通称破壊者√
アポロとの契約
五歳頃
秩序の破壊者1
『イッセー、我と契約を結ばないか?』
「契約?」
『ああ』
赤龍は少年に契約の内容を伝える。少年は少し考えた後、にっこりと笑って頷いた。
「いいよ。契約しよう。僕はどうすればいい?」
『我に名を付けてくれ』
「名前?」
『グレートレッド、ドラゴンオブドラゴン、夢幻、
「名前、名前かあ…」
少年は暫し考えた後に言う。
「アポロ、アポロってのはどうかな。何か、大仰で怖そうな呼び名ばっかりだし、名前が可愛かったら、少しは取っ付きやすくなるでしょ?」
『そなたがそう言うのなら』
赤龍はそう言って口を開く。
「我、
「我、病める時も健やかなる時もそなたを見守り、支え、その傍らに共に立つ。そなたに敵対する者あれば我が力を以て退ける。世界の全てが敵に回る時が訪れたとしても、我はそなたの味方であり続ける」
「この契約はいずれかの死によってのみ断ち切られる。他のどんな理由も、この契約を破ることはまかり成らん」
『この契約を受け入れるなら、そなたも己の名を以て誓ってくれ』
「わかった。僕、兵藤一誠も誓う。この契約が続く限り、僕は君と共にいるし、けして裏切らない。ずっと君の味方だ」
少年は赤龍と額を合わせた。少年の前に赤みを帯びた金色の指輪が現れる。少年が指輪をはめると、赤龍の角に魔術文字が刻まれた。
『これで契約成立だ』
「うん。改めて、これからよろしくね、アポロ」
『ああ。末永くよろしく頼む、イッセー』
「でも何か指輪って邪魔くさいし失くしそうだから、ペンダントにしようかな」
「?!」
ショックを受けた様子のアポロを気にせず、一誠は錬金術で細い鎖を作り出して指輪に通して首にかけた。
「そういえばこの指輪って何か意味があるのか?」
「
「何かルビがおかしかった気がするけどそれは追求しないことにしておこう…つまり、失くしたりしたら困るってことだよね」
「そなた以外には使えぬがな」
アポロは鼻先を一誠に摺り寄せた。
「ふーん…でも、終身契約なら物じゃなくてもいいと思うけどな。…まあ、大きく外見が変わったりしたら困るけど」
「我はイッセーの見目も気に入っている。変質させるつもりはない」
「…。僕の身体年齢を止める気じゃないよね?」
「止めるならもっと成長してから止める。そうだな…そなたが"大人"になった時にでも」
「…へー。何を以て大人になったと判定するかは聞かないでおこう、うん」
「…イッセー、その赤いのって…」
「アポロだよ」
にこ、と一誠は笑う。
「アポロだ」
ニィ、とアポロも笑う。黒歌は微妙な顔をした。
「わたし、白音…」
「…私は黒歌よ」
面識自体はある。というか、二人が一誠に会うことになったきっかけというか、要因はアポロなのである。白音と一誠はよく覚えていないようだが。まあ、白音は物心が付くか付かないかくらいだったので仕方ないといえば仕方ない。…一年程しか経っていないことではあるけれど。
「それで、今までコソコソイッセーが一人になった時を狙って連れ出してた癖に、私たちの前に顔を出すってのは一体どういう心境の変化なの?」
「我はイッセーと契約を結んだからな。イッセーの"家族"と顔合わせをしておくのも良いかと思ってな」
「父さんと母さんにも紹介してあげるんだ」
「…それは、どうかと思うよ?」
今でこそ、黒歌と白音という妖怪…猫叉の存在を知っているが、一誠の両親は普通の一般人である。聖書の三勢力とか、ドラゴンとか、神とか妖怪とか、そういう世界の裏側とは何の関わりもない、ただの人間なのだ。人間ではあるが、異常が服を着て歩いているような一誠とは違う。…確かに、血の繋がった親子なのに何故こうも違うのか、不思議ではあるが。
「何で?」
「二人共、ものすごく驚くと思うよ?」
「うん」
「…あんまり驚かせるのはよくないと思うな」
「でも、僕、父さんと母さんにあんまり隠し事したくないし…アポロとの契約は終身契約だから」
「どんな契約を結んでるのよ?!」
「しゅーしんけいやく?」
「いわゆる、"死が二人を分かつまで"というやつだな」
「………いちにいさまは、わたさないよ!」
「何を言う。既にイッセーは"我の"契約者だ。小娘に文句を言われる筋合いはないな」
「にーさま、クーリングオフ!にしゅーかんいない!」
「あはは、まあ、アポロとは契約結んだばっかりだから、対象になるんなら条件は満たせるだろうけど」
しかし、対象にはならないだろう。そういうもんじゃねーから、というやつだ。それに一誠は契約を結んだことに後悔はない。