平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

87 / 144
全騎集結後


レッドドラゴン4

 

 

「ドラゴン、遊行に出るぞ、供をせよ」

若干機嫌の悪そうなギルガメッシュに叩き起され、ドラゴンは小さく欠伸をしながら起き上がった。

「ゆぎょ…?」

「街に出かけると言ったのだ。聞こえなかったか?」

「遊びたいのであれば貴様のマスターを誘えばよかろう。態々イッセーの睡眠時間を削るでない」

「あのような可愛げのない髭を連れ歩いて何が楽しいのだ。…(オレ)は昨夜散々可愛げのない狂犬の相手をする羽目になったのだぞ。気晴らしをせねばやっておれんわ」

「…あさごはん」

「それは後だ。疾く出かける仕度をせよ」

「わかったー…」

 

現代の衣装に身を包んだギルガメッシュとドラゴンは並んで歩いていた。アポロはいつもと違い、人の姿をとってドラゴンと手を繋いでいる。

酷く目立つ組み合わせだが、あまり人目を引いていないのはドラゴンが誘導スキルを使用して気配を隠蔽しているからである。

「まずは朝食だな。…朝食と呼ぶには微妙な時間だが」

時刻は9:30を少し過ぎたところだ。

ドラゴンは肉体があるために睡眠と食事を必要とするのだが、聖杯戦争のために夜型の生活を送っている。それでも夜の12時をすぎるとうつらうつらし始めるが、最近では起きるのは昼前くらいである。

「偶にであれば庶民の貧相な食事も悪くない。あの店に入るぞ、子雑種」

「うん」

ギルガメッシュが選んだのは、ハンバーガーをメインに安価なメニューを取り揃えたファストフードのチェーン店だった。

 

「それで、貴様は具体的に何処へゆくか決めておるのか?」

「決めているわけがなかろう。(オレ)はこの街には詳しくないからな」

「…こちらもけして詳しくはないぞ」

口論とまではいかないが、若干剣呑な雰囲気を漂わせながら会話しているアポロとギルガメッシュを眺めながらドラゴンはもきゅもきゅとハンバーガーを頬張っていた。

加わる気も仲裁する気もない。不毛だからだ。この二人の仲が宜しくないことは最初からわかっている。彼以外に対しては基本的に無関心なアポロが寧ろ突っかかりに行っているように見えるのは不思議なことではあるが。

「そもそも(オレ)は子雑種についてこいとは言ったが貴様に言った覚えはない」

「我がイッセーを単独で行動させるわけがなかろう。我の可愛いイッセーに不埒なことを考えるものが出たらどうする!」

「…貴様のその発言には流石の(オレ)もドン引きだぞ…」

ギルガメッシュはドラゴンを小突く。

「貴様は保護者がアレで良いのか」

「だってもう終身契約結んじゃったし。アポロ殺すとか無理ゲーだし」

「軽率なことをしたな、子雑種…」

「よく言われる」

アポロは不服そうな顔をした。

 

適当にショッピングをして休憩に入ったカフェでドリンクを頼んでテラス席に座る。

「この時代には不要のものが多すぎる」

「まあ、それは我も否定はせぬな。主に人間が多すぎる」

嫌なところで意見が一致したものである。というか、何の話をしているのか。

「不要だといけないの?」

「うむ…昔、(オレ)は奴隷の中から必要のない者を選んで殺そうとした。どうなったと思う、子雑種」

「え、んー…殺す必要(・・)のある人はいなかった、とか?」

「うむ。(オレ)の生前、奴隷の一人に至るまで必要のない者はおらなんだのだ。だが、この時代はどうだ。必要な人間を探す方が難しそうだぞ」

「まあ我は生かす価値が有ると感じる人間などイッセー以外おらぬがな」

だからといって滅ぼすのは、などと言う権利は彼にはないので、ドラゴンは何も言わなかった。

代わりに道の方に目をやる。大男と少年の凸凹コンビが通り過ぎた。どちらも日本人ではないようだった。

ここに来るまでの間も外国人をよく見かけた。冬木市には外国人が多く訪れ、滞在しているらしい。だから、多少気配隠蔽を緩めても大丈夫かも知れない、と思いはするが、他の戦争関係者に遭遇する可能性を思うと難しい。

「そういえば貴様はこの子雑種の何処にそこまで価値を見出したのだ。見目は悪くないが、整ってはいても目を引く程でもないだろう」

「わからぬのなら態々解説するわけはなかろう。イッセーの価値を理解しているのは我だけで良いのだ。共有するつもりはないからな」

「…貴様、本当にあの(・・)朴念仁か?キャラが違うというレベルではないぞ」

「何のことかわからぬな」

こいつら一周回って仲良いんだろうか、とドラゴンは思う。仲が良くても悪くても、一緒にしておくと碌なことをしなさそうではあるが。

 

 

「、わ」

「っと、大丈夫ですか」

「うん、大丈夫。ありがとうお姉さん」

「いえ、周りには気をつけなければいけませんよ」

「うん」

「イッセー、怪我はないか?大丈夫か?」

「大丈夫だよ。アポロは大袈裟なんだから」

慌てて大袈裟に心配するアポロにドラゴンは苦笑した。

「保護者が傍に居るなら大丈夫ですね」

「セイバー、次はあそこに行きましょう」

「はい、今行きます、アイリスフィール」

女性たちが離れてから、可笑しいのを抑えきれないという顔でギルガメッシュが近づいてくる。

「…?どうしたの、王様」

「どうしたもこうしたも…あのサーヴァント、お前がサーヴァントだと気付いておらぬようだったぞ」

「そりゃあ、僕はサーヴァントらしくないもの」

『…何やら、懐かしいような気配がしたな』

「あ、ドライグ。目が覚めたんだ」

「ほう、ようやく目を覚ましたか、寝坊助め」

『お前に責められるいわれはない。…というか、これはどういう状況だ』

「ふん、それがお前がドラゴンたる所以か」

『…何だ、このやたら偉そうな男は』

「えっとね、今聖杯戦争中で、僕サーヴァントで、王様も同じ陣営のサーヴァントで、それから、えっと…アポロは僕の宝具だよ」

『成程、わからん。…だが、今聞くより何処か安全な場所でじっくり聞いた方がよさそうだな。どうも面倒事の臭いがする。…ドラゴンは争いを呼び寄せるものとはいえ…相棒のそれは少し異常だと俺は思うぞ』

「そうかなあ」

 

飲食店で夕食を済ませた後、ギルガメッシュは港の方を見て楽しそうに笑う。

「何やら、茶番が始まっているようだぞ。暇潰しに見物にでもゆくか」

「そういえば、遭遇はしなかったけど、やたらと自己主張しているサーヴァントがいたね」

その時、ドラゴンに綺礼から念話が繋がる。

『ドラゴン、今何処に居る?』

「う?今王様と一緒に港の方に向かってるところだよ。何か、サーヴァントが戦ってるみたいだから見物するんだって」

『そうか……では、けして加わらず見物だけに留めておいてくれ』

「わかったー」

「神父か?」

「うん。見物するのはいいけどちょっかいかけたらダメだって」

「ふん。まあ余程退屈でなければ見物するだけでもよかろう。ゆくぞ子雑種」

「うん」

 

適当に屋根の上に腰掛けて見物する。ドラゴンは霊体化できないので念入りに気配の隠蔽と認識阻害を行っておく。アポロはいつもどおりの小さな竜の姿に戻っていた。位置はドラゴンの肩から後頭部だ。

「セイバーとランサー、か。武人としてはそれなりではあるようだが…所詮は雑種だな」

「そもそもあやつら、これが"聖杯戦争"だということを理解しておるのか?狙撃でもしてやれば一発で片付きそうだが」

「一応サーヴァントなんだし、撃たれるまで気付かない、ってことはないんじゃない?…マスターはともかく」

視覚共有で綺礼もこの光景を見ているだろう。感想を尋ねても碌な答えが返ってこなさそうではあるが。

「これは…早速脱落者が出るか?」

「弱者が早々に脱落するのは戦いの摂理だ」

その時、戦車が戦場に舞い降りた。

 

いつの間にかギルガメッシュが黙り込んでいることに気付き、ドラゴンはそちらを見る。そして、とても後悔した。ギルガメッシュはとても不機嫌そうに戦装束…金色の鎧に着替えていた。完全にやる気である。

「王様、見物するだけじゃなかったの?」

「この世に王を名乗るのは(オレ)一人で良い」

そう言ってギルガメッシュはライダーの挑発に応えるように彼らの前に姿を現す。

「アポロ、この場合僕はどうするべきなんだろ。王様を追っかけた方がいいかな?」

『ドラゴン、お前は出るな』

「ういっすー」

 

「…ねぇ、もしかして僕王様に置いてかれたのかな」

「別によかろう。どうせ今の奴は最高に不機嫌だぞ」

「あー…」

地上ではバーサーカーがセイバーに襲いかかっている。何か因縁でもあるのだろうか。他のサーヴァントには見向きもしていない。

「今度こそセイバーがピンチ、かな?」

とはいえ、一度助けに入ったのだから、またライダーが助けに入るだろう、と思う。でなければ、令呪でも使わない限りセイバーは敗退するだろう。

 

各サーヴァントが撤退していったのを確認し、ドラゴンは3m程の大きさになったアポロの背に騎乗する。当然、認識の阻害を行っており、一般人に見つかることはない。

アポロは夜空を舞い、遠坂邸へと帰還する。庭に降り立つと、そのまま人型に変化する。アポロがドラゴンをおんぶしている状態になった。

「今日はもうさっさと風呂に入って眠るぞ、イッセー。色々あって疲れただろう」

「んー…」

ドラゴンは既に少し眠そうにしている。根本的に体力が低いのだろう。

『…このままだと風呂の中で寝るんじゃないか?』

「我が一緒に入る故、問題ないな」

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。