呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「はい注目ー。そこ、呪い合わない。先生を『謎を残したまま消えた男』みたいな目で見ない」
ガララ、と教室の扉が開く。
今日の五条悟は白衣の下に「正解」と書かれたTシャツを着込み、手には「未回収伏線リスト」と書かれた、巻物のように長いトイレットペーパーを持っていた。
「……先生。まず、その自分でも忘れてそうな設定を必死に書き出した紙の落とし前、つけてもらえます?」
伏黒が、もはや教科書を閉じて、呆れ果てた顔で教壇を指差した。
「恵、君は相変わらず『考察班』の熱意を舐めてるね。本編が完結に向かう中、みんなが夜も眠れずに考えている『あの設定はどうなったの?』という謎を、僕がこの3年J組で強引に解決してあげる高度な呪術なんだ。今の僕は、実質的に全知の神と、Wikipediaの編集者を足して二で割った感じ。心にファンブックを持っていれば、それは後付け設定ではないんだよ」
「警察以前に、作者の脳内に謝ってください。この人、存在が特級のネタバレ(捏造)犯です」
釘崎がスマホで「公式ガイドブック」の予約画面を構える。
だが、五条はトイレットペーパーをなびかせながら、優雅な指先でそれを弾いた。
「野薔薇ちゃん、落ち着いて。それより重大な発表……というか、読者からのハガキが来てるぞ。『五条先生。結局、羂索(けんじゃく)の本当の目的とか、天元のその後とか、平安時代の宿儺の過去とか、どうなってるんですか?』という、ペンネーム・考察しすぎて知恵熱さんからのお悩みだ」
「……それをアンタがここで喋ったら、本編の存在意義がなくなるだろ」
虎杖がもっともなツッコミを入れるが、五条は六眼をキラリと光らせて加速する。
「いいかい、みんな! 伏線っていうのはね、回収されないからこそ美しいんだ。例えば『僕の瞳がなぜこんなに綺麗なのか』という伏線。正解は『僕が毎日、全裸で宇宙の真理と交信しているから』なんだよ。はい、悠仁! 今すぐ宿儺に代わって、全裸で『宿儺が平安時代に食べて一番美味しかったもの』を再現してきて! ちなみに正解は『近所のコンビニのLチキ』ね!」
「おう! 任せろ先生! 宿儺の野郎、意外とジャンクフード好きだったんだな!」
「行かせるかボケェッ!!」
釘崎のハリセンが、音速を超えて五条の「不可侵」と、手に持った「伏線リスト(トイレットペーパー)」を物理法則無視で貫通し、五条の脳天にめり込んだ。
もはやこの教室において、ツッコミこそが唯一の「公式回答」である。
「痛ーい! 野薔薇ちゃん、物語のミステリー(物理)を台無しにするなんて……これが真相を知りたがらない、ライト層の純粋な暴力の力か!」
教壇でのたうち回る、白衣一丁の最強。
教室の掲示板には、相関図の「?」マークがいくつも放置されているが、この3年J組だけは、全ての謎が解明される前に、先生の適当な発言のせいで物語の根幹がシロアリに食われたみたいにボロボロになりそうな混沌に包まれていた。
「……ま、伏線が気になるなら、僕が『領域展開』で全読者の脳内に直接『僕が考えた最強の最終回』を書き込んであげるからさ。タイトルは『五条悟、実は全員の親戚だった説!』。来週から全編これで行くよ」
「……そのまま設定の矛盾に挟まって圧死してこい」
伏黒が、窓の外で「そういえば俺の母親の正体は……」と真面目に考え込み始めた虎杖を眺めながら、深くため息をついた。