焦燥をなくす旅 ― 廻る世界の中で ―   作:Virus Miss

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第1話:旅立ち

王国の辺境にある小さな村。窓から差し込む陽の光が、新しい朝を告げていた。

 

まだ眠っていたいが、今日は特別な日だ。僕は仕方なく瞼を擦りながら身を起こした。

寝室を出ると、香ばしい朝食の匂いが漂ってくる。食卓には、いつものように陽気な母と、無口ながら優しい父の姿があった。

 

「あら、おはようレオン! 早く食べちゃいなさい。今日は学院に行く日なんだから!」

 

そう、僕は今日から王都にある王立学院に通うのだ。

出発の時間までには余裕を持って準備を済ませたい。

できれば、あの騒がしい幼馴染が来る前に……。

 

「レオンおはよう! 準備できた?」

 

思考を遮るように、勝手に家に上がり込んで元気に挨拶してきたのはエリシアだ。

彼女も一緒に学院に通うのだが、それにしても迎えに来るのが早すぎる。

時計を見れば、まだ待ち合わせの二時間前だ。この時間に来るのは逆に非常識だろう。

 

「まだ朝食を食べる時間帯だろ? いくらなんでも早すぎだ。自分の家の朝食はどうしたんだ?」

 

「ここで食べるの! ほら、持ってきた!」

 

「親と食べればいいだろう? しばらく会えなくなるんだから」

 

「あっちでも食べたよ? ここでも食べるの!」

 

なんてことだ。

学院に入寮すれば最低でも三年間は親に会えないというのに、彼女はここで二度目の朝食を取る気らしい。

 

「……わかった。これを食べ終わったら準備するから待っててくれ」

 

「ふぁかった!」

 

「食べながら喋るな」

 

呆れつつも食事を終え、僕は自室に戻って準備を始めた。

真新しい制服に袖を通し、持ち物をチェックする。推薦書、鞄、そして最低限の荷物。

ベッドに腰を下ろすと、ふと胸の奥にある感覚を思い出した。

 

生まれた頃から消えない、正体不明の焦燥感。

ずっと何かを守り、救わなければいけない気がしていた。

だからこそ、僕は困っている人の手伝いは必ずやってきた。荷物運びや、転んだ子供の介抱。

一番大変だったのは馬の世話だろうか。不意に飛んでくる後ろ足の蹴り、あれは下手したら死んでいた。不思議なことに、エリシアは絶対に蹴られないのに、僕だけ執拗に狙われていた気がする。

必死に蹄を避けている時、ふと見たエリシアのドヤ顔は一生忘れないだろう。

 

この村にはたくさんの思い出がある。

けれど、この焦燥感の正体も、学院に行けばわかる気がするのだ。

気づけばもう出発の時間だ。

 

「母さん、父さん。行ってきます」

 

「楽しんでくるのよ」

 

「……あぁ」

 

父さんは短く答えただけだったが、その雰囲気が寂しがっていることは痛いほどわかった。無口な父の愛情表現だ。玄関を出て、村の入り口に向かう。そこにはもう、二度目の朝食を終えた幼馴染が待っていた。

 

「レオン、忘れ物はない?」

 

「ああ。行こう、エリシア」

 

 故郷を背に、二人は王都を目指して歩き出しはじめた。

 

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