呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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最強の看病、あるいは看病という名の第二次領域展開

昨夜の「全裸雪山合宿」という名の狂気は、見事に代償を連れてきた。

ログハウスの一室には、もはや「J」の輝きも「空港」の余韻も微塵もない。

あるのは、交互に響く重苦しい咳と、鼻をすする音だけだ。

 

「……先生、理屈はいいから、早く氷嚢(ひょうのう)替えてよ……。頭の中で、玉犬がキャンプファイヤーしてるみたいに熱いんだけど……」

 

伏黒が、重い瞼を震わせながら呻く。

隣では虎杖が「アハハ……宿儺も鼻水垂らしてる気がする……」と朦朧とした意識で笑い、釘崎にいたっては「あいつ(五条)を……藁人形(呪い)で……五寸釘……」と、夢の中でまで看病放棄した教師を呪っていた。

 

「おかしいな。僕の六眼で見ても、君たちの体内でウイルスが盆踊りしてるのはハッキリ見えるんだけどね。……よし、恵、ちょっと止まって。物理的にウイルスを『茈』で消し飛ばしてあげる」

 

「やめろ死ぬわ!! もっとこう……普通の、お粥とか、ポカリスエットとか、そういう慈悲はないのかよ!」

 

荒ぶる病人のツッコミに、最強の呪術師は初めて「敗北」を知った。

最強を自負する男は、瞬間移動でコンビニを三軒はしごし、大量のゼリー飲料と冷えピタを抱えて戻ってきた。

だが、彼には致命的な欠点があった。

 

「悟、お粥が炭化しているよ。君は無下限で熱すら遮断するくせに、火加減の調節はできないのかい?」

 

幻聴か、あるいは高熱による幻覚か。

台所の隅で、昨夜の焼肉屋(空港)から出張してきたような夏油傑の幻影が、呆れたように五条を見つめている。

 

「傑、君はいいよね。向こう側で涼しい顔して。こっちはね、生徒たちが『3年J組』を卒業する前に、ウイルスで全滅しかけてるんだよ」

 

「そもそも君たちは3年じゃないと言っているだろう。……ほら、焦げた鍋は私が洗っておくから、君は早くその冷えピタを貼ってあげなよ。ズレてるよ、最強」

 

五条は毒づきながらも、意識の朦朧とする虎杖の額に冷えピタを叩きつけた。

 

「……ん、ひんやりする……。五条先生、手が、でかい……」

 

「悠仁、静かに寝てなよ。デザートに喜久福を買ってきたからね。熱が下がらないと、全部僕が食べるよ」

 

「……鬼……。最強の、鬼……」

 

釘崎の罵声をBGMに、五条は深夜までタオルを替え、看病という名の「精密な呪力操作」を続けた。

最強の術式も、無限の呪力も、風邪をひいた教え子の咳一つを止める役には立たない。

 

「……ふぅ。これが『J』の試練か。物語を終わらせるのは簡単だけど、風邪を治すのはこんなに難しいんだね」

 

夜明け前、ようやくスースーと寝息を立て始めた三人の枕元で、五条は椅子に腰掛けたまま、ふっと笑った。

 

「さて、お粥のリベンジかな。……傑、見てるなら火加減教えてよ。次は焦がさない」

 

窓の外では、昨夜の地獄のような雪山が嘘のように、静かな朝日が昇り始めていた。

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