焦燥をなくす旅 ― 廻る世界の中で ― 作:Virus Miss
設定とか出したほうがいいのでしょうか?
王都へ向かう道中は、とても心地よいものだった。
やわらかな太陽の光が肌を温め、緩やかな風が頬を撫でていく。
遠くで鳥の声が響き、踏みしめる土の感触すら、初めて歩く道なのにどこか懐かしい。
人類は今、この大陸でただ一つの国――ルミナス王国に集って生きている。
かつてこの国は、ただの「霊峰ノ國」と呼ばれていたらしい。
だが、ある時代を境に名は改められ、今の名になったのだという。
その理由を、俺はまだ知らない。
けれど、人類が一つにまとまり、勇者が現れて魔族との戦いが続くようになったのもちょうどその頃からだと聞いている。
だが、この世界に生きるのは人間だけではない。
エルフは深い森に、ドワーフは山脈の奥深くに、精霊は目に見えぬ場所に。
獣人や魚人もまた、それぞれの領域で暮らしている。彼らは人間と距離を置きながら静かに暮らしているのだろう。いつか彼らとも交流してみたいものだ。
そんなことを考えながら歩いていると、エリシアが振り返って満面の笑みで話しかけてきた。
「ほんっとうに楽しみだよね! 王都にはどんな美味しいお店があるのかな?」
スキップ気味に歩いていると思ったら、頭の中は食べ物のことだけか。
「僕は、学院にはどんな人がいるのかが楽しみだよ。色々なことを学んで、たくさんの経験をしたいんだ」
「じゃあ、一緒にやろう! レオンは私がいないと心配だからね!」
「確かに心配だな。特にお前が」
「ん? それはどういう意味カナ?」
しまった。エリシアの目が笑っていない。ここは誤魔化すのが吉だ。
「そ、そういえば、そろそろ祈りの時間だろ? 周りの警戒はしておくよ」
「……話を逸らしたね。まあいいわ、ありがとう」
そう言うと、彼女は街道から少し外れた木陰に行き、両手を結んで祈り始めた。
その瞬間、空気が変わる。
ざわめいていた風の音が遠のき、葉の揺れる音だけが柔らかく残るような静寂。
やがて、彼女の周囲にほんのわずかに光が集まり、すぐに雪のように溶けて消えた。
やはり、祈っている時の彼女だけは神聖だ。祈っている時だけは。
「待たせたね、行こう!」
「あぁ」
再び歩き始める。しばらく進むと、丘の向こうに巨大な外壁が見えてきた。
王都だ。賑やかな人々の活気ある声が、風に乗ってここまで聞こえてくる。
奥に見える壮麗な尖塔は王城だろうか。
「着いたぁ! あれが学院かな?」
「そのようだな。入学試験の受付をしないと……って、おい!」
目を離した一瞬の隙だった。
入り口付近の出店から漂う香ばしい匂いに釣られ、エリシアが猛ダッシュで駆け出していた。
「あっちに美味しそうな串焼きが!」
「まだ試験前だ! 行くぞ!」
僕は首根っこを掴んでエリシアを引きずりながら、王立学院の門へと向かった。