ドラゴンと綺礼は、冬木市郊外にあるアインツベルンの森に来ていた。ちなみに、綺礼は自分の足で走っているが、ドラゴンは騎竜と化したアポロに騎乗した状態である。
森に入って暫くしたところで、ドラゴンは厳しい顔をする。
「…キレイ、悪いけど別行動するよ」
「どうした」
「…最後に自分で台無しにしてしまった身ではあるけど、僕も一度は"子供の救済者"と呼ばれた身だから。やばくなったら呼んで。すぐ合流するから」
そう言ってドラゴンは四回の倍加を綺礼に譲渡するとアポロを駆って弾丸のように飛び出していった。
「…そういえば、ドラゴンには
倍加の使い方などについては一通り聞いている。己は己の目的のために動こう、と綺礼はそのまま足を進めることにした。
「そは、悪しき力を拒絶する神秘の鎧、"ホワイトガード"!」
白い風が巻き起こり、子供たちを包む。
「…何?」
「罪のない子供を戦いに巻き込むなんて、それでも英霊なの?」
「…ほう、これはこれは…極上の供物が自ら姿を表してくれるとは。ジャンヌが此処に辿り着くまでの良い余興になりそうだ」
「ア、アポロ…」
「うむ、変態だな」
アポロは威嚇のように翼を広げる。
「何処の下郎だか知らぬが、我の目が黒い内はイッセーには指一本触れさせぬし髪の一筋たりとも渡さぬ。その下劣な思考ごと塵に還るがいい」
「君たちは危ないから僕らの後ろに隠れるんだ!」
ドラゴンの呼びかけに、わけわかっていないながらも子供たちは大人しく従い、キャスターから逃げてドラゴンの後ろに向かう。
「一声で私のかけた術を解くとは…いけませんねぇ、その子供たちには、色々と果たしてもらいたい役目があったのですが」
「"精神への干渉"は僕の得意分野でね。魔術師もどきの稚拙な術ごとき、目じゃないんだ」
「――キャスター!!」
「おお、我が麗しの乙女ジャンヌよ!よくおいでくださいました」
「…?これは一体、どういう状態だ」
「僕らはまあ、通りすがりのドラゴン、ってところかな。罪のない子供が苦しめられるのは放っておけなかったから、こうして首を突っ込むことになったってわけ」
「子供たちを奪還したのはいいものの、アレには何となく触れたくなかったのでどうしたらいいものかと思っていたところだ。丁度いい、我らは一度この子らを連れて安全なところまで離脱する。アレの相手は貴様がやれ」
「…良いでしょう。ですが、そう言ったからには、その子たちはちゃんと親元へ返してあげてください」
「勿論そのつもりだよ。それじゃあ、キャスターのことはよろしくね、セイバー」
アポロの躯が倍以上の大きさに変化する。ドラゴンの呼びかけで集められた子供たちが魔術でアポロの背に運ばれる。周囲の子供たちを乗せ終わったのを確認し、アポロは宙に舞い上がる。
子供たちを教会に預けてドラゴンたちが再び戻ってくると、セイバーとランサーがキャスターを相手に共闘していた。より正確には、キャスターの呼び出した海魔と戦っていた。海魔は弱いが、再生力が高いようだった。
「…いや、より正確には死体からまた新しいのが喚ばれる、ってところかな。
「我はあの中に降りるのは嫌だぞ」
「それは僕も嫌だよ」
かといって、此処で見ているというのも不義理である。
「おい人間、子供たちは置いてきたが、我らの助けは入用か?」
「!それは良い知らせです。あなたは何ができるのですか?」
「見た通りだ」
「ドラゴンか…退治られれば大きな誉れ…いや、今はそのような場合ではないが」
「人間ごときに退治られる我ではないがな。ちなみに、我はその気持ち悪い生物に触れるのは絶対嫌だからな。我の可愛い
「概ね同感だけどこの状況でそれ言うのはどうなの?」
ドラゴンは呆れたようにそう言った後、眼下の戦場に目をやる。
「さしあたって適当なのは味方戦力の強化、ってところかな?…清廉なる闘士に、大地の祝福を、"グランドブレス"!」
ドラゴンの詠唱と共に、セイバーとランサーの傷が癒え、力が湧き上がる。
「これは…いずれの方か知らないが、感謝する。ドラゴンよ、お前の主は優れた魔術師のようだな」
「イッセーは我の主ではなく相棒だ」
「いや、相棒じゃなくて盟友かな。相棒はドライグだし」
「む…」
「…ドライグ?」
セイバーは一瞬訝しげな顔をするが、すぐに切り替えてランサーに問いかける。
「ランサー、お前は風を踏んで駆けられるか?」
「ああ。何か策があるのだな?」
「魔力的に、キャスターの持ってる本は魔力炉になってるみたいだね」
表面的な流れは大体一致している