「神父、どうやら今回の召喚は上首尾にいったようだな」
座ったままうつらうつらしているドラゴンの代わりにアポロが綺礼に問いかける。綺礼は頷いて手短に伝える。
「時臣師は狙い通り英雄王を召喚した。作戦に変更はない」
「英雄王ギルガメッシュ、か。アレは一筋縄ではいかぬ相手だぞ」
「師とサーヴァントが最後まで撤退しなければ、後はどうとでもなる」
「ハ。そのサーヴァントにやられるようなことにならねば良いがな」
アポロが鼻で笑った時、金色の粒子が室内に現れ、ついで金色の鎧をまとった男が姿を現す。
「――ほう。変わった気配があると思えば、珍しいものがおるではないか」
「寄るな、暴君。イッセーが起きる。そして穢れる」
「生意気なトカゲだ。神父、これが貴様のサーヴァントか?」
「正確にはサーヴァントは子供の方でその赤い竜は宝具だ」
鎧の擦れ合うガチャガチャという音でドラゴンは目を覚ます。
「…?」
「子雑種、名は何と言う?」
「僕?僕はドラゴン…兵藤一誠だよ」
ドラゴンはそう言って眠そうに欠伸をした。
「おじさん誰?何処かの王様?」
「
「んーと…ギルガメッシュさんはすごい王様ってこと?」
「まあ、そういうことだ」
ドラゴンは袖口で目元をこすった後、紫色の瞳をぱっちりと開けてギルガメッシュを見上げる。ギルガメッシュは紅い瞳を細めて言う。
「ところで子雑種、貴様、何人殺した?」
「え?うーん…直接殺したのは二人、だと思う。間接的には数えてないからわかんない」
「そうか…では、王として命じる。貴様はもう殺すな」
「…何故?」
「人を裁くのは王の役目だ。人が人を降せば余計な罪罰に迷うことになろう。幼子がそのような迷いを持つものではない」
「…ギルガメッシュさんは、優しい人なんだね」
「ふん。元々我はこれ以上イッセーに手を汚させるつもりはない。イッセーに迫る害は全て我が取り除くと決めているでな」
「アポロはいっつも物騒だよね」
ギルガメッシュはふっと二人のやり取りを鼻で笑う。
「アポロ、とは随分可愛らしい名で呼ばれているようではないか、トカゲ」
「イッセーが親しみを持ちやすい名を、と考えてくれたのだ。可愛いに決まっているだろう!」
絶妙に話が噛み合っていない。ドラゴンは首を傾げた。
「アポロとギルガメッシュさんは知り合いなの?」
「さて…」
「いや、それがもし
「ドラゴン、他陣営の召喚については確認できたか?」
「ううん。一人、森の中で大きな男の人が召喚されたみたいだけど、他は確認できなかったって。でも、ハイアットホテル?の上の方の工房化されてるところが一瞬魔力が膨れ上がったって」
「今日召喚されたサーヴァントは五体…確認の取れなかった二体は、おそらくアインツベルンと間桐だろう。ホテルの上階を拠点しているのはおそらく時計塔から参戦するというロード・エルメロイ…森の中の方はどのような人間がマスターかわかるか?」
「多分男で、大人ではないみたいって言ってたよ」
随分曖昧な情報だが、おそらくノーマークの相手だったのだろう。一応事前に情報を集めることのできた有力なマスター候補についての情報は共有している。
「そうか…引き続き偵察をさせておいてくれ」
「わかった」
「…正直、このような情報集めには然程意味はないと思うがな」
「アポロ」
「あの髭は穴熊戦法を取るつもりなのであろう。迎撃するだけであれば、相手が近づいてきた時にわかれば十分ではないか?」
それはある意味、自信の現れだった。どのような相手が来ても己が負けることはありえない、と。
「…今回は魔術師殺しが参戦するという情報がある。用心に越したことはない。
「
「…おそらく、そうなるだろうな」
遠坂時臣は典型的な魔術師であり、科学の産物を毛嫌いしている。嫌いだから使えないのか、使えないから嫌いなのかはわからないが、屋敷にも電化製品の類はあまり置かれていない。
「事態が本格的に動くのはサーヴァントが全騎揃ってからだろうが…何処の陣営がアサシンを有すか…或いは、有していない、脱落するまではどの陣営も警戒せざるを得ないだろう」
そしてそれは彼らも同じである。二騎のアドバンテージはあれど、マスターを暗殺されては意味がない…ドラゴンは綺礼を失っても現界していられるだろうが。