呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「はい注目ー。そこ、呪い合わない。先生の『美しすぎる過去』に嫉妬しない」
ガララ、と教室の扉が開く。
そこには、高専時代の制服をパツパツに着込んだ五条悟がいた。
白衣の下は案の定、何も着ていない。 そして彼の後ろには、三味線を持った夏油傑、なぜか「推し」と書かれたハッピを着た伏黒甚爾、そして「やってられん」と顔を伏せる家入硝子が並んでいた。
「……先生。まず、その『最強の同窓会』という名の、公式が最大級に荒れるキャスティングの落とし前、つけてもらえます?」
伏黒が、もはや自分の父親(の死体)がアイドル研修生みたいな顔をして立っている現実に、吐き気を催しながら教壇を指差した。
「恵、君は相変わらず『ファンサービス』が分かってないね。今日は特別講義。読者から『過去編の三人が尊すぎて、本編とのギャップで情緒が壊れました。責任取ってください』というハガキが山ほど来てるんだ。だから解決策は一つ。僕たちがアイドルとして再デビューして、失われた青春を無理やり取り戻す。……グループ名は『無下限☆パラダイス』。センターはもちろん僕」
「悟、私は非術師を淘汰する計画で忙しいんだ。……ところで、なぜ私の手元にファンサ用の『指差しして』といううちわがあるんだい?」
夏油が、額に青筋を立てながら黒い球体(呪霊)をこねくり回す。
「傑、固いこと言わないの。ほら、甚爾くんなんて、ギャラが『競艇の軍資金10年分』って言っただけで、もう全裸でバク転する準備してるよ」
「……金になるなら、俺は特級アイドルのペットにでもなってやるよ。……おい恵、あとでペンライトの振り方を教えろ」
甚爾の言葉に、伏黒は静かに窓から飛び降りようとした。
「いいかい、みんな! 過去編が尊いのは、僕たちが若かったからじゃない。僕たちが『最強』すぎて、何をやっても許されたからなんだ! はい、悠仁! 今すぐ宿儺に代わって、全裸でステージの照明係をやって! 伏魔御厨子の斬撃で、ミラーボールみたいにキラキラ反射させて!」
「おう! 任せろ先生! 俺、よく分かんねぇけど、みんなを笑顔にすればいいんだな!」
「行かせるかボケェッ!!」
釘崎のハリセンが、音速を超えて五条の「不可侵」、夏油の「呪霊」、そして甚爾の「肉体の剛性」をまとめて物理法則無視で貫通し、三人の脳天にクリティカルヒットした。
もはやこの教室において、ツッコミこそが唯一の「青春の終わり」である。
「痛ーい! 野薔薇ちゃん、レジェンドたちの再結成(物理)を邪魔するなんて……これが新規ファンによる厳しいコンプライアンス(暴力)の力か!」
教壇でのたうち回る、制服がはち切れそうな最強たち。
教室の掲示板には、当時の青い春の写真が飾られているが、この3年J組だけは、ライブを始める前に、集まったファンから「これじゃない」と暴動が起きそうな混沌に包まれていた。
「……ま、アイドルがダメなら、僕が『領域展開』で全人類を僕のファンクラブ会員に強制入会させてあげるからさ。タイトルは『五条悟、武道館を六眼で埋め尽くす!』。来週から全編これで行くよ」
「……そのまま解散ライブなしで引退してこい」
伏黒が、窓の外で勝手に物販の列に並ばされている伊地知さんを眺めながら、深くため息をついた。