平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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ギャスパーのこととか授業参観とか


白き龍皇8

 

 

「時間停止能力、か」

「え、あ、僕の能力が効いてない、の…?」

「君程度に俺が止められるわけがないだろう」

「うっ」

ヴァーリはギャスパーと目を合わせる。

「自分の神器(ちから)が嫌いか」

「…嫌いだよ。僕は、こんな力欲しくなんかなかった」

「嫌っている内は、その力を使いこなすことはできないぞ。…自分と、自分の持つ力を愛せ。君が今こうして生きているのは、君を愛してくれる誰かがいたからだろう。己を否定するのは、君を愛してくれる誰かの思いをも否定することになる」

「・・・」

黙って俯いてしまったギャスパーの耳元に、ヴァーリは囁く。

「中にいる者と話して少しでもその力を己で制御できるようになっておけ。でないと後悔することになるぞ」

「え…」

「俺にできる助言はこの程度だ。能力訓練は彼の能力を抑えて少しずつやる、というのが有効だろうが、俺の神器には向いていないからな…他をあたってくれ」

「だったら、少し私と手合わせをしてくれないか?私とお前の力量差がいかほどのものになったのか、見てみたい」

「…俺は構わないが…」

「あんまり派手に魔力を振りまいたり、物を壊したりしないでよ」

「その点は異相結界を張っておこう。他者に迷惑をかけるのは俺も望むところではない」

「では決まりだな!」

 

結界の中でヴァーリとゼノヴィアが相対していた。ゼノヴィアの手にはデュランダル。ヴァーリの手には魔力で形作られた二振りの剣が握られている。二人の戦いを見ておきたい、と木場と朱乃も結界内で二人を見守っている。

「何処からでもかかってこい」

「では、遠慮なく行かせてもらうぞ!」

先手必勝とばかりに斬りかかってきたゼノヴィアの剣を、ヴァーリは両手の剣でクロスさせて受け止める。

「馬鹿正直に斬りかかってくるばかりでは簡単に止められるぞ、と以前にも言った気がするのだが」

「以前よりも格段にパワーが上がったし、デュランダルの制御も効くようになってきたのだがな」

「力押しの技は、力負けすれば脆い、と言っている」

右の剣でデュランダルを跳ね上げ、左の剣で斬りつける。ゼノヴィアは僅かに身を逸らし、あたりを浅くする。

「まだまだ!」

騎士のパワーとスピードで振るわれる剣を、ヴァーリは風に舞う羽のようにひらりと避ける。時折振るわれる反撃は不可避のタイミング、方向を狙ったものだが、威力自体は然程でもないのか、ゼノヴィアの動きは殆ど鈍らない。

「君の成長はその程度のものか?ただパワーが上がり、デュランダルを振るえるようになっただけというなら、期待外れという他ないのだが」

「まさか、それだけのわけがないだろう!」

ゼノヴィアはヴァーリの腹に蹴りを入れる。ヴァーリは自ら後ろに飛ぶことでその威力を抑え、剣を構えなおす。互いに距離を取って構えなおす。デュランダルに聖なる力が集まる。ヴァーリは僅かに眉をしかめ、自分から距離を詰める。

「それは力押しと呼ばれるものじゃないか?」

「力負けしない力押しは有効な手だろう?」

「確かに、剣術ではそれを真正面から防ぐことはできないな」

肉薄される前に、ゼノヴィアはデュランダルの力を解放する。ヴァーリは剣に魔力をまとわせ、斬撃を切り伏せる。半分が当たるが、全く怯まずゼノヴィアの手を蹴り飛ばす。デュランダルが宙を舞う。

「「・・・」」

「私の負けか」

「俺としては、剣術のみで戦うつもりだったからな。魔術を併用した時点で反則のようなものだ」

もっとも、その剣自体も魔術で作ったものではあるのだが。

「…斬新な舐められ方だな」

「別に舐めているつもりはないのだが」

「だってお前、メインは魔術だろう」

「手合わせなんだから、完封したら意味がないだろう」

「それは…そうかもしれないが…」

デュランダルが地面に刺さる。

「お互い、蹴りを入れていたのはいいのかい?」

「剣道でも試合でもないからな」

「二人共ピンピンしてますけど、やせ我慢はしていらっしゃいませんよね?」

「この程度ならさして問題ではないが」

「これぐらいの怪我で根を上げていては騎士は務まらないだろう」

 

「結局、どの程度近づけたのかはよくわからなかったな…」

「俺に近づこうと思えば、俺よりも速い速度で腕を上げる必要があるが?」

「どれだけ強くなるつもりなんだ、お前は」

「さて…何処まで行けば、"足りる"のだろうな」

「ヴァーリ…」

「そういう君は何の為に強くなる?"騎士だから"か?」

「え、ああ…私は聖剣使いとして強くなる必要があった。これからもそうだろうな」

「そうか。…それなら、フェイントぐらいはできるようになったらどうだ?君、カウンタータイプに弱いだろう」

「私がフェイントなど出来ると思うのか?」

「そこで胸を張るな。できるかじゃなくてやれ」

「む…やれ、とはお前らしくないな、ヴァーリ」

「ん、ちょっとムカついたからな。別に、できないなら強要しない」

「そう言われるとやらなきゃいけない気になるじゃないか」

「そうか」

 

 

「ヴァーリ、授業参観があるというのは、本当にゃ?!」

「それは確かにあるが…くるつもりか?俺とお前の妹は同じクラスだが、姿を現せばすぐバレると思うぞ」

「まあ、確かにそれは大きな問題にゃんだよね。7年ぶりに白音の顔をちゃんと見たいけど…会って和やかに話ができる気がしないにゃ」

「お前がはぐれ悪魔になった"表向き"の経緯と、塔城が仙術を使っていないことからして…まあ、感動の再会、とはいかないだろうな」

「ヴァーリが酷いにゃ、傷ついたにゃ!」

「む、すまない」

「…冗談にゃ」

「そうか」

平然と返したヴァーリに、黒歌は大きく溜息をつく。

「私は、これぐらいじゃ今更傷つかないにゃ」

「精神的な傷は本人にしかわからないからな。俺は本人の主張を信じることしかできない」

「ヴァーリは真面目すぎにゃ」

「そうか?…それで、どうするつもりなんだ?」

 

「…魔法少女か…」

より正確には魔王少女だが。関わらない方がいいだろう、と判断したヴァーリがそこから離れようとした時、魔王少女が彼を指差す。

「あ!使い魔君発見☆」

「…。…その、使い魔というのはまさか、俺のことですか」

「うん、そうだよ☆」

「俺は誰かの使い魔になった覚えはありませんが」

「アザゼルは?」

「義父です」

「そうなんだー☆でも、アザゼルの忠犬、って評判もあるよ?」

「俺は犬ではなく龍です。…レヴィアタン殿は俺に何の用ですか?」

「特に用って程のことはないよ☆見かけたから声をかけただけ☆それと、レヴィアタン殿、じゃなくてレヴィアたん、って呼んでほしいな☆」

「そうですか。ではレヴィアたん、俺はもう行ってもいいですか?」

「えー、もっとお話しようよ。それか、私と魔法少女するとか!」

「俺は男ですから魔法少女にはなりませんが」

「ノリがいいんだか悪いんだかわからないよ?!」

ショックを受けた様子でそう言ったレヴィアタンに、ヴァーリは僅かに首を傾げる。

「そうか、これが天然…なかなか手強いわね」

「…アルビオン」

『私に助けを求めないでくれ』

 

「これは、GJと言わざるをえないにゃ…!」

「何故そんなローアングルばかり狙うんだ」

様々な方向からヴァーリを激写している黒歌に、彼は若干引いている。

「それは当然、あのショタコン(ジークフリート)に見せて羨ましがらせるためにゃ!」

「ヴァーリたんだけじゃなくて、私とのツーショットは?」

「いらないにゃ」

「頼むから状況が分かる写真も残しておいてくれ」

魔法少女の可愛らしい衣装に身を包んだヴァーリは、はあ、と溜息をついた。若干目が死んでいるが、寧ろ何も言えない状態になっているアルビオンの方が多分ダメージが大きい。

「――え、何?魔法少女?っていうか、ヴァーリ?!」

「ん、ああ…イッセーか」

相棒(ヴァーリ)を見るな、赤龍帝!!』

「何でそんな格好してるんだ?」

「レヴィアたんに頼まれてな…男の俺には似合わないだろうからすぐ飽きてくれるかと思ったんだが、何故か気に入られてしまったらしく…」

「いや、全然違和感ないし、十分似合ってると思うぞ。っていうか、ヴァーリ、実は女の子だった、とか「俺は男だ」だよなぁ…」

ヴァーリは男にしては華奢で、顔立ちにも中性的に整っているので女装しても違和感がないのである。というか、普通に可愛い。

「…何だ」

「いっそ女に「ならない」

『…赤いの』

『俺に言われても困る』

「だってギャスパーみたいなやつもいるだろ?」

「グレモリーとシトリーはキャラ被りはよくないと言っていたぞ」

「部長が?」

「――そこ、何やって…って、ヴァーリ?!」

「匙か。何故そこまで驚いている」

「お前…男だよな?」

「ああ」

「・・・」

「――姉さん?!」

「あ、ソーナたんだ☆」

大惨事である。

 

「お前に女装趣味があるとは知らなかったな」

「女装趣味はない。レヴィアたんに頼まれただけだ」

「…お前その内騙されて色々やらかし…た事もあったな」

しかも一度や二度ではない。単純な嘘は見破れるが、裏に別の思惑があったりする場合、察せられない事があるのだ。その都度改善は試みているが、ヴァーリの気質的に絶対騙されない、ということは有り得ないのである。

「それは俺も改善したいと思っている。…ところで、アザゼルは授業参観をするつもりで来たのか?」

「そりゃあ当然な。可愛い子供が学校でどうしてるのか、堂々と見れるんだから、来ないって選択肢はないだろ」

「そうか」

少し照れたような様子を見せたヴァーリの頭をアザゼルはわしゃわしゃと撫でる。

「まあ別に気張らなくていいからな。無理してかっこつけなくても、普段通りのお前でいい」

「別に無理にかっこつけるつもりはないが…」

普段通り?と首を傾げるヴァーリにアザゼルは苦笑する。

「まあ、その辺難しく考えなくていいから」

「そうか」

 

『ヴァーリ』

「大丈夫だ。…しかし、本当に思ったより短かったな」

『そうか?私はもっと早く物事が進む可能性もあったと思うが』

「イッセーには、もう少し神器を使いこなせるようになって欲しかったが…いや、アイツは実戦の中で成長できるタイプだから大丈夫か」

『白龍皇が赤龍帝を気遣うなど、前代未聞だがな』

「弱すぎると、間違って(・・・・)殺してしまうかもしれないだろう?」

『アイツは、そう簡単にくたばらなさそうにも見えるがな…』

「ああ。イッセーはかなりしぶといな」

 

 

 

 

 




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