異世界転生したので本物のくっころが見たい! ~悪役を演じているのに、なぜか女騎士たちがみんな俺に落ちていた~   作:砂乃一希

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第24話 くっころガチ勢、最高の愉悦を感じる

「そんな馬鹿な……!ドレイク家は……!」

 

「ドレイク家は王家とは絶対に婚姻関係を結ばない。そう思いましたか?」

 

「……!」

 

マーカム公の顔はまさしく図星だった。

やはりそう思われていたか。

上手いこと出し抜けたようで良かった良かった。

 

「正気か……?お主たちは自分で自分の逃げ道を絶ったのだぞ……!」

 

「ええ。全て承知の上ですよ」

 

実は今はドレイク領の田舎のほうで隠居をしているドレイク家の先代当主の妻、つまり俺の祖母にあたる人物が隣国であるゴーラブル王国の大貴族の出なのだ。

ゴーラブル王国の国王もドレイク家を高く評価していて直々に引き抜きに来たこともあったらしい。

流石にそれは断ったらしいが貴族派との戦いに敗れればいつでも派閥を全部抱え込んでゴーラブル王国でも力とある程度の地位を確保したまま逃げることが可能な状況だったのだ。

ドレイク家の派閥はほとんどが軍部に所属する家でありそれが丸ごと他国に流れ出てしまえばアルバー王国はまず間違いなく滅亡する。

それ故にマーカム公も迂闊にドレイク家に手を出すことができなかったのだ。

 

しかしこれで状況は変わった。

王家との婚姻はアルバー王国内では大きな力を持つが迂闊に他国には逃げられなくなる。

つまりこれはゴーラブル王国への逃げ道を完全に捨て、婚姻による派閥の強化をすることで全面的に貴族派を叩き潰してやるというドレイク家なりの宣戦布告なのだ。

 

「あっはっは!我が姉ルーシーがつい最近国外に嫁いだことでシンシアは政略結婚をするべき相手は特にいなかった。だから油断したのだろう?まだ大丈夫だ、自分の孫の邪魔になる人物が現れてから考えれば良い話だ、と」

 

「いえ、そんなことは考えておりませぬ……」

 

「シンシアの婚姻が通らないように多少の小細工も仕掛けてあったようだがあれくらいならば父の力を使わずとも余だけで十分に対処できてしまったぞ。詰めが甘かったな」

 

まさかここまでヴィクター王子の言った通りに上手く事が進むとは思ってなかった。

最初にヴィクター王子から提案を受けたときはびっくりしたもんだ。

だって計画を説明する最初の一言目が『邪魔な貴族派の奴らを全員消してしまいたい。ついでにシンシアと結婚してくれると助かるんだが?』と婚姻すらも向こうから頼まれたことだった。

それだけヴィクター王子も早いところシンシア王女を嫁がせたかったらしい。

まあ貴族派からすれば喉から手が出るほどシンシア王女の身柄がほしいだろうしシンシア王女自身が少し危ういところがあるもんな。

 

「これがドレイク家(我ら)の覚悟です。受け取っていただけますか?マーカム公」

 

「……王子殿下たちの判断が正しいと良いですね。そうであるようささやかながらも願っていますよ」

 

「思ってもいないことを。素直にシンシアがほしいですと言っておけばよかったのにな。まあ言ったところで我が妹を渡すつもりなど毛頭無いが」

 

「……話は終わったようなので私はこれで失礼します」

 

そう言ってマーカム公は一礼して俺達から離れていった。

そんな様子を見てヴィクター王子はまるで大人へのいたずらが成功した子どものようにカラカラと笑う。

俺もこの先に楽しい楽しい人生が待っていると思っていたから緊張こそしなかったもののこんなにも気楽ではいられない。

ヴィクター王子は少し神経が図太すぎではないだろうか?

 

「最初は上々だな。よくやってくれた、ジェラルト」

 

「いえ、ドレイク家や私にも利があっただけのことですよ。それにほとんど動いたのはヴィクター王子ですから」

 

「はっはっは!そう謙遜するな。俺と同じ年で同じように物が見れる奴はそういないぞ?実に楽しい時間だった」

 

「ちょっと!2人だけの世界に入らないでください!一体何がどうなってるんですか!?」

 

俺がヴィクター王子と話していると明らかに不機嫌そうなシンシア王女が間に入ってくる。

まぁシンシア王女に婚約のこと何も伝えてなかったからな。

ヴィクター王子が自分の妹の婚約なのに本人には伝えないほうが良いとか言い出すから。

まあ俺もサプライズで発表されたシンシア王女の顔が見たくて止めるどころか賛成したけども。

 

「落ち着け、シンシア。そう苛立っても何も変わらないぞ?」

 

「兄様が何を言ってるんですか!というかこれが落ち着いていられると思いますか!?ちゃんと全部説明してください!」

 

「言われずとも後でゆっくりしてやるさ。それよりもそなたにはやるべきことがある」

 

「やるべきこと……?」

 

「ああ。なあ?ジェラルト」

 

そう言ってヴィクター王子は俺にキラーパスを投げてくる。

もっと良いバトンの渡し方があったでしょうが!

俺はシンシア王女のくっころを見るためとはいえ、評価や好感度が最低レベルなんだからこんな興奮した状態のシンシア王女をどういなせっていうんだよ!?

 

「シンシア王女?どうぞお手を」

 

「……なぜあなたの手を取らねばならないのですか?」

 

すっげぇ嫌そうな顔!

どうやらシンシア王女に知らせず勝手に婚約の話を通したことで今までより更に好感度が下がっていたらしい!

ああ……今の顔脳内にもっとしっかり焼き付けておくんだった……

 

っておっといけない。

今はこんなことをしている場合ではなかった。

シリアスな場面にくっころを持ち込んでもしょうがない。

あとで見る時間はあるのだから今はあくまで真面目にいこうじゃないか。

 

「なぜと言われましてもお披露目ですよ。直に声がかかってステージの上に登ることになりますから」

 

「私は婚約など了承していません。誰があなたの妻になんてなりますか」

 

グハッ!

い、今の言葉は……最高に心がしびれたぜ……!

言ってほしい言葉トップ10に入る最高のセリフだった。

さっき締め直したはずなのにまたシリアス展開が遠のいていく。

狙ってやってるのか?

俺の癖を満たすために自発的にやってくれているのか?

それはそれでとても嬉しいがこの素晴らしさはやはり狙って出せるものじゃないと思う。

素でこれを出せるとかシンシア王女は俺にくっころを見せるためだけに生まれてきてくれたのだろうか?

 

しかし心の中で喜んでばかりでもいられない。

本当にここはシリアスにならないといけない場面なのだ。

噂のこともある分、王女の婚約相手としてしっかりと挨拶をしなければならないのだから。

俺はシンシア王女を説得するために他の誰にも聞こえないよう口を耳元に近づける。

 

(既にこんなにも多くの人の前で婚約を発表したのです。今更取り消すのは不可能ですよ)

 

(そ、それは……)

 

(お父上や王子殿下の顔を潰すことにもなってしまうのですから。ここは私の手を取ってくださるとありがたいです)

 

(……卑怯者。恥を知りなさい)

 

そう言ってシンシア王女は本当に嫌そうに俺の手を取る。

いや、本当に言葉も表情も文句無しで全会一致の満点です!

 

「それでは妹のことを頼んだぞ、ジェラルト」

 

「ええ。お任せください。王子殿下」

 

ヴィクター王子も何気にシスコンな気がする。

普段は破天荒な行動でシンシア王女を振り回してばかりだけど所々に優しさが垣間見える。

そんな大事な妹さんと婚約することになってしまい本当に申し訳ない。

絶対に大切にするって誓います、お義兄さま。

 

「それでは挨拶にいきましょうか、シンシア王女」

 

「……はい」

 

それからシンシア王女は明らかに作り笑いを浮かべて貴族たちとの挨拶を済ませていった。

このことにより俺とシンシア王女の婚約は貴族の中で周知の事実となり後に大々的に国民にも発表されることだろう。

 

いやー!こんなにも上手くいっちゃって本当にいいのか!

俺の普段の行いが良いからくっころの神様が俺に味方してくれてるとしか考えられない。

異世界くっころ生活最高だぜ!

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