異世界転生したので本物のくっころが見たい! ~悪役を演じているのに、なぜか女騎士たちがみんな俺に落ちていた~   作:砂乃一希

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第16話 肥満貴族、最後の切り札を使う(デブモン視点)

「おのれ!一体どうなっておるのだ!」

 

我が軍の数は魔物を加えて2500ほど。

相手に数で劣れど、魔物の力によって逆転できる予定だった。

しかし全くと言っていいほど上手くいかない。

今まで全軍を取り仕切っていたティアが左翼に入りその分中央と右翼に魔物を多く配置したのだが……

 

「伝令!右翼と敵左翼が激突した模様!押されています!」

 

「伝令!敵中央を攻撃していますがビクともしません!」

 

「伝令!左翼にてボブ様が討ち死に!現在ティア様が迎撃に当たっています!」

 

次々に伝令が入ってくるがどれもいい報告のものはない。

全ての内容が押されているというものであったり誰かが討ち取られたという報であった。

 

「ええい!なんとかしろ!」

 

「そ、そんなことを言われましても……」

 

近くにいた軍師の真似事をしていた者の胸ぐらを掴み怒鳴りつける。

しかしその者は汗を浮かべて言い訳ばかりを言うだけで何も解決策など出さなかった。

 

「ごちゃごちゃ御託を並べず早く対応しろ!この戦絶対に負けるわけにはいかんのだぞ!」

 

「し、しかしあの演説でこちらの士気を大きく削られてしまい……それに魔物の扱い方なんてわかりません……!」

 

「なんとかしろ!言い訳せず策を立てろ!負ければ貴様も処刑だぞ!」

 

「ひ、ひぃぃ!た、ただいま!」

 

バタバタと音を立てて走り去っていく。

今視界に入るものの全てが腹立たしかった。

あいつの演説だって本当にイライラする。

何が逆賊か。

私がこの国のトップに立つべき存在だからこそ兵を挙げただけのこと。

人が息をするのと同じように当然のことなのだ。

 

(これさえ……これさえあればまだ逆転できる……!まだ私はこんなところで消えるわけにはいかんのだ……!)

 

「親父!右翼が押し込まれてる!なんとか援軍を送ってくれ!」

 

「……デヴィット」

 

我が愛する息子でありジェラルト以上の才をもち名を馳せると確信している自慢の息子だった。

おそらく負けるのを恐れたジェラルトが学園に圧力をかけデヴィットの入試成績を下げたことで未だデヴィットの才は世に知れ渡っていない。

だがこの戦でデヴィットを失うわけにはいかなかった。

 

「デヴィット……お前は退け」

 

「はぁ!?何言ってんだよ!俺が今抜けたら……」

 

「構わんのだ。お前を失えば我らは終わる。そのジェラルトをも圧倒的に超える才気を以てモーン家を繁栄させよ」

 

「親父……」

 

デヴィットはしばらく放心していたがやがて覚悟を決めたように頷く。

話が一段落しいよいよデヴィットを離脱させるために動き出そうとすると突然大きな笑い声が聞こえてきた。

 

「ガッハッハ!グフッ!ゴホッ!ガハハハ!」

 

「っ!?何者だ!」

 

そこにいたのは棍棒のような大きい武器を持ち馬に乗った大男。

その棍棒にはおびただしい量の血が付着しており明らかに味方ではない様子の男だった。

 

「いや、失礼。そなたらが面白すぎる会話をしていたのでつい笑ってしまったのだ」

 

「面白い、だと?」

 

「ああ、そこのデヴィットとかいう小童《こわっぱ》がジェラルト様より才があるだなんだの抜かした上にこの場から逃げられると思っている。とんだ茶番で場に酔っているのか?実に滑稽で面白いものを見せてもらった」

 

凄まじい侮辱に頭がカッとなる。

さっきまでの親子の時間の全てを馬鹿にされたのだ。

許せるものでは無い。

 

「そなた……名を名乗れ!このデヴィット自ら討ち取ってくれる!」

 

「我が名はマーティン=ダウンズ。そなたらの命、貰い受けるぞ?」

 

マーティン=ダウンズだと?

ドレイク家の息のかかった軍家ではないか……!

 

「ふざけたことを申すな!その傲慢地獄で後悔するといい!」

 

「ま、待てデヴィット!そいつは……!」

 

なんとか止めようとするがデヴィットは剣を握って突撃してしまう。

攻撃されるダウンズは全く焦ることなくニヤリと笑った。

その瞬間、嫌な予感がする。

 

「殺すわけにはいかんのでな、しばらく眠っていろ」

 

横薙ぎに振るわれたダウンズの棍棒がデヴィットに直撃する。

メキメキと嫌な音がしてデヴィットが吹っ飛んでいく。

 

「デヴィット!」

 

「安心なされ、死んではいない。まあひっ捕らえた後に親子揃って公開処刑は免れぬだろうがな」

 

「くっ……貴様どうやってここまで来たのだ!」

 

「柔らかい壁があったもので突き破らせてもらった。あとこの周りは我の部下が包囲している故助けは来ぬぞ?」

 

もう右翼が抜かれたのか……

まだ開戦してから数時間しか経っていないにも関わらず目の前の男は我が軍を突き破ってきたという。

化け物ぶりが嫌になってくる。

 

「さて、貴公には大人しく捕まってもらおうか。もし抵抗するなら骨の10本や20本は覚悟されよ」

 

(もうあれを使うしかない……か)

 

私はポケットに入れておいたとっておきを取り出す。

謎の2人組に貰った最終兵器《リーサルウェポン》。

最後の逆転の望みをかけた一手だった。

 

「いでよ!巨人(ギガント)!」

 

絶滅してもなおその圧倒的な大きさと強さで今も語り継がれる巨人族。

私のとっておきはそれを召喚できるという代物だった。

こいつさえいれば私に逆らえるものなどいない!

手にした瓶の蓋を開け、召喚しようとする。

しかし体中に激痛と痒みが走り回る。

 

「ナッ!?コれハ……!?」

 

「おいおい、どうなっておるのだ。これは一体……!?」

 

「グわぁァ!!!!」

 

その瞬間、意識の全てがブラックアウトした。

もう何も感じない何も見えない。

残ったものは自分以外の全ての存在を許さない破壊衝動だけだった──

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