呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「はい注目ー。そこ、呪い合わない。先生を『天逆鉾』で刺そうとしない」
ガララ、と教室の扉が開くと同時に、五条悟が教壇に滑り込んだ。
今日の彼は、白衣の下にエプロン一丁。
頭にはなぜか「獄門疆」を模したと思われる四角い段ボール箱を被り、そこから覗く目にはキラキラした少女漫画風の睫毛が描き込まれている。
「……先生。まず、そのセルフ封印されてる不審な格好の落とし前、つけてもらえます?」
伏黒が、もはや魂が抜けたような声で教壇を指差した。
「恵、君は相変わらず『呪縛』が足りないね。これは『不可侵のセルフキッチン』。極限まで自分を箱に閉じ込めることで、熟成された呪力が最高の隠し味になるんだ。今の僕は、実質的に特級呪物と三ツ星シェフを足して九で割った感じ。心にレシピを持っていれば、それは変質者ではないんだよ」
「いや、警察呼びます。この人、存在が特級の食中毒源です」
釘崎がスマホで保健所の番号を表示しながら構える。だが、五条はそれを優雅な指先で弾いた。
「野薔薇ちゃん、落ち着いて。それより重大な発表がある。今日の講義は、全呪術師が震え上がった……『死滅回游のルールが難しすぎて、誰も読んでくれないから、勝手に給食争奪戦に変更したぜ大作戦』についてだ」
教壇には、なぜか「特級呪物・宿儺の指」の形をしたウインナーと、紫色の怪しいスープが置かれていた。
「いいかい、みんな。ポイントを稼ぐために泳者を倒すなんて効率が悪い。これからは『総得点(カロリー)』を競う時代だよ。はい、悠仁、この宿儺ウインナーを『黒閃』の速度で完食して、僕に100ポイント頂戴!」
「おう! 任せろ先生! 俺、これ食うのだけは得意なんだ!」
虎杖がウインナーを口に放り込み、渾身の力で咀嚼する。
……が、次の瞬間。
虎杖の顔に紋様が浮かび上がり、「あまりの不味さに」宿儺が表に出てきて絶叫した。
「……先生。宿儺が出てきて『小僧、味付けを考えろ!』ってキレてるんだけど。領域展開『伏魔御厨子(ふくまみずし)』が、ただの不潔な厨房になってるんだけど」
「あちゃー、悠仁。君、宿儺の味覚を舐めちゃダメだよ。でも大丈夫、先生もさっき自分の『無下限』でかき混ぜた卵焼き食べたら、情報が完結しすぎてて味がしなかったから。これが最強ゆえの、味覚の特異点(シンギュラリティ)ってやつ?」
「死ねよ!! 呪いの王にそんなくだらない理由で出てこさせるな!!」
釘崎のハリセンが、音速を超えて五条の「不可侵」を物理法則無視で貫通し、その脳天にめり込んだ。
もはやこの教室において、ツッコミこそが最強の「処刑人の剣」である。
「痛ーい! 野薔薇ちゃん、不可侵を貫通するなんて……これが愛の教育(暴力)の力か!」
教壇でのたうち回る、段ボールを被った最強。
教室の黒板には複雑な「コロニールール」が書かれているが、この3年J組だけは、世界を救う前に、給食の献立で学校が崩壊しそうな混沌に包まれていた。
「……ま、ルールが浸透しないなら、僕が『領域展開』で全人類に僕のフルコースを無理やり食べさせてあげるからさ。タイトルは『五条悟、美食の頂へ!』。来週から全編これで行くよ」
「……そのまま『トリコ』の世界に修行に行ってこい」
伏黒が、窓の外で暴れる宿儺(空腹)を眺めながら深くため息をついた。