次の日
~明久サイド~
僕が登校するとクラスの皆が教室の前に集まっていた。
「どしたの、これ?」
と雄二に訊くと雄二がこう返した。
「なんか祭りごとでもやるみたいだぜ?」
そう言いながら顎で黒板を見るように指示されたので僕は黒板を見る。
そこには「第1回文月学園オリエンテーリング大会」と書かれていた。
「何するの、これ?」
「どうやら問題を解いて座標を求め、その座標に宝があるそうじゃ」
「・・・ここでの宝は景品のこと」
「早い者勝ちらしいな」
「だけど、他チームと戦って奪うこともできるんだよー☆」
秀吉にムッツリーニに須川君、そして久しぶりに登校したフランさんが説明してくれた。
・・・・あれ?それってFクラス余計に不利じゃない?
「学力向上も図ってるんだろうよ」
と彩樹さんが付け足すように言った。ふむ・・・、成程。
「で、その景品って?」
「それは見つけるまでの内緒らしいのじゃ」
「学園長の悪戯心が少し作動したみたいだな」
天龍さんが少しぼやく。
・・・そんな悪戯心なんていらないです。
って、それよりも・・・。
「チーム編成は?」
できれば頭のいい人と当たりたいな・・・。
すると急に雄二にポンッと肩を叩かれた。
「何?雄二」
「明久、お前は俺と天龍のチームだぜ?」
・・・・・・ゑ?
「Really?」(僕)
「Yes」(雄二)
「You are a team same as us.」(彩樹さん)
・・・なんで僕らは今英語で話したんだろう。
「で、体操服に着替えないといけないんだってよ」
と横溝君が誰にともなく言った。
始まった直後、僕らは屋上に上がって頭をひねっていた。
「・・・雄二、解ける?」
「いや・・・、数学以外全く解けん。天龍はどうだ?」
と雄二が何故か上下両方とも冬の体操服を着ている彩樹さんに話を振る。
「技術と戦争・紛争関係以外はイマイチわからん。」
う~ん、こうなったら・・・。僕はポケットから三本の鉛筆を取り出す。
「これ、全部選択問題だよね?」
「ああ、そうだが?・・・明久、一体お前は何をしようとしているんだ?」
「え?これ?僕のお供だよ。此処に受験するときにもお世話になった。」
と僕は説明し始める。
「数学が『ストライカーσ(シグマ)Ⅴ』。現文が『プログラムブレイカー』。歴史が『シャイニングアンサー』。これ中々正答率がよくて………。」
と僕が説明をし終えると雄二は憐みの目で、彩樹さんは無表情で僕を見た。
「な、何・・・?」
「・・・すまない、明久。お前に一瞬でも期待した俺が馬鹿だった。」
「お前は『水●どう●しょう』のように6分の1の確立に振り回されてきたのか?」
「それより歴史はいらんだろ。」
二人から猛烈なツッコミが襲いかかる。
「なっ・・・!見ててよ!いけぇ!『ストライカーσ(シグマ)Ⅴ』!」
ヒュンッ カランッ コロコロコロ・・・・・
「絵的に凄く地味じゃね、これ?」
「ダサい」
「二人は少し黙ってて!」
で、結果は・・・。
「X座標が652!Y座標が237!Z座標が5!よって、あそこだぁあああああ!!!!!!」
と僕はその場所を指差す。
「・・・思いきり上空だな、明久」
「とってこい、バカ。」
・・・・・・・・・・・・・・。
「ハイ、すいません。少し調子に乗りまs「あったー!」?!」
「「?!」」
僕らが校庭を見るとそこには宝を掘り出して嬉しそうにしている工藤さん達がいた。
『やったー!商品の引換チケットだー!』
『初問から正解ね!』
『・・・この調子で次にいこう』
「XとYは当たってたようだな・・・。」
と雄二がつぶやいた。
「ね?!凄いでしょ?!」
「・・・信じられるか?あいつ等と俺等って同じ文月学園の生徒なんだぜ?」
と彩樹さんが残酷なことを言った。
・・・はい、そうですね。
「・・・一旦真面目に解こうよ」
「・・・お前が言うなや、明久」
「・・・技術なら任せておけ。吉井、お前日本史な?代表は数学を頼む。」
と彩樹さんが役割分担を言い始める。
「それ以外の科目が来たときにはどうすんだよ?」
「・・・そん時はそん時だ」
「・・・それしかないな。俺ら全員『馬鹿』だしな」
と僕らは屋上を後にした。
~須川サイド~
「ここらへんあたりだよねー☆」
とフランが俺達の前を先導するように走る。
「わかってるわよ」
と島田がそれを追いかけるように歩く。
「たしか、ここのはずじゃ・・・。」
・・・・・・・・・。
「アキの・・・、靴箱・・・?!」
「んー?どうする~?あける~?」
・・・島田、驚愕するな。そして、フラン。考えてる暇があるんだったら開けろ。
「え?!須川君も?!」
「さ、佐藤さん?!」
俺は佐藤さんとのチームと鉢合わせした。
「よ、吉井君の靴箱かい?!」
「うん、そだよー☆」
「・・・どうするの、これ?」
「うむ・・・。」
ていうか明久の靴箱に入っていたラブレター(彩樹から聞いた)のせいで厄介事に巻き込まれたし、開けたくねぇな・・・。
「え?!アキちゃんの靴箱?!」
といいながら滑り込むようにしてバンッと開けたKYがいた。
確か、こいつは・・・、玉野美紀?!
玉野美紀:Dクラス秘書。腐女子中の腐女子のうわさがある。
「待ってよ、玉野さん。」
と平賀たちもやってきた。
「・・・ハッ!私は今何を・・・?!」
条件反射だったのかよ・・・。
「・・・もらっていいか?」
「・・・いいよ?別に。」
「うん・・・、大丈夫だよ」
すげぇ気まずい。
で、見ると景品は『喫茶ラ・ペディス』の商品券だった。今週末でも佐藤さんを誘おうかな・・・。
~天龍サイド~
「うなれぇ!プログラムブレイカー!」
結局、現文の問題がわからず代表がノリノリで転がしているのを俺は後ろで見ていた。転がす前に吉井と代表が奇妙な踊りを踊っていたのを俺は一生忘れることが出来ないだろう。
「おい、あったぞ!」
「おお!雄二、さすがだね!」
「いや、俺は関係ないだろ」
で、男子トイレの貯水タンクで見つけたわけだが・・・、女子である俺が入っていいものだろうか?
「何も入ってねぇ!外れだ!」
「な、なんだって―?!クソ!ヒッカケだったのか・・・!」
「選択問題にフェイクもくそもねぇだろ」
・・・ったく。
「ここじゃねぇのか?」
と俺はドアの一つを開けるとカプセルが壁に張り付けられていた。
「何だと?!」
「真面目に解いたの?!」
「技術系の問題と座標が近かったんでな、もしかしたらと思って。」
とカプセルを開けると映画の無料チケットが入っていた。
「俺いらねぇんだけど?」
と言いながら俺は吉井に渡す。
「僕もいらないよ」
と言いながら吉井は代表に渡す。
「・・・翔子と一緒に行けと?」
「応援してるよ」
と吉井は親指を立てた。
「しかし、なんでなかったんだろうね?」
と吉井が訊いてくる。
「誰かほかのチームが先にとったんじゃね?」
と俺は適当に返しておいた。
「それで思い出したが、ほかのチームと鉢合わせした時には勝負した方が良いのか?」
「その必要はないだろ。すぐにずらかろうぜ」
と言いながら俺達はそそくさとトイレから出て行った。
「で、どうするよ?技術系は全て天龍が解いたろ?数学も大体俺が解いたし、歴史系も明久が解いた。で、今残ってるのは俺達全員苦手な科目ばっかりなわけだ」
と代表が言う。
「手当たり次第に校庭でも掘るか?」
と俺が冗談交じりに言う。
「手当たり次第・・・?・・・だったらXとYを全部求めてやればいいじゃないか!」
は?お前何言ってんの?
だが、代表はわかったみたいで「そうか!」と声を上げていた。
「XとYのクロスした場所は宝が隠されている可能性がある!」
「そうだよ!高さはわからないから、全部まわる!!」
「お前らバカか?!いや、バカだったか!無茶だろ?!どれぐらいあると思ってんだ!」
「面白そうじゃねぇか!バカならバカなりのやり方があるってことを教えてやろうぜ!」
「あー!最悪だ!仕方ねぇな!俺もやってやらぁ!」
「なら『善は急げ』だ!明久、お前は二階だ!俺は三階!天龍、お前は四階だ!」
俺達は走り出した。
「で、見つかったの?お前ら」
屋上まで来る途中に上から黒板消しが落ちてきたため、髪の毛真っ白になった俺が訊く。
「いや、全然・・・。」
と何故か上半身真っ黒になっている吉井が言う。
「なかったな・・・。」
と少し服が破れている代表が言う。
「どこにあるんだろう・・・。」
と言いながら吉井は立ち上がりウロウロし始める。
「ん?あ、あったよー!」
「え?マジで?!」
「・・・マジかよ」
と俺達は立ち上がりながら駆け寄る。
「ちょっと待ちなさいよ」
後ろから声をかけられた。って・・・。
「木下の姉(あね)さん?!」
「僕らもいるよ~?」
「・・・雄二には渡さない」
おう、まじか・・・。
「どうすんだ?」
「断れないだろ・・・。やるしかねぇ!」
「でも、相手Aクラスでしょ?!」
「承認します」
「「「「「「サモン!」」」」」」
Aクラス代表 霧島翔子 384点
Aクラス秘書 木下優子 322点
Aクラス 工藤愛子 344点
家庭科 VS
Fクラス代表 坂本雄二 342点
Fクラス代表補佐 彩樹天龍 379点
Fクラス秘書 吉井明久 365点
・・・は?
「代表、家庭科得意ならなぜ言わんかった!」
「天龍、お前もだろ!」
「二人とも喧嘩はやめて!勝負中でしょ?!」
「もらったぁ!」
「しまっ・・・!」
『時間です!!』
・・・時間切れかい。
「やったぁああああ!!!!!」
と吉井が喜んで跳ねていた。
「・・・・運だろ、最後。」
と代表がつぶやいた。
「・・・で、何故霧島さんはチャイナドレスを?」
「・・・恥ずかしい」
とか言いながら少し顔をそむける。
「・・・。」
代表はそれを鼻血をたらしつつ無言で見ていた。
「おい、代表。鼻血」
「え?まじで?」
「で、景品は?」
「え~と・・・。」
と言って吉井が固まった。
「なんだ、見せろ。」
と俺がひったくり、読み上げる。
「『西村先生の補習弐日分』だってよ。」
全員かたまった。
「え・・・、それはちょっと・・・。」
「・・・(ススス」
「・・・ボクも勘弁してほしいね」
「おい、最低でも最高クラスのアンタらが逃げるな。」
「・・・(ソォ~」
「・・・(コソコソ」
「そして、お前らも逃げるな」
「いや、いらないし・・・。」
「・・・(コクリ」
「ボクも二人と同じ意見だね・・・。」
「僕は勘弁だよ、彩樹さん」
「俺もだ。」
「しかたねぇな。・・・勉強熱心な奴にでも渡すか。」
こうして、俺達のオリエンテーリング大会は終了した。
これは余談だが、その景品は久保のポケットにこっそりと忍ばせておいた。