平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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二学期開始


赤き龍帝41

 

「…ブルジョアの暇人め…」

本来の意味で言うと、正真正銘名門貴族であるアスタロトはブルジョア(資本家)には当てはまらないのだが、この場合、(スラング)的な意味である金持ちを指している。

前世が質素倹約、清貧を旨とする敬虔なシスターであったこと、今世も一般家庭の生まれであることもあって、一誠は金の力で解決する系の行動が好きではない。正直、グレモリー家が兵藤家の増築のために周囲の土地を買収したこともあまり良く思っていないぐらいだ。

アーシアに対するプレゼント攻撃など何をいわんや、だ。

「ご迷惑をかけてしまって、申し訳ありません…」

「アーシアが気にすることはないのよ。悪いのは贈り主なんだから」

リアスは送られてきたものを全てそっくりそのまま送り返すよう近くにいたメイドに指示する。

「全く、私の可愛い下僕(アーシア)に手を出そうなんて、いい度胸をしているわ」

憤るリアスにアーシアと一誠は苦笑する。一誠もアスタロトに対してあまりいい印象がない。

アーシアに求婚したことそれ自体はともかく(・・・・・・・・・)、彼がアーシアに向ける感情が気に入らない。単なる肉欲や愛欲ならまだマシだった。一誠には、それがそういう(・・・・)感情を伴う何らかの欲望なのはわかったが、何を望んでいるのかを上手く読みきれなかったのである。

愛情でなく求婚した時点で論外ではあるが、そのわけのわからなさから、一誠はアスタロトに警戒心を持っている。それに似た少し違う感情を一誠にも向けてきたから余計に。

「次に顔を合わせた時には、ちゃんとお断りしないとダメですね」

「そうね、はっきり言ってやりなさい。取り付く島もないくらいにね」

「…随分しつこそうでしたけどね」

 

「やあ、アーシア。君に会いに来たよ!」

「ディオドラさん、こういうの、迷惑ですから、やめて頂けませんか?私…他に好きな人が、いますから」

「アーシアに好きな人が居るのも、それが誰なのかも知ってるよ」

「えっ」

「それでも、僕が君を好きになるのは僕の勝手だろう?…君が(イッセー)のことを好きでいるように」

「それは…」

「それでも、私の下僕にちょっかいをかけるのはやめてもらえるかしら」

「ああ、グレモリー。君にも申し出たいことがあったんだ。君と眷属のトレードがしたい。これが僕の眷属のカタログだよ」

「お断りするわ。私は、私の眷属の誰一人として、他の悪魔と交換(トレード)する気はないの」

 

「…小猫ちゃん、何故突然俺の耳を塞いだのか、聞いてもいいかな」

「…黙秘します」

と言っても、一誠はある程度察している。

一誠は鈍感な気はあるが、好意をはっきり向けられていることに気づけないわけではない。アーシアたちに好意を向けられていることそのものは自覚しているし、それを迷惑などとは思っていない。

ただ、彼女たちがそれを口にしないので現状維持が望みだと判断してそうしているだけだ。…実際口にされたとして、それに応えられるかどうかはわからないが。

「まあ、いいけど…」

ぶっちゃけ、読唇術が使えるのでアスタロトが何を言ったのかは多少なりとわかっている。アーシアは背を向けていたので感情(いろ)しか見えなかったが。

 

アーシアとリアスからのW張り手がアスタロトに向けて繰り出される。とてもいい音がした。

「…なんつーか…愛されてるな、イッセー」

「寧ろ、彼が空気を読めてないだけだと思いますけど」

そう言いつつ、祐斗も若干殺気立っている。アザゼルは、おお怖い怖い、と肩をすくめてみせた。寧ろ今オカ研の部室にいて多少なりとも殺気立ってないのは、アザゼルと、その殺気を向けられているアスタロトを除けば一誠ぐらいである。

…一誠は殺すと口にして本気でそれを実行しようとしていた時でさえ威圧感(プレッシャー)は出しても殺気は出していなかったので、殺気が出ていなくても殺意がないとは言い切れないのだが…まあ、今回は関係ないだろう。

何故なら、一誠は小猫に耳をふさがれていてアスタロトの発言を聞いておらず、周りの悪魔が何故殺気立っているのかわかっていないからである。

 

両サイドをアーシアとリアスに挟まれ、一誠は少し困ったような微苦笑を浮かべていた。彼の二人を見る目は、どうやらお化けを怖がる子供がすがりついてきているのを見ているようなものであるようだが。

「…じゃあまあ、映像鑑賞の続きといこうか。アガレスVSアスタロト戦だ」

アガレスとアスタロトの戦いはアガレスが優位に進んだ。しかし、追い詰められたところでアスタロトの魔力が不自然に上昇し、逆転勝ちに至った。

「…レーティングゲームってドーピングありでしたっけ?」

まあ、神器などを考えると、禁止とも限らないのだろうが。

「アリでもナシでも、魔力そのものを上昇させるドーピングなんてもんはそうそう存在しない」

アザゼルは断言した。

 

 

 

 




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