呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

25 / 95
聖地巡礼は、全裸で行うのがマナーじゃない

「はい注目ー。そこ、呪い合わない。先生を『工事が終わらない駅の迷路』みたいな目で見ない」

 

ガララ、と教室の扉が開く。

今日の五条悟は白衣の下に「SHIBUYA 109」と書かれた腹巻きを巻き、手には「ハチ公の首輪(スペア)」、頭には「地下鉄の路線図」を巻いている。そして教壇の横には、なぜか作業着姿でヘルメットを被り、誘導灯を振り回す冥冥が立っていた。

 

「……先生。まず、その『聖地巡礼』を通り越して、渋谷の街そのものと同化しようとしている、観光公害一歩手前の格好の落とし前、つけてもらえます?」

 

伏黒が、もはや「副都心線から半蔵門線への乗り換え」と同じくらい出口の見えない表情で、教壇を指差した。

 

「恵、君は相変わらず『現実と虚構の境界』が分かってないね。今日は特別講義。読者から『渋谷事変の舞台になった場所に行ってみましたが、工事が進みすぎてて、五条先生が封印された場所がどこか分かりません!』という悲痛なハガキが届いたんだ。だから解決策は一つ。僕がこの教室に『最新の渋谷駅構内』を完全再現して、僕自身が全裸で『動く歩道』になる」

 

「……五条さん。私はなぜ、このスクランブル交差点のペイントを体に塗って、1分おきに四方八方から歩いてくる生徒を捌かなければならないんですか。私の時給は、いつになったら『再開発』されるんでしょうか」

 

冥冥が、そろばんを弾きながら「この労働、割に合わないわね」と冷たい視線を送る。

 

「冥さん、固いこと言わないの。ほら、読者からのハガキが来てるぞ。『五条先生。渋谷の東急百貨店がなくなっててショックです。先生が獄門疆の中で暇つぶしにデパ地下で買おうとしていたスイーツは何ですか?』という、ペンネーム・ヒカリエの最上階さんからのお悩みだ」

 

「……アンタが封印された時、そんな余裕あったかよ」

 

虎杖が呆れ顔で突っ込むが、五条はハチ公の真似をして加速する。

 

「いいかい、みんな! 渋谷は常に変わり続けるんだ。はい、悠仁! 今すぐ宿儺に代わって、全裸で『マークシティ』から『ストリーム』まで、一度も迷わずに最短ルートで爆走してきて! 最後に『SHIBUYA SKY』の屋上で、全裸で『領・域・展・開!』って叫びながら、夜景の一部になってきて!」

 

「おう! 任せろ先生! 俺、渋谷の地理は、宿儺が壊したおかげで逆に詳しくなったぜ!」

 

「行かせるかボケェッ!!」

 

釘崎のハリセンが、音速を超えて五条の「不可侵(再開発中)」、冥冥の「誘導灯」、そして背景で勝手に「渋谷の109前でスカウト待ち」のポーズを決めていたパンダをまとめて物理法則無視で粉砕し、五条の脳天にめり込んだ。

もはやこの教室において、ツッコミこそが唯一の「ハチ公前待ち合わせ成功」である。

 

「痛ーい! 野薔薇ちゃん、聖地のリアル(物理)を邪魔するなんて……これが変わりゆく街並みと、変わらない暴力の力か!」

 

教壇でのたうち回る、路線図姿の最強。

教室の掲示板には「JR・私鉄乗り換え案内(複雑)」がびっしり貼られているが、この3年J組だけは、聖地巡礼を終える前に、先生のせいで渋谷の地価が暴落しそうな混沌に包まれていた。

 

「……ま、渋谷が複雑すぎるなら、僕が『領域展開』で全人類の脳内に『僕が駅長を務める五条駅』を建設してあげるからさ。タイトルは『五条先生、全線開通で全裸!』。来週から全編これで行くよ」

 

「……そのまま銀座線の末端に挟まって、一生展示されてろ」

 

伏黒が、窓の外でなぜか本当に「スクランブル交差点」で迷子になっている伊地知さんを眺めながら、深くため息をついた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。