平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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三勢力会談


白き龍皇9

 

 

 

「俺は、白龍皇として、赤龍帝(イッセー)とはいずれ戦わなければならないと思っているが、他は自分からケンカを売るつもりはない」

お前はどうだ、とヴァーリが一誠に問いを投げようとしたところで異変が起こる。

「「「!」」」

「…時間停止、か」

「これって、まさか」

「無事な奴はどれだけいる?」

ヴァーリは目を細め、周囲の状況を探る。一応、"襲撃計画"についてある程度聞いてはいるが、細かい作戦までは知らない。そこまで密に連絡を取り合ってはいないのだ。アザゼルを困った立場にしないために、うっかり情報を漏らしすぎないように自分の得る情報も少なめにしていたし。

「ヴァーリ、外を頼む」

「わかった」

光翼を展開し、窓から外に出る。…たしか、今回の襲撃の中心人物は旧魔王派のカテレア=レヴィアタンだ。おそらく、現レヴィアタンである、セラフォルー=レヴィアタンを狙うだろう。多分返り討ちにされるだろうが。

『相棒』

「無為な争いは嫌いなのだがな」

 

アザゼルごと心中をしようとしたカテレアの腕が切り落とされ、胴を貫いた光の矢が全ての魔術を消失させる。

「見苦しいぞ、カテレア」

「ヴァーリ様!」

ヴァーリの姿は、普段よりも大人びた…否、二十代位の青年の姿になっている。彼は目を細めて言う。

「頭を冷やせ。お前の命は此処で使い潰していい程度のものか?それなら、随分安い命とみえる」

「い、いいえ、私の命は安くなんかないわ!」

「…これはどういうことだ?白龍皇」

一誠が駆けつけてきたのをちらりと見て、ヴァーリはニィ、と笑う。

「改めて名乗ろうか。俺の名は、ヴァーリ=ルシファー。正真正銘、前魔王ルシファーの血統の悪魔であり、人間であった母の血によって神滅具(ロンギヌス)である白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を手に入れた、歴代最高の白龍皇となることを定められた男だ」

「…君も禍の団(カオス・ブリゲード)の一員ということか」

「それで相違ない」

「一体、どういうことだよ、ヴァーリ!」

一誠の叫びに、ヴァーリは僅かに眉をしかめ、神器ではない、己の悪魔としての翼を広げた。光翼を含めて、12枚の翼がその背に広がる。

「見ての通りだ。俺は俺の目的のために禍の団に与している。わかりやすく言うのなら、そうだな…俺はお前の敵だ、赤龍帝(イッセー)

「嘘、だろ…?俺たちのこと、友達だって、言ったじゃないか」

「"俺"は、本音と建前の使い分けができる男だ。…さぁ、イッセー、拳を構えろ。お前の、赤龍帝の力、白龍皇(オレ)に示してみせろ」

ヴァーリは己の神器の禁手を発動する。全身を覆う、白銀の鎧。出しっぱなしだった翼にも、宝玉のついたアーマーが装着される。フルフェイスの兜越しに一誠を見て、ヴァーリは両手を広げる。

「どうした、イッセー。かかってこないのなら、こっちから行った方がいいか?それとも、前座で疲れたのなら回復してやった方がいいか?」

羽ばたきと共に、周囲一帯に光が降り注ぐ。光に触れた者の躯が癒えていく。

「俺は、お前と戦いたくはない!」

「戦いたくない?妙なことを言うな。俺は最初から言っていたはずだ。俺とお前は、いずれ戦うことになる、と。俺が白龍皇でお前が赤龍帝である以上、戦わずに終わるという選択肢はない」

『…相棒』

「それでも、嫌なものは嫌だ!俺は、ヴァーリが本当に優しいやつなんだって知ってる。これまでだって「言いたいことはそれだけか?」っ…」

強大な威圧感が一誠を襲う。

「駄々を捏ね、時間稼ぎをしていればどうにかなるとでも思っているのか?…さっさと構えろイッセー。でなければ貴様の大切なもの全て半分にするぞ」

「全部、半分…?」

『相棒、アイツは本気だ。お前も覚悟を決めろ』

「全部半分、って事は…部長のおっぱいが半分に?!」

『『えっ』』

「・・・」

「それは絶対に許さない、許さないぞ、ヴァーリ!」

「やっとやる気になったか、イッセー」

怒りから禁手を発動した一誠はヴァーリに殴りかかる。

 

互いに、殴り合った結果、鎧が破損し、その欠片が周囲に散らばっている。

「このままじゃ、キリがない…」

「・・・」

一誠は能力を上昇させ、ヴァーリは能力を半減させる。しかも、その半減した力の一部を己のものに加えることができる。いたちごっこだが、時間が経つほどにややヴァーリに有利になる。

「このままじゃダメだ。…何か、考えないと…」

一誠の視線が、破損し、ヴァーリの鎧からこぼれ落ちた青い宝玉で止まる。

「…これだ!」

一誠は宝玉を手に取る。そして、

『!お前、何をする気だ?私と赤いのの力は相反するものだぞ、それを…』

「ヴァーリは、出来ると心から信じれば何でもできるようになるのが神器だって言っていた。だったら、俺は信じる!」

「…成程。面白いことを考えたな、イッセー。…それなら、俺も」

『相棒?!』

ヴァーリもまた、鎧が壊れ、あらわになっていた右手に一誠の鎧からこぼれた緑色の宝玉を握りこむ。

お互いの右手に相手の力を宿した籠手が生成される。

白龍皇の籠手(ディバイディング・ギア)、といったところか』

『こんなこと、前代未聞だぞ…』

「最強と最弱がぶつかることになったんだ、これぐらいの想定外は当然のことだろう」

楽しそうに、ヴァーリは笑う。

 

 

一誠の拳が、ヴァーリの兜にヒビを入れる。

「これで、どうだ…」

肩で息をしている一誠に対して、ヴァーリは静かに、相対している。メットの一部が砕け、表情が見えるようになる。

ヴァーリは、とても嬉しそうに、笑っていた。

「…はは、強くなったな、イッセー」

心底嬉しそうに、そして無邪気な笑みを浮かべているヴァーリを見て、一誠は言葉を失う。

「正直、予想以上だ。お前が此処までできるとは思わなかった。だから(・・・)、俺も取って置きを見せることにしよう」

『ヴァーリ?!』

「我、目覚めるは覇の理に全てを奪われし二天龍なり」

砕けた鎧が、一度全て魔力に戻る。

「無限を妬み、夢幻を想う」

白い鎧…否、白い鱗がヴァーリを包み込む。

「我、白き龍の覇道を極め、汝を無垢の極限へと誘「ヴァーリ、迎えに来たぞ!撤退だ!」…時間切れか。では、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を見せるのはまた次の機会ということにしよう」

形成されかかっていたものが、一瞬で破壊される。一誠との激戦が嘘だったかのように無傷で、平然とした顔で、ヴァーリは美猴に歩み寄る。

「じゃあな、イッセー。お前が更に強くなることを期待している」

ニィ、と笑って手を振って、ヴァーリは美猴と共に姿を消した。

「…まさか、あれほどのものとは」

「全力を見せずしてアレとは…厄介なものが敵に回ってしまったな」

「イッセーさん、大丈夫ですか?」

「ああ、なんとか…」

その場にいたメンバーを眺め、アザゼルが溜息のように言う。

「"許可"されてた赤龍帝以外、誰も、口を挟むことさえできなかったもんなぁ」

「自分も例に漏れなかった癖に何を言っているんですか。というか、彼はあなたの部下では?」

「アイツは部下っていうより、俺の愛息子って感じでな。基本的にはアイツの"人格"を信用して自由にさせてたんだ。…遅れてきた反抗期ってやつかねぇ」

「・・・」

「あまりショックを受けていないようですね、アザゼル」

「あ?俺だって滅茶苦茶傷ついてんぞ?だってガン無視だぜ?寧ろ最初から全力で威圧だぜ?普段ならにこにこ笑ってアザゼル父様大好きーって言ってくれるヴァーリがだぞ?落差酷過ぎだろ!」

「それは…辛いですね」

「だろ?」

 

「…何か、妙なところで結束が生まれたような気がする」

「どうした、ヴァーリ」

「…いや、何でもない」

小さく首を振ってそう返し、ヴァーリは肘をついて物憂げな顔をする。

「美猴、"こちら側"の被害はどれくらいだ?」

「今回の参加者はほぼ全滅、だな。戦果もほぼゼロ。デモンストレーションとしても酷いもんだぜ」

「そうか…」

「カテレア=レヴィアタンの件に関して、クルゼレイ=アスモデウスがカンカンになってるみたいだにゃ。下手したらこっち(ヴァーリ)に矛先が向く可能性も、無きにしも非ず、にゃ」

「一応、カテレアは生きているはずだがな。捕縛されただろうし、どういう扱いを受けているかはわからないが」

「ぶっちゃけ、ヴァーリはそうならないように助けることもできたにゃ?」

「否定はしない」

選択肢としては存在しないが。…何しろ、ヴァーリは旧魔王派を壊滅させるために禍の団《カオス・ブリゲード》にいるのである。そのことを知っているのはアルビオンだけだが、彼の部下として所属している者たちは、彼の目的と組織の目標が相容れないものだと薄々勘付いている。そもそもにおいて、彼の気質とテロ組織というのがかけ離れ過ぎているのだが。

「シャルバ=ベルゼブブはどうだ。奴も早々に動く様子はあるか?」

「早々に動くというか、企みの結構の目処がついたようだな。精々数ヶ月、といったところか」

「そうか…ならば、その前に一度オーフィスに会っておいた方が良さそうだな。無関心とはいえ、"蛇"を与えた相手くらいはわかるだろう」

「ベルゼブブの企みの利用でも?」

「盛大に"失敗"するであろうことは十分予想できるからな。だからといって、"無駄"にするのでは、犠牲になる者たちに申し訳が立たない」

しかし、"成功"させるために力を貸すつもりはない、と言外に匂わせてヴァーリは微笑む。そして、犠牲になるであろう者達を助けるつもりもないようだ。

「私たちはどう動くんだ?」

「とりあえずは様子見と、人員の"選別"だ。"引き抜き"もこれまで通り続けていい。情報は全て俺に持って来い。引き際は測り間違えるなよ」

口々に了承の意を返した部下たちに、ヴァーリは静かな笑みを浮かべる。

「ところで、今日の夕食は何がいいと思う?」

「私は、シチューがいいにゃ!!」

「お前、毎回それだな…だったらオレっちは、グラタンがいいな。マカロニとエビのやつ」

「久しぶりにヴァーリさんが来るから、とルフェイが張り切っていたんですが…」

「む…だったら、彼女に任せ…いや、今日は、料理がしたいのだがな…」

 

 

 

 

 

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