呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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最期に言い残すことが、ギャグでいいのか

「はい注目ー。そこ、呪い合わない。先生を『空港で見かける幻覚』みたいな目で見ない」

 

ガララ、と教室の扉が開く。

そこには、いつもの白衣姿……ではなく、原作終盤の「あの」高専ジャージを着た五条悟が立っていた。だが、首から上はなぜか「遺影」のような額縁に顔をはめ込んでおり、背中には「南へ」と書かれた大きな行き先表示板を背負っている。

 

「……先生。まず、その読者のトラウマを最短距離で抉っていくような、不吉すぎるフル装備の落とし前、つけてもらえます?」

 

伏黒が、もはやツッコむ手さえ震え、深い絶望を瞳に宿して教壇を指差した。

 

「恵、君は相変わらず『死生観』が硬いね。これは『不可侵の成仏』。本編で僕が空港でバカンスを楽しんでる間、君たちが外で宿儺相手にボコボコにされてるのが忍びなくて、せめて『魂だけは学園コメディに戻ってきました』っていう高度な呪術なんだ。今の僕は、実質的に最強の亡霊と、読者の涙を足して二で割った感じ。心に青い春を持っていれば、それは未練ではないんだよ」

 

「警察以前に、坊さん呼んできてください。この人、存在が特級の心霊現象です」

 

釘崎がスマホで「葬儀屋」の番号を構えるが、その手もどこか力がない。

すると、五条は額縁の中から、かつてないほど真面目な顔(自称)で教壇を叩いた。

 

「野薔薇ちゃん、落ち着いて。それより重大な発表……というか、読者からハガキが来てるぞ。『五条先生。正直、あの最期には納得がいきません。最強のあなたなら、もっと何か言い残すべきことがあったんじゃないですか?』という、ペンネーム・空港のベンチさんからのお悩みだ」

 

「……アンタ、本当はなんて言いたかったんだよ」

 

虎杖が、少しだけ潤んだ目で問いかける。

教室に一瞬、原作のような静寂が訪れた。

五条はふっと視線を落とし、静かに口を開く。

 

「いいかい、みんな。僕が最期に伝えたかったのは、宿儺が強かったことでも、孤独がどうこうって話でもない。……『僕がいない間、誰が3年J組のボケ担当を継承するんだよ!』っていう、この一点に尽きるんだ! はい、悠仁! 今すぐ宿儺に代わって、全裸で『僕の遺志』を継いで、全ページに全裸で黒閃を打ち込みながら、編集部を南へと強制移住させてきて!」

 

「おう! 任せろ先生! 俺、アンタの遺志なら、どんなに汚いもんでも引き受けるぜ!」

「行かせるかボケェッ!!」

 

釘崎のハリセンが、音速を超えて五条の「不可侵」と「額縁」、そして「背負った行き先表示板」をまとめて物理法則無視で粉砕し、五条の脳天にめり込んだ。

もはやこの教室において、ツッコミこそが唯一の「反転術式」である。

 

「痛ーい! 野薔薇ちゃん、死者の最期の言葉(ギャグ)を邪魔するなんて……これが生者が死者に突きつける、現実(暴力)の力か!」

 

教壇でのたうち回る、ジャージ姿の最強。

教室の黒板には、誰かが書いた「おかえり」の文字が消えかかっているが、この3年J組だけは、感動の回想シーンを完遂する前に、先生が「死んでも治らない」ことを証明して世界観が崩壊しそうな混沌に包まれていた。

 

「……ま、僕の死が受け入れられないなら、僕が『領域展開』で全人類の記憶を『五条悟は生きて3年J組でふざけている』という事実に固定してあげるからさ。タイトルは『五条悟、死んでも死にきれない学園生活!』。来週から全編これで行くよ」

 

「……そのまま空港の保安検査場で一生引っかかってろ」

 

伏黒が、窓の外でなぜか「南」ではなく「北(北海道)」の方角へ走っていこうとする先生を眺めながら、深くため息をついた。

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