平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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いわゆる覚醒イベント


レッドドラゴン7

 

 

凛は冬木の街で聖杯戦争が行われているのは知っていた。けれど、それがどんなものなのかはわかっていなかった。凛の知るサーヴァントが一誠(ドラゴン)という自分と年の変わらない少年の姿をしていたのも悪かったのだろう。父親によって母親と共に避難させられていても、その危険性をよくわかっていなかった。

だから、凛は自ら足を踏み入れてしまった。遠ざけられた危険の中へ。

 

幸か不幸か、凛は幼く未熟とは言え、魔術師の卵だった。そして、普通の子供よりも頭が回った。冬木が現在聖杯戦争中の影響で探査の令装が上手く働かなくなるというハプニングはあったが、凛は偶然にも子供たちを連れている若い男という怪しい人物を発見してしまった。

そして、凛はその幼い正義感のままに動いた。

 

隙をついて男の礼装を壊したまでは良かったが、凛にできたのはそこまでだった。倒れそうになる凛を、誰かが受け止める。

「…あれ?君、いつの間に入ってきたの?」

「つい、今さっきだね。もうこれ以上好き勝手はさせないよ」

「…え」

懸命に開こうとする瞳に、赤色が映る。

「言ったでしょ。凛ちゃんのことは僕が守るって。もう大丈夫だよ」

触れられた手から優しい力が流れ込んでくる。根拠もなく安心し、そして凛はそのまま意識を手放した。

「今度は、ちゃんと間に合った」

そんな声が聞こえた気がした。

 

目が覚めた凛は、己が公園のベンチに寝転がっていることに気が付いた。あたりはすっかり暗く、街灯に照らされていないところはよく見えない。

「凛ちゃん、大丈夫?」

すぐ傍から声がかけられる。見ると、一誠がそこに座って凛を見ていた。

「何ともないわ。…他の子と、あの人は?」

「子供はアポロに頼んで安全なところまで連れていってもらったんだけど、あの人は逃げられちゃった。多分、キャスターのマスターだと思うんだけどね」

だからアポロが傍にいなかったのか、と凛は納得する。彼女は、アポロが一時たりとも一誠から離れたがらないのを知っていたので、不思議に思っていたのだ。

「…で、どうする?直接禅城の家に送る?それとも、一度遠坂邸に寄る?」

「お父様にこんな無様な結果知らせたくないし、直接帰ることにするわ」

「…あー」

「…何よ」

一誠は僅かに視線を泳がせる。

「今日の僕の行動は、徹頭徹尾僕の独断なんだけど、キレイは感覚共有して見てるんだよね」

「えっ」

「サーヴァントとマスターはパスが繋がってるから感覚共有すればお互いの今見てるものとかわかるんだよ」

「…何時から?」

「少なくとも、合流してからの一部始終は見てるね」

凛は涙目で一誠に掴みかかる。

「一誠、今すぐ綺礼を止めなさいよ!」

「…あ、何かもう既に遅いっぽい。凛ちゃんが気絶してる間に時臣さんに報告しちゃってたみたい」

「~~~」

一誠は困ったように笑う。

「…寄ってく?」

「一発、ぶん殴ってやるわ」

 

アポロと合流し、一誠は凛を連れて転移魔術を発動する。心臓が引っ張られるような独特の感覚と共に、一瞬で周囲の景色が変化した。

「凛」

「…お父様」

「今回は偶然ドラゴン君が気がついて間に合うこともできたけれど、次もそう上手くいくとは限らない。これに懲りたら軽はずみに行動してはいけないよ」

「…はい、お父様」

しょぼんとしてしまった凛を見て、一誠も少し困ったような顔をする。

「キレイは?」

「綺礼は紅茶を用意しに行っているよ」

「…あやつ、逃げたな」

アポロがぼそりと呟く。

「?」

「僕、キレイを手伝ってくる」

「あ、私も行くわ」

 

「綺礼!」

「おや、どうしたのかな、凛」

「どうして態々お父様に報告したりしたのよ!」

「何か問題でもあったか?ご息女が姿を消したと心配している師に、その行方がわかったと伝えるのは弟子として当然の行動だと思うのだが」

「そ、それは…」

凛は言葉に詰まる。そう言われると、綺礼のしたことは間違いだったとは言えない。

「…順番的には、僕が凛ちゃんに危険が迫ってるのを察知して、禅城の言えに確認したら帰ってきてないことがわかったんだけどね。だから、全く知らせないで終わらせることもできたと思うんだけど」

「まあ、どちらにしても必要性は薄いがな」

伝えるのも隠すのも、特に意味はない。それで何が変わるわけでもないのだ。一誠が動いて凛は無事保護された。それだけの話である。他の人間が動く余地も必要もない。

 

 

 

 

 

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