その葬儀は、雨が降る中で行われていた。
喪主は葬られた男の、まだ幼い娘。彼はそれを、教会の屋根の上から見ていた。
『慰めにいってはやらないのか』
「今はそのタイミングじゃない。彼女が泣かないように堪えているのを、不用意に邪魔するわけにはいかない。…許されるのなら、彼女が虚勢を張る必要のある相手のいなくなった時に」
「小娘など、放っておけばよかろう」
「僕は、彼女を守ると言った」
それが、彼にとっては重要なことなのだろう。
「…どうせ、あちらにどうしても戻らなきゃならない理由はない。
「我は?」
「何処に行っても君は僕と共に居るんだろう」
「それはそうだが」
彼は空を見上げる。雨は不自然に彼を避けて落ちてゆき、彼の躯が濡れることはない。
「僕は、何もできなかった。おそらく、何も変わらなかった。…それも善し悪しだろうけれど、結局のところ、僕はどうやったって誰も救えないんだ」
自嘲するようにそう言って、彼は目を閉じた。
「救いたかったのか?」
「少なくとも、目の前の人が不幸になることを僕は望まないよ」
『それが普通だ』
「…どうかな。シャーデンフロイデって言葉もあるし」
「なんだそれは」
「ドイツ語。まあ、いわゆるメシウマ?」
『人の不幸は蜜の味、というやつか』
「誰かが不幸になったからって、自分に特が生まれるとは限らないのにね」
もっとも、損得ではなく、ただ、単純に人の不幸を楽しんでいるものもいるのだが。
「それが人間というものだろう。やつらは、物事を本質で捉えるということができぬのだ」
「僕も一応人間なんだけど」
「だが、一般的な人間ではあるまい。我との契約とも、赤龍帝とも、全く関係のないところからそなたは特異な人間だ。寧ろ、だからこそ
「…それはどうかな」
「…サーヴァントは、聖杯戦争が終わったらいなくなるんじゃなかったの」
「そのはず、だったんだけどね…まあ、僕は元々受肉していたようなものだし」
「あなたは。勝ったの?」
「負けていたら此処にはいなかったよ、多分。でも、勝ったとも言えないかな。結局、まともに戦ってないし」
「…あなた、一体何しに来たのよ」
「さあ。僕は結局、誰にでもできるようなことしかできなかったから」
彼は投げやり気味にそう返した。
「どうでもいいことだよ。既に終わったことだし、意味のないことだ。人は自分のできることをできるようにやるしかない。何事もなるようにしかならない」
「…その、わかったような顔して暗いこと言うの、やめなさいよ」
少女は彼の頬をつねる。
「…いたい」
「痛くしてるのよ」
暫くつねった後、少女は手を離してふん、と鼻を鳴らす。
「あなたは何でそんなにネガティブなのよ。ちょっと鬱陶しいんだけど」
「僕、嘘をつくのが苦手みたい」
「実際のところ、アレは何故生きておるのだ?」
「それをお前に話す必要性を感じぬ」
「
「それを言うなら、我もおそらく死んだはずである神父が何故ああして生きていられるかを聞きたいところだがな。アレは何故、現世に留まる程の
「さて…それは
「人に指図される筋合いはない。…受肉し
「あまり生意気なことばかり言っているようであれば、
「人の身に堕ちた英雄が、我をどうにかできるとでも?冗談も休み休み言え…抑止により弱体化せざるを得ぬとはいえ、我は弱くないのだぞ」
「ふん。旧世界の遺物が、よくもまあ、生意気なことを…」
「そういう貴様は遺物ですらなかろう」
「まあ一応、父様とでも呼んでおく?書類上とはいえ、そういう関係ってことになったんだし」
「好きにするがいい。私はおそらく、お前に父親らしいことはできんからな」
「そもそも期待してないよ。子育てとか、したことなさそうだし」
「…否定は、しないが」
「…何、その含みのある言い方」
「結局のところ、今回の聖杯戦争の勝者は誰だったんだろうな」
「マスターとサーヴァントが最後まで生き残った、という意味では、セイバー陣営なんじゃないか。…受肉は想定外の事態といううやつだろうしな」
「…不毛だよなあ」
「今に始まったことではあるまい」
五次とか四次~五次間とかのネタはあるんだけどまだ文章にしてないので続きは今の所ないです