異世界転生したので本物のくっころが見たい! ~悪役を演じているのに、なぜか女騎士たちがみんな俺に落ちていた~   作:砂乃一希

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第11話 肥満貴族、破滅と決意(デブモン視点)

「なぜだ!なぜ伯爵たる私がこのような扱いを受けねばならんのだ!」

 

強く叩いた悪趣味な金ピカの像がべコリと凹む。

その近くにはビクビクとした様子で家令が立っている。

 

(私の作戦は完璧だったはずだ……なのになぜ……?)

 

モーン家は貴族派に属する有力貴族だった。

しかし1年前にデヴィットがドレイク家の嫡男であるジェラルトと揉め事を起こしたことによりゲイリー=マーカム様のお怒りを買い厳重注意をくらった。

再び貴族派での立場向上を目指しあの忌々しいジェラルト=ドレイクを消し去りあわよくば息子であるデヴィットとシンシア王女を結婚させたかった。

 

だがあの羽虫どものせいで班割りは変更を余儀なくされ成功すると思っていたヌシでの襲撃もジェラルトとイーデン家の小僧に阻まれたと聞いた。

護衛もわざわざ褒美を用意して新兵を派遣したのに子供2人だけであのヌシを抑え込まれるとは全く想定していなかったのだ。

 

(そもそも証拠も無くなぜ私を疑うのだ!伯爵たる私を真っ先に疑うなど言語道断!一体何を考えているのだ!)

 

せっかく隠していた色んなことが王室にバレてしまった。

いきなり抜き打ちで家宅捜索など間違っている!

そう声を高々に言いたかったが既に調査は行われバレてしまったならば今更声を上げてもどうにもならない。

 

ジェラルトたちからすればあの状況でモーン伯を疑うのは当然のことだがデーブ=モーンからすればそれは違う。

伯爵というこの国有数の尊い血を引く貴族たる自分が疑われるなどこれっぽっちも思っていなかったのだ。

モーン領から出ず、仕事も全て部下に任せ惰眠を貪ってきたゆえに世間を知らなかったのだ。

 

「謹慎を命じられたせいで動くに動けぬ……!一体どうすれば……!」

 

自分の部屋をウロウロと歩き回り頭を悩ませていると突然扉がノックされる。

荒々しく返事をすると入ってきたのはデヴィットだった。

 

「デヴィットか」

 

「親父。謹慎って聞いたぞ。本当にこの計画は大丈夫なのか?このままあの憎きジェラルト=ドレイクを消せるんだよな?」

 

それはまさに今一番聞かれたくなかった言葉。

計画が頓挫しそれどころか自分の未来すら危うくなったところでのこの言葉はデーブの心を苛立たせた。

 

「お前は黙っていろ。大人の世界に口を出すな」

 

「……!わかった。ただあいつだけはぶっ殺してくれ!絶対にあいつだけは許せない!」

 

デヴィットはそう叫び部屋から出ていく。

まさに自分も同じ気持ちだった。

ずっと狙っていたシンシア王女とあっさり婚約し天才と呼ばれヌシすら葬る実力を持っていたジェラルトのことが憎くてしょうがなかった。

しかし今の自分にはどうすることもできずただ恨みがましい罵詈雑言を心の中で吐き捨てることしかできなかった。

 

◇◆◇

 

今日もまた、王宮から派遣された検査官がやってきた。

次々に隠していた研究結果や資料が発見され追い込まれていく。

すぐにでも隠したり破棄したりしたかったが謹慎という名の軟禁により見張りがついていたためそれもできなかった。

 

「ではモーン伯、私たちはこれで」

 

「……」

 

「くっくっく!随分とやらかしたようですねぇ、これは死刑かな?」

 

「ぎゃはは!楽しみに待っていてくださいね」

 

伯爵たる自分がたかが一端の検査官、しかも平民にバカにされて何も言い返せないこの状況に猛烈な怒りが湧く。

去っていく検査官の背を睨みつけるが怒りは収まらない。

近くにあったものを殴りその衝動のまま暴れていると息が切れる頃には部屋の中は悲惨な状態になっていた。

 

(くそ……なぜこうなった……?思えばあの2人が来たからおかしなことになったんだ……!)

 

思い返すのはフードで顔を隠した顔も名前も知らない謎の二人組。

数年前にいきなり我が領主館に訪問しヌシの生育方法の情報を何の対価も求めず提供してきた。

最初は疑ったが本当にその方法でただの動物からヌシへと昇華させることに成功したのだ。

 

そしてつい先日再び私の前に現れてジェラルト及びヴィクター王子の暗殺を提案してきたのだ。

あいつらがおかしなことを言い出すからこうなってしまったんだ!

 

「くそ……かくなる上は……!」

 

本をどかし家族すら知らない隠し金庫を開ける。

中の物を取り出してニヤリと笑った。

 

「フフ……ククク……アッハッハ!こいつさえあれば私はまだ巻き返せる!ここからが本番だ!おい!誰かいるか!」

 

呼びかけるとメイドが入ってくる。

 

「今すぐティアを呼べ」

 

「は、はい……承知しました……」

 

「急げ!早くしろ!」

 

「ひっ!は、はい!」

 

メイドがバタバタと走って退室する。

使えない者ばかりでイライラとしてくる。

だが手の中にあるこれが私の精神を唯一保たせてくれていた。

 

「私の邪魔をしたこと……覚悟しろ、ジェラルト、ヴィクター……!必ず貴様らはこの世から消してやる……!己の非力を知り私に歯向かったことを後悔するがいい!アッハッハ!」

 

貴族派での立場向上など生ぬるいことはもう言わない。

私がこの国の王になってやる……!

 

そしてモーン伯挙兵の報がジェラルトたちの下に届くのはこの騒動から1ヶ月後のことだった──

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