エクスカリバーの件、VSコカビエル
龍の飼い主1
絶望したように、嘘だ、とか、神様の救いは、とか呟いているアーシアを見て、一誠は僅かに眉をしかめる。そしてコカビエルを見て、彼が嗜虐的に笑っているのを見て一歩前に出た。
「…簡単には腹を立てない俺でもちょいとダメだ。これは流石にプッツンと来たぜ」
「イッセー先輩…?」
一誠の左手には神器が姿を現している。その背には二対ずつ八枚の
「俺は、アーシアを、俺の仲間を悲しませる奴は許さない。だから」
「てめぇは、絶対に許さねぇ!」
【Balance Brake!】
一誠の全身が赤い鎧に覆われる。
「禁手だと?だが、禁手に至ったといえど、小僧ごときに遅れを取る俺ではないわ」
一誠は地面を蹴って跳び上がり、コカビエルに殴りかかる。
「コカビエル!てめぇは絶対俺が」
ぶっとばす、と続けるはずだった言葉は途中で消える。
一誠の目の前に、鮮烈なまでの赤が広がっていた。
「なっ…」
「一体、何が…」
「あれはまさか…」
「…てめぇっ!
一気に怒りを噴火させた一誠がその赤の主…突如としてコカビエルの背後に出現し、そのまま彼を食べてしまった巨大な赤い龍を怒鳴りつけた。龍はもぐもぐと口を動かしている。
『…相変わらず空気を読むということをしないやつだ』
暫くもごもごと口を動かした後、龍はぺっとコカビエルを地面に吐き出した。
「まずい」
「美味いわけないだろ馬鹿かお前!」
「食わず嫌い、よくないとイチ言った」
「それは言ったがだからって堕天使の踊り食いをするんじゃねぇよ!」
コカビエルはおそらく唾液と思われる粘性の液体にまみれている上にどうやら全身を噛み砕かれているようである。かろうじて死んではいないようだが虫の息だった。
それを確認して一誠は更に怒りのボルテージを上げる。
「余計な手出ししやがって!俺はこの怒りを誰にぶつければいいんだよ?!」
「それなら我が「――それなら、俺が相手になろうか?」
新たな侵入者に一誠は兜越しに剣呑な視線を向ける。その人物もまた、何処か一誠の禁手と似通ったところのある白い鎧を身に纏っていた。
「お前は…」
「白龍皇のヴァーリだ。初めまして?赤龍帝、そしてグレートレッド」
「…イッセーだ」
痙攣じみた動きで八枚の翼を震わせ、一誠は低く構えを取る。
「気が立ってる
「ああ。もっとも、死ぬような目に遭うのは君の方かもしれないが」
「しゃらくせぇ!」
ヴァーリに向かってスタートダッシュをかけようとした一誠の躯が、くん、と途中で引き止められる。
グレートレッドが一誠の左羽の内二枚をぱくりと咥えていた。油の切れたロボットのような動きで一誠はグレートレッドを見る。
「グレ、てめぇ…一度ならずも二度までとは、余程俺に喧嘩が売りたいらしいな…?」
『イッセーがそこまで怒るのは珍しい。なら、その気持ちは我に向けてほしい』
「…いい度胸だこの野郎、マジぶっ飛ばす!!」
一誠の拳がグレートレッドの頬に突き刺さる。咥えていた羽を離し、顔を吹っ飛ばされながらグレートレッドは若干嬉しそうに悲鳴を上げる。
ヴァーリはそれを所在なさげに見ていた。
『…ヴァーリ、その…何だ、タイミングが悪かったようだな』
「…ああ。だが、赤龍帝はともかく、グレートレッドは…もしかして、変態なのか?」
『…私に聞かれても困る』
グレートレッドは全身の半分未満しか
「白龍皇、あなたは一体何の目的で此処に現れたのかしら。返答によってはこちらも容赦しないわよ」
「…俺はコカビエルを回収するよう言われて来ただけだ。ついでに
「私の可愛い下僕に手出しはさせないわ」
リアスは鋭くヴァーリを睨みつける。ヴァーリは小さく首をすくめた。
その時、一際大きな衝撃音と共に爆発音が響いた。
一同が音のした方を見る。一誠が拳を振り抜いた格好で固まっており、グレートレッドは殴られた格好で煤けていた。
金属が砕けるような音がして一誠の禁手が解除される。
「………あーもう、何やってんだよ、俺は…八つ当たりしてごめん」
「我、気にしてない。イチ、我を見る。嬉しい」
『寧ろ、自分から相棒の怒りを己に向けようとしていたのだから同情の余地はないと思うが』