呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「はい注目ー。そこ、呪い合わない。先生を『かつての親友』を見る目で見ない」
ガララ、と教室の扉が開くと同時に、五条悟が教壇に立つ。 今日の彼は、白衣の下に「最強」と書かれた法被(はっぴ)を羽織り、隣にはなぜか、お団子頭で袈裟(けさ)を着た、死んだはずの男――夏油傑が、死んだ魚のような目で立っていた。
「……先生。まず、その法的な死を無視して『かつての親友』を連行してきた落とし前、つけてもらえます?」
伏黒が、教科書で顔を覆いながら教壇を指差した。
「恵、君は相変わらず『エモさ』に疎いね。これは『不可侵のリバイバル』。本編が暗すぎるから、僕が勝手に過去編から傑を引っ張ってきたんだ。今の僕たちは、実質的に最強の二人と、同窓会の幹事を足して二で割った感じ。心に青い春を持っていれば、それは死体損壊ではないんだよ」
「警察以前に、仏様に謝れ。この人、存在が特級の墓荒らしです」
釘崎がスマホで「除霊」のページを開きながら構える。すると、横にいた夏油が重い口を開いた。
「……悟。私は猿(非術師)を淘汰するために来たのであって、君の学園コメディの助っ人に来たわけじゃないんだが。あと、なぜ私の背中に『教育実習生(闇)』というゼッケンが貼ってあるんだい?」
「傑、固いこと言わないの。ほら、読者からのハガキが来てるぞ。『五条先生。最近、先生の独り言が多すぎて寂しいです。話し相手を増やしてください』という、ペンネーム・高専OBさんからのお悩みだ」
「……アンタが寂しいだけだろ」
虎杖が呆れ顔で突っ込むが、五条はさらに夏油の肩を組んで加速する。
「いいかい、みんな! 傑が来たからには、授業の幅が広がるぞ。はい、悠仁、今すぐ傑の『呪霊操術』で出された特級呪霊に跨って、全裸で『僕たちは最強だ!』って叫びながら、近所の女子高までデリバリーされてきて!」
「おう! 任せろ先生! 傑さんの呪霊、乗り心地良さそうだな!」
「行かせるかボケェッ!!」
釘崎のハリセンが、音速を超えて五条と、ついでに夏油の「不可侵」もろとも物理法則無視で貫通し、二人の脳天にダブルでめり込んだ。
もはやこの教室において、ツッコミこそが唯一の「極ノ番」である。
「痛ーい! 野薔薇ちゃん、二人の絆(物理)を切り裂くなんて……これが現代の非情な格差(暴力)の力か!」
教壇でのたうち回る、白衣と袈裟の二人組。
教室の掲示板には、かつての高専時代の写真が飾られているが、この3年J組だけは、感動の再会を果たす前に、PTAと宗教団体から同時に訴えられそうな混沌に包まれていた。
「……ま、傑が帰るって言うなら、僕が『領域展開』で彼を永久にこの教室に閉じ込めてあげるからさ。タイトルは『五条と夏油の、終わらない夏休み!』。来週から全編これで行くよ」
「……そのまま二人で南の島まで消えていけ」
伏黒が、窓の外で勝手に「呪霊操術」で掃除を始めた夏油を眺めながら、深くため息をついた。