フルコンプ癖のある星崎愛央は、同じ雫世界の仲間達に一つの相談を持ちかける。
それは、新しいフラグメントを自分たちで作ってみようという計画であった。

*BLUE REFLECTION TIE/帝の二次創作です。
*ネタバレ要素が多いため、帝プレイ済みの方推奨です。
*この作品はフラグメント合同誌に寄稿した小説を手直ししたものとなります。

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フラグメント魔改造計画

 

「オリジンに挑む前に、この雫世界でやり残したことはさ……全て済ませたいんだよ……」

「そうね」

 

 真剣な愛央の言葉に対し、頷いた伶那の表情は多分に呆れを含んでいた。

 

「これは私たちの、ちょっとだけ長い夏休み……悔いだけは、残したくないんだ」

「……それで?」

 

 一体何が言いたいのか。ろくでもないことであろうことはなんとなくわかる。

 

「だからさ伶那さん……もうちょっとだけ素材集めやっておこう?」

「限度があるでしょ!」

 

 伶那は机を良識的な強さで叩き、立ち上がった。

 

「見てよ、あの窓の外! 屋台やらベッドやら街灯やら宇宙船やら……! 学校の周りはもうありとあらゆる施設で埋まってるでしょうが!」

 

 伶那が教室の窓を指し示す。そこからは無数の施設群が一望できた。

 実用的な施設から単なるオブジェに至るまで、学校の敷地全てを埋め尽くす勢いで配置されている。

 いや事実、嵩張る屋台などの施設に関しては最初期よりもずっと密接するように配置され、限界まで省スペース化の努力が図られている痕跡は見て取れた。もはや配置スペースは限界ギリギリどころか、ちょっぴりアウトしているのだ。

 

「い、いやぁでも……学校魔改造計画は勇希の悲願だし!」

「……いやー、あたしも言い出しっぺだからこれ言うの躊躇われてたんですけどー……もう充分に魔改造はしたかなぁって……」

「ええ!? 勇希が裏切った!?」

「だってもう作りたい施設とか思い浮かばないんだもぉん……」

「ほんとよ。……作りたいのはいいけど星崎さん、これ以上他に何か建てたいものでもあるの?」

「そう言われると……さすがにもうないけど!」

「ないのかよ」

「ないけどさぁ! けど他にもっとやり残したこととかあるでしょ絶対! 最後の戦いに行く前にさぁ!」

「また愛央ちゃんの発作が始まったのです」

 

 星崎愛央は皆の良き友でありリーダーである。

 明るく社交的な性格は雫世界の皆から好かれ、彼女たちのリーダーとして率先して動く行動力も備わっている。

 皆、彼女の方針に従うことに否はないだろう。

 

 ただし共通の認識として、愛央には大きな悪癖があった。

 それこそが、フルコンプ癖である。

 

「ラスダンに挑むならみんなのレベルは当然最大まで上げなきゃいけないし、全ての武器は最大強化されてなきゃ論外だし、全ての消耗アイテムも最大個数持ってなきゃ心配で夜しか眠れないし……だってラスダンだよ!? 入ったら最後、もう戻れないんだよ!? 私たちの最後の夏休みなんだよ!?」

「夏休み関係ある?」

「認識に温度差を感じるのです」

「けど、まーねー……愛央の言う通り、やり込める部分があるならやり込みたくなるって気持ちも、あたしはわかるけどさー……」

 

 愛央の完璧主義は日常生活においては鳴りを潜めているが、ココロトープの探索中には暴走を始める。

 まずココロトープの隅から隅まで探索する。拾えそうな物は全て拾い集め、倒せそうな敵は全て倒す。

 刈れそうな草を全て刈り取り、開けられる蓋は全て開け、屋上のフェンスは全て引っこ抜かれて梯子にされる。

 通り過ぎた後には何も残らない。あまりにもねちっこい探索に、同行する少女たちは各ココロトープの地理を完全に覚えてしまうほどであった。

 

「もう島でだって何度も何度も影とか倒したじゃん……? そこで高性能なフラグメントも手に入れたしさぁ……さすがにもう手に入る物もないでしょー」

「特大パフェもたっくさん作ったもんね、愛央ちゃん」

「靭さんが溜まりかけてた在庫を一晩で食べ切ったの、忘れてないからね……」

「悔いはないのです」

「省みはして」

「確かに私達は鍛えるだけ鍛えたし、アイテムも集めるだけ集めたし、色々なフラグメントも揃えた……それでもまだ、多分まだ他にもあると思うんだよね……ラストエリキシル剤的なやつとか、色々と……」

 

 彼女たちのアイテム収集率は凄まじいものがある。既に作ったことのないアイテムはなく、あらゆる消耗品がカンストまで作り置きしてあるのだ。

 グランフラムの在庫たるや、その道の錬金術師が見ても「同業者かな?」となるほどである。尚、保管場所に火がつくと本格的に危険な火薬量だ。おそらくそれだけで雫世界が崩壊する程の破壊を齎すであろうかと思われる。

 今この瞬間にも人類の命運はどうでもいいことで危機に晒されているのだった。

 

「うーん……でも愛央ちゃん、私たちって既に結構強くなったと思うんだけどなぁ……島で手に入れたフラグメントも強力だし、インファイトで失敗することもなくなったし……ステルス中に巡回してるモンスターの後ろにぴったりつきながらカバーごっこもできるようになったし……」

「なにしてるの靭さん」

「いや、私はまだやれることがあると思うんだよ……現時点で最強になっておかないと、不安で不安でしょうがないんだ……」

「愛央はそう言うけどさー、やれることって他に何がある?」

「うーん……やっぱりフラグメント集めかな」

「それはもう終わったでしょ。ココロトープは隅々まで探したもの」

「いや……まだできそうな気がするんだよね……あっ、そうか!」

 

 愛央が弾かれたように頭を上げた。これは大体において、不吉な予兆である。

 

「私たちで作れば良いんだよ! 最強のフラグメントをさ!」

「はぁ?」

「作るぅ……?」

「のです?」

 

 ここに、雫世界最後のイベントが始まった。

 

 

 

 フラグメントとは、一言で言い表すには非常に難しいものである。人によっては解釈が異なり、扱いも変わる。

 それは人の想いの欠片であり、記憶の断片であり……愛央にとっては同時に、重要な装備品であった。

 

「と、いうわけで……最終決戦に備え、最強のフラグメントを作っていこうと思います!」

「いえーい、どんどんぱふぱふ」

「え? え? なになに、どういうこと? 愛央ちゃん何を作るって? 私わかんない! きららちゃんはわかるの?」

「いや、きららも全然わからない。ノってみただけ」

「あ、なぁんだ。良かったー」

 

 教室に集まり、作戦会議の始まりである。

 雫世界のメンバーが全員集まって行われるそれはこれまでにも何度かあったが、それまでに扱われてきた議題がシリアスなものばかりだっただけに、今回ほど馬鹿そうな議題は初めてであった。

 

「……ねえ愛央。フラグメントって作れるの?」

「日菜子さんの純粋な質問、進行がスムーズで助かるよ……! 答えはYES! フラグメントは想いの欠片! そして思い出は作れる! つまり、フラグメントは作れるのです! 多分!」

「いや、そうだね。うん……間違ってはいない、よ……確かに合ってるとは思う……」

「日菜子がすごい複雑そうな顔をしてる……」

 

 詩帆は全員分のコーヒーを配膳しながら、また始まった愛央の謎企画に苦笑いしている。

 日菜子はカップを手に、考え込むように唸った。

 

「うーん……けどもう私たち、既に充分なフラグメントを持ってるよね? 装備できるフラグメントの数も増えていったけど、最終的にみんなが持ちきれない分も出てきたし……」

「ヒナちゃんはアタッカーとして完成されてきたよね」

「うんうん! 今のヒナちゃん、全盛期を思い出すよ!」

 

 かつてAASAに所属していたリフレクターであっても、雫世界にやってきた当初は全力を出しきれずにいた。記憶と共に戦闘勘が失われて、フラグメントも無かったのだから当然ではある。

 しかし今の日菜子は原種と戦っていた頃の自分に並ぶほどの力を取り戻している。

 

「私も今が一番調子良いなー。お姉ちゃんもリフレクターに変身できてたら、一緒に頑張れたのにね」

「ふふ、いいのよ。私は、裏方としてサポート役に徹するわ。それに、今の陽桜莉なら私がいなくても十二分な戦いができるでしょう」

「陽桜莉さんの攻撃、重みがあるものね」

「重いのです」

「えへへぇ?」

 

 陽桜莉もまた、二本の剣を用いての戦いに磨きが掛かっている。

 戦闘開始と同時に変身して敵を粉砕してゆく勇姿は、近くで眺める詩の背筋を冷たくさせるほどであった。かつて詩はルージュリフレクターとして陽桜莉とは敵対関係にあったが、今の陽桜莉とは絶対に戦いたくないと思ってしまう。痛みを感じる前に殺されそうだからだ。

 

「詩帆も殴りヒーラーとして完成されてるな。きららから見て、りすくつ(りすのくつやさん)時代より戦えてる気がするのだが」

「はい。わたしも回復能力そのものが上がったおかげで、戦闘に参加しやすくなりましたから。今では支援回復だけじゃなく、火力要員としても活躍できますよ!」

「おかげさまで道具を使っての回復がほとんど必要なくなっちゃいましたね。裏で道具を揃える私たちとしては、やや手持ち無沙汰な感じです」

「ううん、そんなことない! お姉ちゃんやきららちゃんや、詩ちゃんたちのおかげで私たちすっごい助かってるもん! それに、コーヒーとかは今でもよく使うし!」

「だがそのコーヒーを作ってるのは主に詩帆という罠」

「あっ。あははー、そうだった……」

「あはは……とにかく、そうですね。わたしの自己評価でも、既に課題らしい課題は残ってないかなと思うのですが……」

 

 強くなったのは、日菜子や陽桜莉だけではない。こころや伶那、詩帆もまたそれぞれの強みを伸ばし、成長している。特に詩帆の回復能力の伸びは大きく、戦闘メンバー最高の回復役として活躍していた。

 パーティーとして見た場合、誰が前線に出ても不足なく戦うことができる状態だ。誰も足を引っ張っていないし、苦戦する相手もほぼいない。

 

「星崎さんは、それでもまだ伸ばし足りないと……?」

「足りない!」

「なんでこの流れで断言できるのかな……はぁ、全く。フラグメントだって、今あるやつで既に強いじゃないの」

「だってなんか……前に日菜子さんやきららに聞いた話だと、今の私たちが持ってるやつよりずっと強いフラグメントがあったっていうじゃん!? だったら私達もそれを手に入れるべきだと思うんだよ!」

「強いフラグメント? なにそれ、私知らないんだけど」

「あー……確かに愛央から、前にしつこく聞かれてたっけ……」

「そんな話もした気がするな……」

「強いフラグメントかぁ。日菜子ちゃん、きららちゃん、それって本当なのかな?」

 

 こころが訊ねると、日菜子ときららは即答を避けたものの、悩むような素振りでゆっくりと頷いていた。詩帆もまた思い出したのか、“あー”と声を出している。

 

「リフレクター経験者のみんなから聞きましたよ私は……! この雫世界には無いような、めちゃつよぶっ壊れフラグメントの力を……!」

「あたし詳しくないけどフラグメントって壊れちゃ駄目なやつじゃない?」

「どんなフラグメントだったの? 白井さん」

「あー……なんかエーテルが普通にチャージするよりも何倍も早くなるやつとか……」

「え、なにそれは……」

「そういえばあったね。ユズが使ってたかな」

「ヒナちゃんの本気ミゼリコキャプコの印象が強すぎて忘れてたよー。確かに、今ならエーテルタイド撃ち放題って感じになりそうだよねぇ」

「あれっ? 思ったより話のレベルが高いわね……」

 

 あるいは原種との戦いはそこまでしなくてはならないのだろうか。伶那は戦慄した。

 

「……ええと、久野さん。わたしたちが使ってたフラグメントで強いというと、やっぱりあれでしょうか……」

「あれしかあるまい。味方全員を完全復活させた上に反射バリアを付与する最強フラグメントがあったな。何回でも使えるラストエリクサーに反射が付くと考えると確かに愛央が好きそう」

「欲しすぎるッ!」

「……最終決戦で私、春日さんたちを相手に戦ったんですけど……あの無限に復活しながら攻撃を撃ち返してきたのってそういうことなんです? あれ正直トラウマなんですけど」

 

 灰に覆われた世界の最終決戦で、詩帆たちはヤケクソ性能の最強フラグメントを携えてラストダンジョンを攻略した。

 パーティーが半壊してもすぐさま復帰した上にカウンター状態を付与して殴りかかってくるのだ。最悪のゾンビである。彼女らに単騎で立ち向かった詩はある意味で勇者かもしれない。

 

「わかる? みんな……確かに私たちは成長したよ……けどね、日菜子さんや詩帆さんが戦っていた頃と比べたら、そうでもないんだよ。私たちにも必要なんだよ! 最強のフラグメントが!」

「うーん、愛央ちゃんがそう言うと必要かもって気持ちになってくるね……強いフラグメント」

「蘇生しながらカウンター張りつつ双剣で殴りかかってくる陽桜莉もかわいいわ」

「……美弦さんはあえてスルーしておくとして……星崎さん、でもフラグメントは思い出から作られるものでしょ? 今から思い出を作るのは、さすがに時間的にも厳しいんじゃない?」

「雫世界の天蓋のヒビ割れが空気を読んで止まってくれてる気がするのです」

「あのヒビ割れも頑張ってるけど、なんかそろそろブチ切れそうな雰囲気出してるよね」

「そこは任せて! フラグメントの作り方は既に見当がついてるから……よいしょ、よいしょ……じゃじゃーん! 錬金釜!」

「あったわねそんなのも」

 

 そう言って愛央が教室の隅から引きずってきたのは、巨大な釜であった。

 ライザのココロトープで集めた材料から作ったものであり、魔法アイテムの錬金に必要な施設である。

 

「あれ? 星崎さん、その錬金釜って外に置いてありませんでしたっけ?」

「これは最初に作った時なぜか余分にもう一個できたやつだよ」

「出た、ダブり施設」

「なんか張り切って作ると施設増えるよね」

「完全にホラーなのです」

 

 作成個数+1によって完全に持て余された余剰錬金釜であるが、愛央はこのダブついた道具に使い道を見出したようである。

 

「この錬金釜に使わないフラグメントをいくつか入れて、中和剤と余りまくった砂粒を一緒にグツグツ煮込めば新しいフラグメントが出来る気がするんだよね!」

「嘘でしょ星崎さん」

「フラグメントってそんな雑な使い方していいんですか!?」

「極めてなにか人の想いに対する侮辱を感じるのです」

「リフレクターとしてどうなのかしら、それは」

「なんかユズとライムが今までに見たことないような渋い顔してるんだけど……」

「バグみたいな超高性能フラグメントコンボとかラスダン前ヤケクソ性能フラグメントとかあるんだったら、フラグメントの合成くらい許されていいでしょ! ライザさんならそう言うよ!」

「まぁ言うか言わないかでいったら言いそうではある」

 

 ライザのココロトープで遭遇した幻影を思い出しながら、きららは頷いた。

 とはいえ、彼女自身もちょっと合成が気になっているタイプだった。

 

「……まぁ愛央の手に入れたフラグメントだし、良いんじゃないかな。私はコモンの世界でフラグメントの強化もしたことがあるから、そういう作り方が出来るとしても不思議ではないと思ってるけど」

「ヒナちゃんがそこまで言うなら任せるよ……」

「世界を守るためだしね……」

「ユズとライムの渋々感がすごいわね……愛央、あまり粗雑に扱ってはダメよ?」

「けどお姉ちゃんも仕方ないとはいえ自分のフラグメントを自爆技に使ってたよね」

「私を見ないで……」

「みんなの同意も得られたとこで、そいじゃやってきまーす」

 

 そうこうしている間に、愛央は何故かライザのコスチュームに着替えていた。控えめに言っても普通からは程遠い、かなり女性的な体型をしている愛央だが、この衣装を着ている時は地味な体型に見えてくるのだから不思議である。しかし自称普通の女の子が自称普通の女の子のコスプレをしているだけなので、実質普通の格好なのかもしれない。

 

「星崎さん、それ着る必要あった?」

「あります! んで、ここに中和剤と素材と必要ないフラグメントをぶちこんでいくわけなんだけど……元々フラグメントって穴の空いたルービックキューブみたいな形してるし、装備時に結構嵩張るタイプのやつもあるから……完成系から逆算して多分二、三個くらい入れればちょうど一個できそうな感じがするよね」

「そんな雑に合成されるのかしら……」

「思い出が合体しちゃうのかな? それって大丈夫なの?」

「んっふっふ……存在しない記憶とか出来上がっちゃったりして! あたしがナイスバデーになって変身して戦ったりとか!?」

「……今やってる無茶苦茶な合成からして、あながち否定しきれないのが怖いわね……」

「んじゃもう二度と使わなさそうな完全下位互換産廃フラグメントをぽいぽいーっと」

「この子今思い出のことを産廃とか言わなかった?」

「きららたちのリーダーの姿か……? これが……」

「リフレクターの面汚しなのです」

 

 仲間から罵詈雑言を投げかけられながらも、愛央はフラグメントの入った錬金釜をかき混ぜてゆく。釜の中は虹色に輝き、少なくとも何かしらの反応が起きているのは確実であった。

 

「何かできそうな反応を示しているみたいですね。以前錬金釜でクラフトした時と似たような発光が見られます」

「仕上げに……腕をぐるぐるさせて踊ります! ジャカジャカジャン! ジャカジャカジャン! ジャカジャカジャカジャカジャン! ヘイッ!」

「それいる?」

「絶対いらないでしょそのダンス」

「あっ! 釜からなんかフラグメントが浮き上がってきた!」

「嘘でしょ……」

「ものすごい輝いてるのです!」

「こんな雑な作り方で本当にできるとはきららの目を持ってしても……うおっ、まぶしっ」

 

 辺りが閃光に包まれ……そして、全員の脳裏に“存在しない記憶”が映し出された。

 

 

 

『ほら勇希、一緒に手を繋ご? いつもみたいにさ!』

『う、うん……良いけど、愛央……でも今はそこで、伶那が見てるから……駄目だよ……』

夕陽に照らされた学校の廊下で、愛央と勇希が手を繋いでいた。愛央はいつもの笑顔で、勇気はいつもより後ろめたいような顔で。それもそのはずである。彼女たちのすぐ近くには、伶那がいるのだから。

『なんで? 良いじゃん! 今は私と勇希がデートしてるんだし! それに手を繋ぐことくらいいつものことでしょ? ねっ?』

『まぁ……そうだけど……』

『ゆ、勇希……どうして……愛央と一緒に……』

 

 狼狽える伶那の姿を横目に見て、愛央は笑みを深めた。

 

『この自販機の前って広くて良いスペースだよねー。こうして歩いて回ってるだけでも楽しいし』

『……愛央? な、なんでさっきから伶那の近くをずっとぐるぐる歩いてるわけ……?』

『えー? だってさぁ……その方が楽しいでしょ?』

『……! う、いや……うん。愛央と一緒だと、まぁ……なんでも楽しくなるよ……?』

 

 勇希の言葉にニヤリと邪悪に笑う愛央を見て、伶那がその場に崩れ落ちた。

 

『ふふふ……じゃあ勇希、保健室で休憩していこっか……』

『う、うん……良いよ。恥ずかしいけど、愛央と一緒なら……』

『あっ、あああ……!!』

 

 へたり込む伶那を残し、二人は人気のない保健室へと消えてゆくのであった……。

 

 

 

「なんじゃこりゃぁあああああああ!」

「うわっ!? 伶那さんキレた!」

「れ、伶那違うよ! あたしこんなことしてないから!? いや、愛央と手を繋いだりはしたことあるけど……! その、あれ! 伶那とは本気だから!」

「ぁあああああああ! 脳が壊れる!!」

「なんか勇希ちゃんがチャラくなったみたいでウケるのです」

 

 出来上がったフラグメントの回想は、あったようななかったような出来事であった。

 実際のところ、なかったことなのだろう。しかし映し出された光景があまりにもリアルだったせいか、伶那の心に大きなダメージが与えられたらしい。

 

「はい勇希、私と握手」

「え? うん」

「ぁあああああああ!!」

「こらっ、星崎さん! 宮内さんで遊んじゃダメですよ!」

「悪女ってやつね……」

「というか、すごいね。作り方はすごい雑だったのに、ちゃんとフラグメントらしくなってるし。肝心の装備効果は……装備してると頭痛になるみたい。なにこの効果……」

「デメリットだけになってますね」

 

 そしてフラグメントの能力はデメリットのみという、完全な失敗作であった。どうやら作成が上手くいくばかりではないらしい。

 

「けど逆に言えばピーキーな性能のフラグメントができるかもしれないってこと! 次のフラグメントも作っちゃうよー! ほいっと!」

「あっ、また雑にフラグメント投げ込んでる!」

「なんだか無性にお姉ちゃんを思い出すなぁ」

「私のせいだわ……」

「また平原家が発作を起こしてるのです」

「煮込んで煮込んでー……もうちょい砂粒入れてー……」

「昔砂粒不足で飢えてた反動で雑に使うようになったよね、愛央」

 

 再び釜の中が虹色に輝き、ひとつのフラグメントが浮かび上がってくる。

 

「出た! この色絶対UR確定でしょ!」

「さっきも同じ色だったのです」

 

 フラグメントが光を放ち、辺りは光に包まれた。

 

 

 

『あぁーん♡ 美弦お姉様と一緒のベッド、さいっこうに癒されますぅ♡』

『そうね、詩……けれどこちらに伸びた脚は何かしら? 許可なく私に触れ合おうだなんて……調子に乗りすぎよ』

『あん♡ 強引……♡』

 

 鮮やかな花弁が散りばめられたベッドの上で、何故か詩と美弦が同衾していた。

 しかも詩は記憶を失う前のハジけていた頃の詩で、美弦の方もどこか様子がおかしい。

 

『悪い子ね詩……悪戯をする子にはお仕置きが必要かしら』

『お姉様……♡』

 

 蔑んだような目で見下ろす美弦に、詩は期待するような眼差しを向ける。

 やがて二人の影が一つに重なり……。

 

 

 

「破ァ!」

「うわぁ!? 美弦さんがフラグメントを殴った!?」

「はぁ、はぁ……とんでもない記憶が再生されるところだったわ……」

 

 回想は美弦の手によって強引に中断された。

 

「そんな、お姉ちゃん……詩ちゃんと寝たんだ……」

「ち、違うのよ陽桜莉、これは捏造で……! ていうか寝たって言い方やめなさい! 陽桜莉からそんな単語聞きたくない!」

「なんだか詩さん全然印象違うねこれ」

「きららから見ると……さっきの詩の方がいつものという感じではあるな……」

「へー……詩さんって本当にああいうキャラだったんだ」

「その通りなのに星崎さんに言われるとものすごく死にたくなってきますねこれ」

 

 自分の黒歴史を愛央にだけは見られたくない詩であった。いや、そもそも存在しない歴史ではあるのだが。

 

「……ねえライム、もしかしてこの合成って危険?」

「もしかしても何も、最初から危険だよ……ユズ……」

「あ、フラグメントの効果はエーテル回復速度マイナスだって。これも実用性はなさそうかなぁ」

「日菜子、なんだかんだでフラグメント作るの乗り気だね……」

「私も昔はこういうの集めてたからね……」

「また産廃フラグメントできちゃったかー……よおし、またもう一個作るぞー!」

「その産廃って言い方やめなさいよ星崎さん」

 

 再び錬金釜にフラグメントを放り込み、ぐつぐつと煮込み始める愛央。

 どうやら強力なフラグメントが出来上がるまでは続けるようだ。

 

 

 

『リーダーさん……夢の中だったらお酒飲んでも大丈夫ですよね?』

 

 詩帆が誰かに向かって声をかけている。

 あられもない格好で、盃に入った清酒を勧めているようだ。

 

『リーダーさん、見てください! お尻ぺんぺんですよ!』

 

 階段上の詩帆がお尻を突き出し、悪戯っぽく短い丈のスカートを揺らしていたり。

 

『リーダーさんは顔を踏まれてるのに抵抗しないんですね……ふふふ……』

 

 時に誰かの顔を素足で踏みつけニヤニヤと笑い。

 

『リーダーさん……一緒にお風呂、』

 

 

 

「だしゃあ!!」

「うわぁ!? 詩帆さんがフラグメントをぶん殴った!?」

「詩帆ちゃん得意の右ビンタなのです」

 

 回想はまたしても中断された。今度は顔を真っ赤にした詩帆による強制介入である。

 

「ななな、なんですかなんなんですかこれは! 支離滅裂な記憶は! こんなのはわたしの記憶にはありませんよ!」

「う、うむ。きららも同意見。これは完全なでっち上げによる悪質な記憶の改竄」

「ええー……? そうかなぁ……でもなんか記憶の詩帆さん、みんなリーダーさんがなんとかって……リーダーさんって誰?」

「ああ、星崎さんそれはですね」

「わーわー! なんでもないです! なんでもありませんから!」

「そ、そうだぞ。それよりもフラグメントの性能を確認することの方が急務なのでは……」

 

 詩帆もきららも必死である。きららにとってはなんとなく覚えのあるエピソードがあったし、詩帆の方も捏造とは言いつつ完全に自分のそのままっぽい回想があったからだ。人に見られたいものではなかった。

 

「まぁ確かにフラグメントの性能の方が重要か……えーっと、防御+1! うーん……ショボい!」

「な、なんか私が出てくるフラグメントがショボいって言われてるみたいで複雑なんですけど……!」

「けどはじめてプラス補正が出たってことは希望があるよ。マイナスだけじゃないってことなんだから」

「まぁ確かに日菜子さんの言う通りかぁ……とりあえずプラス補正だからキープしといて、もういっちょ!」

「えへへぇ、次にどんなのが出てくるのがワクワクしてくるね!」

「この流れでワクワクできる陽桜莉は素直にすごいわね」

 

 さらに錬金釜にフラグメントが投じられ、光が放たれる。

 

 

 

『日菜子ちゃん、パンツ交換しよ?』

『えっ、ええ!?』

 

 学校の更衣室にて、着替え中の陽桜莉と日菜子がそのようなやりとりをしていた。

 

『どんなパンツ履いてるのか見せて!』

『ちょ、ちょっと陽桜莉!? どういう……!』

『ていうかパンツ交換しようよ!』

『なんで!?』

 

 何故かは完全に不明だが、どうやら陽桜莉は日菜子の下着を求めているらしい。見せるだけなのが交換するになったりと、最初から支離滅裂さが全開であった。

 

『ほら脱いで脱いで! はぁ、はぁ……日菜子ちゃん! 日菜子ちゃん!』

『うわぁあ!』

 

 それどころか後ろから日菜子に襲いかかり、抱きついている。

 仮にここが女子校であったとしても完全な事案であった。

 やがて体力お化けの陽桜莉に屈し、日菜子は床に押し倒された。

 

『日菜子ちゃん……犬派になろ……?』

『あっ……陽桜莉……』

 

 

 

「見ないでェッ!!」

「うわぁああ!? 美弦さんがまたフラグメントをぶん殴った!?」

 

 記憶の再生はまたしても美弦の手によって中断された。

 

「はぁ! はぁ……! するわけないでしょう! 私の陽桜莉が! あのようなことを!」

「お姉ちゃん右手になんか鎖巻き付いてるよ!? それなんかちょっとリフレクターに変身できてない!?」

「限界を超えた怒りが私に一時的なリフレクター化を齎したみたいね……」

「何それ怖いのです」

「……今度は私と陽桜莉の記憶かぁ……」

「……え? あの、二人ってそういう……?」

「日菜子と陽桜莉があんなことを……へ、へー……意外な組み合わせっていうか……え、ちなみにどういう馴れ初めで……?」

「や、やってないよ!? なんで伶那ちゃんそんなに興味あるの!? 私たち全然そんなことしてないよね!? ね!?」

「陽桜莉、その慌てっぷりが逆にそれっぽく見えるからやめた方がいいよ……いや、実際全然やってないけどね」

 

 しかし日菜子はあえて言わなかった。過去に自分の経験として、友達に似たような行為をされたことを……。

 ユズとライムも顔を見合わせ、頷いていた。忘れた方がいい記憶もあるのだ。

 

「フラグメントの効果は体力増加みたいですね。伸び幅はそれなりにあるみたいですが……今の私たちにとっては、体力はそこまで重要ではなさそうです」

「またハズレか〜」

「ハズレ言うな」

「効果はともかくさぁ、なんか愛央の作るフラグメントっていちいちこう、やらしい感じしない?」

「星崎さんがいつも変態なこと考えてるからでしょ」

「はい勇希、私と握手」

「え? うん」

「ぁあああああああ!!」

「反射的に握り返すゆうきちも大概だよねこれ」

 

 様々なフラグメントが自作され、机の上も賑やかになってきた。

 しかし未だにこれといって実用的なフラグメントは仕上がっていない。

 

「材料にするフラグメントも残り少なくなってきたよね。そろそろ終わりじゃない?」

「ヒナちゃんの言う通りだね。そろそろやめようよ」

「うんうん! いい加減最後の戦いに挑まないとね!」

「きららもそう思う。さっさと世界救おう世界」

 

 ライムとユズ、そしてきららは合成中断に乗り気であった。

 

「なんかこの三人、まだ記憶が捏造されてないからってさっさと切り上げようとしてない?」

「私もまだフラグメントに出てきてないから、そろそろ見たいなぁ……」

「こころは今までの見ても出たいと思えるのね……」

「よーし……じゃあ皆さんの声援にお応えして、全員登場させるまでやったりますか! ほいっ、フラグメント追加! 砂粒追加! あと製作個数+1でダブったオリジンゲートも追加!」

「とんでもない物がダブっちゃったよねこれ」

「一応作るの苦労したのにね」

「そんなもの入れて平気なのかしら」

 

 次々に放り込まれる錬金釜だが、材料の全ては難なく溶かされ、輝きが増してゆく。

 やがて強い輝きが教室を満たし、異なる景色を映し出した。

 

 

 

『私はユウ……この雫世界を守る者』

 

 校舎の屋上に、ユズがいた。普段の底抜けに明るい様子はなく、かつて記憶を失っていた頃の澄ました表情であった。

 

『貴女達はこの世界に喚ばれた、選ばれしリフレクターたち……さあ、名前を教えてもらえるかしら』

 

 屋上には他にも人影があった。

 その中の一人が、躊躇うことなく前に出る。

 

『私はライムだよ☆ よろしくね☆』

 

 ライムであった。しかしどこかぶりっこじみたポーズでウインクまで決める姿は、未だかつて誰も見たことがない彼女の一面である。

 フリフリと腰を振りながらニチアサの魔法少女じみたダンスを踊るライムの横に、もう一人の少女が歩み出た。

 

『はーい! 私、久野きららっていいます! みんなもリフレクターなんだ? これからよろしくね?』

 

 きららであった。だがその声色や喋り方が明らかに彼女のものでなく、普通の少女であるかのような振る舞いを見せている。これもまた、誰も知らないきららの姿であった。

 

『そう……ライム、きらら。この二人から私たちの戦いは始まるのね……』

『敵はくまさんの物理でぶん殴るよ☆ よろしくね☆』

『私、支援攻撃が得意なの。二人とも、頑張ろ!』

 

 姿形はそっくりだが、どちらもまるでキャラが違う。

 だがそんな二人を見つめるユズは、どこか満足そうに頷いていた。

 

『……でも、私の目は誤魔化せない。この雫世界には……私たちの知らないイレギュラーが存在する』

 

 話の流れ的に、目の前の二人や自分はそうではないらしい。

 

『そこにいるんでしょう? イレギュラー。……隠れてないで、姿を現したらどうなのかしら』

 

 ユズは屋上の入り口を指し示した。

 言い当てられたからであろうか、入り口はゆっくりと開き、その向こうに潜んでいた姿が正体を見せる。

 

『メシを食うでごわすのです!!!』

 

 それは、お櫃としゃもじを抱えた、筋骨隆々の男らしき姿のこころであった。

 巨体がドシドシと音を立てて屋上を歩き……。

 

 

 

「みょぉんッッ!!」

「うわぁ!? え!? なんできららがフラグメントを殴るの!?」

「はぁ、はぁ……! と、とんでもない記憶が捏造されてしまった……!」

「一瞬きららちゃんの手から龍っぽいのが見えたのです」

「久野さん、今ちょっとだけアナザースピリット使ってませんでした?」

「なんか皆さんフラグメントと一切関係ないところで力を取り戻してません?」

 

 記憶の再生を中断したのはきららであった。

 普段は何を考えているのかわからない不思議系の彼女にしては、かなり必死なインターセプトである。

 

「い、いやぁ……なんだか、圧の強い顔をしたこころを見て、つい手が出てしまった……きららが手を出したのは、そのせいだから……うん……」

「いやまぁ確かに靭さんの姿はなんか前代未聞な感じではあったけど……」

「いやぁ、キャラ変面白いなぁ。ユズの記憶が戻ってなかった頃、なんかもう懐かしいね! ライムもリフナビっぽかったし!」

「うう……あおちん忘れてよー……」

「……え!? リフナビ!? あれがリフナビなの!? う、嘘だよねヒナちゃん。私あんな感じじゃないよね……」

「……」

「黙らないで!? 違うよ!? ライム、ああいうのじゃないからね!?」

「必死すぎて草生えるのです」

「逆にどうしてこころはそんなに落ち着いていられるのかしら」

「こころちゃん強そうだったなぁー……」

「強いとかそういう問題? あのビジュアル」

「それにしてもきららの雰囲気もあれだね! なんか気さくな感じで、あれはあれでかわいいね!」

「あばばばば……」

「きららちゃん壊れちゃった」

 

 実のところきららのキャラは本人にも覚えがあったのだが、それは努めて黙殺することにした。誰にも消し去りたい過去はあるのだ。

 

 

 

 さて、色々なフラグメントを生み出した今回のイベントであったが、結果として目的の“強いフラグメント”はできなかった。

 奇妙なフラグメントはいくらでも量産できたが、最後に作ったものも結局基礎ステータスを微量底上げする程度の効果で、複数のフラグメントを使ったにしてはいまいちな成果であったと言わざるを得ない。

 

「あーあ、駄目だったかぁー……作れはしたから、何かしら成功すると思ったんだけどなー……」

「そうだね、愛央。私も途中までは上手くいきそうかもって思ったけど……けどやっぱり、思い出は自分で一つずつ手に入れていくものなんじゃないかな。何かを使って生み出そうなんて、そんな考えが最初から間違ってたんだよ」

「うう、日菜子さんに主人公みたいなこと言われちゃった……」

「ふふっ……。ねえ、星崎さん。確かにわたしたちは世界を救うために強くなるべきだとは思いますけど……大変な時や辛い時にわたしたちを支えてくれるのって、きっと急拵えの作り物の思い出とかではなく、自分たちで噛み締めた本物の思い出なんじゃないでしょうか。だから、わたしたちが最後の戦いに持っていくのは、自然と手に入ったものだけで良いと思うんですよ」

「うッ、詩帆さんに言われるのも耳が痛いなぁ……」

「けど、私は面白かったよ! 愛央ちゃん!」

「陽桜莉さんはいつでも優しいなぁ……好き……」

「また告白してるのです」

「横着は駄目ってことよ、星崎さん」

「最後の最後でまたイベントができて、あたしは結構楽しかったけどね!」

 

 強いフラグメントは作れなかった。

 しかしそれだけ、今まで自分たちが積み上げてきた思い出や絆が強固なものであることを確認することができた。

 きっとそれだけでも、彼女たちの成長にはなったのだろう。

 

「いやー、だがしかし。フラグメントは相変わらず不思議なものだな。きららからしても未だ謎が多い」

「本当にねぇ。私も雫世界に来てから初めてリフレクターになったから、フラグメントに関してはもう、知らないことだらけでいつもびっくりだよ」

「愛央ちゃんはこの世界で初めて戦うようになったんだもんね。わからないことだらけだと、大変だよね」

「現実世界にいた頃は、コモンやらリープレンジやら色々あって、それはそれで大変だったと思いますよ、星崎さん」

「あー、そういえば詩さんも言ってたねぇ、昔はリフレクター同士で色々と争ってたって……あ、そういえば詩さんの言う“お花ちゃん”とかってどういうことなの?」

「それはもちろん、フラグメントのことですけど……」

「え? でも私たちの世界のフラグメント、別に花要素なくない?」

「そ、それは……」

「どっちかというとルービックキューブとかカド消しみたいな……」

 

 愛央がそう言った直後、校舎の真上から大きな破砕音が聞こえてきた。

 雫世界の天蓋にヒビが入る、世界崩壊の音である。それとほぼ同時に、そこから雫世界へと侵入してくるモンスターの咆哮が響き渡る。

 

 外の世界からモンスターが攻めてきたのだ。

 

「ま……まずいのです! 愛央ちゃんがフラグメントの触れてはいけない部分に触れたせいで、世界システムが雫世界を抹消しに来たのです!」

「えええええ!? これ私のせい!? 私のせいなのこれ!?」

「愛央ちゃん……さすがの私でも今のはよくないと思うよ……!」

「陽桜莉さんがそう言うレベルなの!?」

「え、でもあたしもフラグメントと花って結びつかないんだけど……伶那はわかる?」

「ごめん、私もピンとこない……」

「あーっ! 帝初期組が言ったせいでまた空がメキメキいってる!」

「勇希も伶那もそれ以上言っては駄目よ! 禁句だわ!」

「そこまで!?」

「と、とにかくみんな! 屋上に出てオリジンに向かおう! 一刻も早く敵を倒して、世界を救わないと!」

「ひーん! もう自作フラグメントは懲り懲りだよ〜!」

「今陽桜莉のこと火力ゴリラって言った?」

「お姉ちゃん! 早く行こう!」

 

 そうして少女たちは余韻もなく慌ただしい最終決戦に向け、駆け出してゆくのであった。

 

 しかしステータスも装備もアイテムも潤沢だった上、何故かちょっぴり力を取り戻したメンバーの加勢もあり、肩透かしなほど順調にラスダンを攻略してゆく。

 ラスボスすら比較的楽に倒せてしまった辺りで、全員が思った。

 

 “ああ、やっぱりここまでする必要はなかったよなぁ”……と。

 

 

 

 そしてオリジンの最深部にて。

 

 愛央は、自分の分身たちと向き合い、言葉を交わしている。

 

「周回すると別の種類のフラグメントもコンプリートできるよ」

「え!? じゃあもっかい世界救ってくる!」

「私ならそう言うと思ってたよ」

「うおおおお! 生まれ変われ! 生まれ変われ!」

 

 まだ世界に周回コンプ要素があると知り、愛央は喜んで次のループへと飛び込んでいく。

 

 愛央のフラグメント集めは、まだまだ終わらないのだった。

 


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