおそらく拮抗しているのだが、実際戦うとヴァーリがアザゼルが怪我をするレベルの攻撃ができないので最悪ノーゲームになる。
「何故そんな重要なことを黙っていたのかしら」
「俺はグリゴリの一員としてではなく、
「幾ら幼馴染でも、個人情報を簡単に漏らすべきではないでしょう?」
「そうか」
「白龍皇って、もしかして、ゼノヴィアが言ってた、
「ああ。3年前、はぐれ悪魔討伐に訪れた先でかちあってな…討伐対象と間違えて斬りかかったらきっちり半殺しにされてしまった。しかも己の未熟さを指摘され、誤解が解けてからは治療もしてもらったし…何で天使じゃないのか不思議なくらいだよ、彼は」
「あの時は反射的に半殺しにしてすまなかったと思っている。突然聖剣で切りかかられたものだからつい、な」
「悪魔が全て悪だと決めつけてはいけないのだと思い知らされたよ。まあ、はぐれは大体外道だが」
「まあ、外道ではないはぐれは滅多にいないな」
「…しかし、何故以前より小さくなっているんだ?」
「弱そうに見えるだろう?戦う必要性を感じないくらいに。…それに、年下の子供を
「ああ…」
「俺は、復讐は必ずしも悪いということはないと思うぞ。己の死もセットにするわけでなければな」
「ヴァーリ?!」
「ほら、言うだろう。復讐は何も生まない。だが、気分がスッキリする、と。自暴自棄になって己を顧みなくなったら問題だが、そうでなければ別にいいんじゃないか。無理にその気持ちを否定するものじゃない」
「・・・」
「…ん?お前…何処かで会ったことがあったか?」
「えー?俺は特に覚えがないけどー?」
「そうか」
「でも、悪魔を見つけたら狩らなきゃだよねぇ、新譜としては」
「俺を狩る、か。冗談ならいいが、本気で言っているなら正気を疑うぞ。そんな"聖剣もどき"が一本あるくらいで俺を殺せると思わないことだ」
向けられた巨大な威圧感に、フリードは冷や汗を垂らす。剣を交えるまでもなくわかる。今己が対峙している相手には、逆立ちしても勝てっこない、と。
「や、やだなー、冗談に決まってるじゃん?フリード君だって、自殺志願者ってわけじゃないし?」
「そうか。なら良かった」
ふっと威圧感がさっぱり消え、フリードは息を吐く。
「フリード、と言ったか?俺のように強くて寛大な者はそうそういない。そのような生き方をしていると己の寿命を削ることになるぞ」
「俺の寿命は気にかける程長くねぇよ」
「そうか、それは悪かった」
「・・・」
「…どうした?」
「…お前、本当に悪魔?」
「少なくとも、父は悪魔だ。…よく言われるが、何故そう疑われるのかがわからないな。こんなにも俺は自己中心的だというのに」
「自己中?何処が」
「そうだな…お前の感情の動きを全部見て取った上でゼノヴィアたちが合流するまでの時間を稼ぐためにこうして無駄話をしていたこと、かな」
「ヴァーリ、何があった?!」
「盗まれた聖剣の内一振りが見つかったぞ」
「お前は、フリード=セルゼン!」
「ちょっとゼノヴィア、一人で突っ走らないでよ…」
「何だよ、突然…」
「ヴァーリ君!」
「ヴァーリさん、大丈夫ですか?」
「…もしかしてフリード君超ピンチ?」
「大人しくその聖剣を渡せば手荒な真似はしないでやるが?」
「冗談ポイ!俺にも事情ってやつがあるんだよね」
「そうか、それは残念だ」
特になんとも思っていなさそうな顔でヴァーリは言う。
「どうやら手荒な手段に訴えなければならないらしい」
「もしもの時は俺が決着をつけてやる。安心して全力を尽くせ」
「白龍皇か。貴様、悪魔の肩を持つのか?」
「俺は悪魔の肩を持つわけじゃない」
ヴァーリは自信たっぷりに笑みを浮かべる。
「"いつも通り"、友人に手を貸すだけだ」
一誠の倍加が終わる。
「部長!」
「任せなさい、イッセー」
力を譲渡されたリアスの滅びの魔力がコカビエルを襲う。
「ぐっ…だが、赤龍帝の力が加わってもこの程度か。これならば」
「偶にはこちらも使おうか、アルビオン」
ヴァーリは己の神器を発動させる。光の翼が彼の背に広がる。
『何度だ?』
「そうだな…二度でどうだろう。殺せとは言われていないしな」
青い光が、ヴァーリの手の中で弓矢を形作る。
『divide』
青い光の矢がコカビエルを貫く。
「ぐ?!俺の力がっ…」
「弱い者いじめは嫌いなんだ。さっさと終わらせよう」
禍々しい闇の魔力を伴った二の矢が引き絞られる。
「ま、待て、アザゼルは――」
「アザゼルの指示ならちゃんと自分で聞いてきた。コカビエルはぶん殴って気絶させてコキュトスにぽい、だそうだ。だが、早急にお前を倒す必要があるのだろう?」
注がれた魔力により矢尻は先程の倍以上にまで膨れ上がっている。
『divide』
コカビエルは動けない。
「これで終わりだ」
放たれた矢はコカビエルの胸を貫き、闇の魔力がその躯を絡め取る。抵抗する力を喪い、気絶したコカビエルが墜落する。魔力がコカビエルの全身を包み、野球ボール程度の黒い玉に変わる。ヴァーリがそれを拾い上げたところで、アーシアが問いかける。
「ヴァーリさん」
「どうした?アーシア」
「神が死んだ、というのは、本当なんでしょうか」
「何故俺に聞く?」
「ヴァーリさんは、冷静にしていましたから…」
「…。コカビエルの言った事は事実だ。聖書の神は魔王と相打ちになって死んでいる。…だからこそ、アーシアは堕天使や悪魔をも癒すことができるし、木場の禁手のように相反するものを同じ手で扱うことが可能になっている」
「・・・」
「事実が明らかになったところで、現実に何の変化も起こりはしない。全ては過去に終わっていたことだ。変化するとすれば、それは君たちの心情の上でのことに過ぎない」
ヴァーリはそう言って、アーシアの頭をぽんぽん、と撫でる。
「神はおらずとも天使は生きているし、失われたことでこぼれ落ちてしまうものを救うのは人の役目だ。或いは、神以外にも救うものもいるだろう。…神でなければ人を救えないというわけではないことは君も知っているだろう」
「…はい」
「で、俺はこれを届けに行ってくる。後の収拾はそちらで付けてくれ」
「アザゼル、コカビエルだ」
渡された玉にアザゼルは僅かに表情を強ばらせる。
「…殺してないんだよな?」
「殺してない。気絶はさせたが」
反応に困る返答である。
「これは、封印術の一種か?」
「"悪夢の檻"、最近思いついたので試しにやってみた。目を覚ましたら、少し感想を聞いてみたい」
「いや、とりあえずこのままコキュトスに放り込むから。時間経過で解除されるんだろ?」
「ああ。
「…。…誰の助けも借りずに自分で目を覚ますことができないわけじゃないよな?」
「そういう仕様にはしていないが」
その方が良かったか?とヴァーリは首を傾げる。
「いやいや、今の仕様で十分だ。悪いことをしたやつにはお仕置きが必要だが、それは俺がやるからな」
「そうか」
「しかし…えげつないこと思いついたな…」
アザゼルは封印に解析をかけて呟く。夢中異界に負の感情との結合術式、構成からして外部からの干渉はかなりのレベルで防がれるだろう。
「そうか?」
「俺は絶対喰らいたくねぇな」
「そうか…」
少し残念そうな顔をしたヴァーリに、アザゼルは胡乱な顔をする。
「何でちょっと残念そうなんだ」
「"アザゼルと戦わなければならなくなった時"、傷つけずに一時的に無力化する手段として考えていたのだが…嫌なら他を考える」
「その前提条件は何だ。というか、そういうことを糞真面目に言うか、本人に向かって」
「俺はアザゼルに嘘はつかない。だが、"俺"は本音と建前を使い分けなければならない」
「…あいつらが動くのか」
「今回のことで、三勢力が会合を行うのであれば、"俺"はその情報を流さないわけにはいかない」
「そうか…お前にはしんどいことをさせるな」
「俺自身の因縁でもある。避けえぬ事なら、この手で綺麗に終わらせる」
「無理はするなよ。お前は独りじゃないんだ」
「…うん」
少し俯いたヴァーリの頭を、アザゼルは優しく撫でる。
戦闘シーンはやっぱり17歳ぐらいの姿