第75問
最近は夜も少し肌寒くなってきたこの時期、運動の秋、食欲の秋、勉強の秋、芸術の秋といろいろあるがなにより運動の秋であろうと俺は思う。
体を動かすことによってストレスというのは解消されるからだ。
そしてあいつらも例外じゃない。
「雄二ー! きっちり投げてよ!」
「明久ぁ! しっかりとれや!」
なぜかあいつら二人は口論している。どうやらお互いの息が合わないらしい。やれやれ・・・。
俺は口喧嘩から殴り合いに発展している二人に近づいていく。
「お前ら」ガチッ
「「え?」」
「猛省しろ」
「「そげぶっ?!!」」
そして頭を掴むと地面にめり込ませた。うん、なかなかいい具合にめり込んでいると思う。
こんなことしてる暇なんてないだろうに…。
・・・ああ、なんでこんなことしてる暇がないかを教えないといけないな。
・・・あれは今から一週間前の出来事だった。
~一週間前~
あの時、俺たちはいつも通りに西村先生のSHRを受けようとしていたんだ。
その時だ。地獄行の鐘が鳴ったのは。
「今から持ち物検査を始める!!」
あの後は大惨事だった。
「やめろ! やめてくれぇえええ!!!!」
「こんなこと、残酷すぎるぅうう!!!!!!」
「ウワァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
「ギャアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
・・・なんであいつらあんなに叫んでたんだろ。
ま、とにかく・・・そういうことがあって持ち物がすべて取られたわけ。
・・・まぁ、さすがに抱き枕のシーツはアウトだわな、誰とは言わないけど。
「くそう・・・ゲーム機を取られた・・・。あとでみんなで一狩り行こうとか考えてたのに・・・」(吉井)
「一狩り行くのはお前の家でもいいだろ」
「クソッ、翔子の写真集を取られちまったぜ・・・」(代表)
「持ってる方が悪い」
「わたし・・・! わたしはぁ・・・!!」(亜紀)
「言うな言うな。そんなにつらいなら言うな。こっちが悲しくなる」
「うちは・・・! うちはぁ・・・・!!」(島田)
「はいはい。落ち着け。今にも人を殺しそうな顔してるから」
「私は抱き枕のシーツを…」(姫路)
「おいおい」
「お人形とられちゃった…」シュンッ(フラン)
「なんで持ってきてんだよ・・・」
「・・・(明久の写真がとられたのじゃ)」(木下)
「・・・ッ?!(こいつ直接脳内に・・・ッ?!)」
「俺何も取られてないぞ」(須川)
「それが普通なんだよ」
「・・・」
「土屋、どうしたんだ? そんなに静かにして」
「・・・」
「…土屋?」
「う~~~ううう…」
すると土屋から嗚咽の声が漏れ始めた。
「つ、土屋?」
「写真のデータを取り上げるなんて…う~~~ううう・・・あんまりだぁ・・・」
するとぽろぽろと土屋の目から涙がこぼれ始めた。
「HEEEEYYYY あァァァんまりだァァアァ
AHYYY AHYYY AHY AHYWHOOOOOOHHHHHHHH!!
おおおおおおれェェェェェのォォォォォ写真のォォォォォデェェェェェ
タがァァァァァ~~~~!!」
『『『?!!』』』
すると突然土屋がギャンギャンと泣きわめき散らしたのだ。
俺たち全員が困惑の色を示している。
な、なんなんだこいつは・・・?! いつもなら血涙を流しておどろおどろしい表情をするのに・・・。
・・・それはそれで怖いな。
「あァァァァァァァァァァあああああああ」
「な、なぁ・・・、止めた方がいいんじゃ…」
「わかんねぇ・・・。俺にはさっぱりわかんねぇ…」
「・・・」ピタッ
すると急に土屋は泣きわめくのを止めた。
俺たちにはあまりにも不気味でどうしようもなかった。
「・・・」ゴゴゴゴゴゴゴ
『『『ゴクリ』』』
「・・・フー。スッとしたぜぇ」
『『『?!!』』』
「俺はあまりにも怒りのパラメータが上がると、泣きわめくことでクールダウンすることにしてるんだ」
「す、すげぇ! 泣きわめくこと
「さすがムッツリーニ! 僕らができないことを平然とやってのけるッ!! そこにしびれるあこがれるぅ!!」
「・・・あれ? ムッツリーニさっき写真のデータがなんたらって・・・」
「・・・」
「・・・ま、まさか」
「・・・ああ、写真のデータが入っているメモリーをすべて奪われた」
『『『『『『『なにぃいいいいい?!!!!!!!!』』』』』』』
その時クラスに電撃走る!
「つ、つまり! 僕たちは『おあずけ』をくらうってのかい?!!」
「・・・ああ。バックアップもとっていなかった。こんなことは予想外だったからな・・・!」
「ひどいよぉ・・・こんなこと、あんまりだよぉ・・・・・」
「・・・」
皆が嘆き始めているとき、代表は険しい顔をして腕組みをしていた。
「代表、おまえ、まさか・・・」
「ああ、行くぞ。お前ら、ついてこい」
「ゆ、雄二! 君は、まさか・・・!!」
「ああ。取り返しに行くぞ」
すると俺と龍田と須川を除く全員が立ち上がった。
「「いってらっしゃ~~い」」「健闘を祈る」
「ああ、吉報を届けてやるよ」
そういうと代表は皆を連れて教室を飛び出した。
~しばらくして~
「まぁ、予想はしてた」
俺はFクラスの光景を見ながらそう言った。
「まさか反省文を書かされるとは…」
「これだったら停学処分の方がまだましだよ・・・」
「これ人間のやることかのう・・・」
人間だからだろ。
~放課後~
「天龍」
「あん、なんだよ」
「折り入って相談があるんだが」
「・・・おい、龍田」
「?」
「先に帰っといてくれ。少し話があるから」
「わかったわ」
そう言うと龍田は教室を出て行った。今この場には俺と代表しかいない。
俺は胡坐をかきながら代表の体面に腰を落とす。そして頬杖をしながら口を開いた。
「・・・で、なんだ? 折り入って話すんならそれほど価値のある話なんだろうな」
「俺たちの持ち物がある場所が分かったんだ」
「どこだ?」
「例の地下金庫だ」
「ああ、あそこか」
「そこでだ天龍・・・代表補佐としてではなく、友人としてお願いしたいことがあるんだが、一緒に地下金庫に『ブツ』を取りに行かないか? (中略)
もし、それが手に入るのなら・・・天龍、俺たちは再びムッツリーニの最高の写真集を手に入れることができる」
「噂によれば・・・、あの金庫は文月学園代々に伝わる由緒正しい金庫らしいな。(中略)
・・・お前らが普段いつどこで写真を取引してるのかは知らないが・・・教師たちから堂々と(鍵を)借りればいいだろう?」
「しかし目的が目的。教師共は誰も貸してくれない」
「オイオイオイオイオイ
オイオイオイオイ
オイオイオイ
オイオイオイ
オイオイオイオイオイオイオイ
貸してくれないから金庫から勝手に『ブツ』を奪うってそれって『違反』ってことだろうッ?!」
「奪うのは俺と明久とムッツリーニ、そして秀吉だ。・・・夜こっそりと侵入するからお前は『照明』と『見張り』をしてくれればいい」
「ナアナアナアナアナア
ナアナアナアナア
ナアナアナアナアナア
ナアナアナアナアナア
ナアナアナアナアナア
照明と見張りだけって・・・俺は一応料理部の副部長なんだぜ・・・。
・・・学校的には少し有名な方なんだ。
それに!あの金庫はこの学園代々に伝わる由緒正しい金庫だ! それを守ってきた先生たちの苦労は想像もできない!」
「『金庫破り』をする」
「だから気に入った」
「よし・・・そう言ってくれると思っていた」
「一応保険として言っとくぜ」
「なんだ」
「いざとなったら俺はお前らを置いて逃げるからな」
「ああ、それで構わない。巻き込んでるのは俺たちの方だからな」
「・・・もしかして木下、乗り気?」
「ああ、予想以上にな」
「いよいよこのクラスから常識枠がいなくなってきたぞ」
「なにいってんだ天龍」
「?」
「もともといねぇだろ」
グーで殴り飛ばした俺は悪くないと思う。
その日の夜、侵入したのはいいが普通に見つかって全員反省文を書かされることになった。しかも代表たちは前科ありということでさらに追加されていた。
続く