~天龍サイド~
「・・・」
「おい、明久魂抜けたみたいに微動だにしないけど大丈夫なのか」
「大丈夫だろ、代表。あいつはあんなので死ぬやつじゃないことはあんたが一番よく知ってるだろ?」
なんか吉井はひとしきり暴走するとまるで電池が切れたみたいにピクリとも動かなくなった。
「しっかし、あそこまで動かなくなるのは少々不気味ぞい」
「・・・さっきの明久は何か取りついてたような感じだった」
木下や土屋も心配そうにつぶやく。
「なんか妙にハイテンションだったよな、気持ち悪いくらいに」
「「「うんうん」」」
俺たちはそんなことを言いながらモニターのほうに目を移す。・・・結構本格的だな。
「・・・こういうのは男女ペアだと映えるよな~」
そう言って俺はニヤニヤしながら代表たちに視線を送る。
「で?どうするんだ?ペア」
「ああ。決めてない」
「おいおい。大丈夫か?お前らの彼女、ほかの奴らに取られるかもしれねぇぞ?」
「別に大丈夫だろ」
「Fクラスの奴でも?」
「よっしゃムッツリーニ。行くぞ」
「(コクリ)」
早かったな、決断が。そこまでFクラスの奴らに渡したくないか。・・・まあ、俺も龍田を渡したくないけど。
「・・・ハッ!僕はいったい何を!」
お、気が付いたか。
「おはよう」
「もう昼だよ」
なんでわかるんだよ。
「で?気分は?」
「嘘みたいに気分がいいんだけど、どういうこと?」
「数分前の自分に訊きな」
「???」
吉井は首をかしげる。オイ、記憶ねぇのかよ。こえぇよ。
するとそこに明菜がやってきた。
「お兄ちゃんは少しというかだいぶおかしくなってたんだよ」
「え?そうなの?」
「うん。だって缶詰めにするぞとか言ってたもん」
「何それ新手の脅迫?割と怖いんだけど」
「それ、お前が言ったやつだからな?」
「ところで、ムッツリーニと雄二は?」
無視かよ。
「あやつらならペアを決めに行ったぞい」
「どうせ霧島さんと工藤さんでしょ?」
「・・・まあ、そうだろうな。あれ見ろよ」
俺が指さした先には手をつないでいる霧島さんと代表、工藤に詰め寄られている土屋の姿があった。
「ハハハ、あやつらも大変じゃのう」
「ところで秀吉。秀吉は誰と組むの?」
すると木下は考え込んだ。
「わしは別に明久でもいいんじゃが…」
「僕もねぇ、少し悩んでんだよ」
「ヘェ、お前も悩むことあるんだな」
「あるよ。一つや二つくらい」
さいですか。俺は少しため息をつきながら思い出にふけた。
あー・・・、そういや龍田が昔お化け屋敷でガチで泣いたっけなー。俺はその時あんまり怖いと思わなかったけど、あいつが本気で泣き出して収拾がつかなくなった時があるんだよなー。
夏の夜には一人でトイレいけなかったよなー、あいつ。さすがに今は何ともないけど。
むしろ脅かす側のほうが今は適任じゃねぇかな、あいつ。
「天龍ちゃーん」
そんなことを考えていると横から声をかけられた。
「ん?なんだ、龍田」
「えへへ~、呼んでみただけよ~?」
・・・かわいいところは今でも全く変わんねぇんだけどさ。
そう思いながら俺は龍田の頭をわしゃわしゃとなでる。自分でも少しがさつだとは思うが俺にはこのやり方が一番相手を撫でてると自分自身が実感することができるのだ。
「ん~~~~」
なにこのかわいいいきもの。いや、俺の妹だわ。
「ちょっと!どういうことよ!」
「どういうことですか!明久君!」
俺は少し大きな声のしたほうを向く。
そこには明久に詰め寄る姫島コンビがいた。
「おい、何の騒ぎだ」
俺は明久に質問をぶつける。
「いや、僕は決めてないって言ったらこの二人が詰め寄ってさ?少し困ってるんだ・・・」
「・・・迷惑なら迷惑だって言えばいいだろ」
何を我慢する必要があるのか。いや、ない。(反語)
嫌なら嫌と言えばいいだろう。
そうじゃないならそうじゃないと言えばいいだろう。
ものすごい単純な話ではないのか。
それはそんな意味も込めて明久に言ったのだ。
「え?!で、でも・・・」
・・・なんかじれったいな、こいつ。
「さっさと決めろ。こいつらと組みたいかそうでないのか。今から5秒以内だ。5秒以内で決めろ」
「えぇ?!」
「5」
お前は自分を押さえつける必要性はない。
「4」
お前とは短い付き合いだからこそ分かる。
「3」
お前はもう十分に自分をおさえてきただろう。
「2」
もう我慢しなくてもいいんじゃないか。
「1」
その気持ち、解放しろ。
「僕は、君たちと組む気はないよ」
その時の明久の目はとてもまっすぐな目だった。
俺はそう言わさせてもらおう。
「0」
俺はニヤリと口端をゆがめた。
そして暴れ出そうとする2人を押さえつけると言った。
「お前は今の自分の欲望に従って動け。誰とくむかはその欲望に任せろ」
続く