呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「先生……。もう『J』はお腹いっぱいですって。呪術(JUJUTSU)のJで完結したじゃないですか。空港の焼肉屋(南国)で傑さんと握手して、全ては終わったはずでしょ」
伏黒が、まだ少し赤い鼻をすすりながら力なく抗議する。
だが、五条は窓の外を指さし、まるで世界の真理を悟ったような顔で言った。
「恵、君は何もわかっていない。ジャニーズといえば、避けては通れない話題があるだろう? これをやらずして、僕たちの『3年J組』は幕を閉じられない」
「先生……。なんか急に空気重くないですか。ジャニーズの華やかな部分だけじゃなくて、もっとこう、踏み込んじゃいけない領域の話をしようとしてます?」
虎杖が、本能的な危うさを感じて身を引く。
伏黒も、影からいつでも脱出用の式神を出せるよう、指先をわずかに動かしていた。
「ジャニーさんの所業。……この呪界において、それこそが最強の『特級呪物』だったわけだ。誰もが知っていて、誰もが目を逸らし、そして誰もがその『輝き』の恩恵に預かっていた。呪術師の世界も同じだ。誰かの犠牲の上に成り立つ秩序なんて、クソ喰らえだろ?」
「ちょっと、先生。急に社会派なこと言わないでよ……。私たちはただ、焼肉食べて雪山でバカやってただけじゃない」
釘崎が震える声で遮るが、五条は止まらない。
「傑も言ってたじゃないか。非術師を助けるのが呪術師の義務だって。でもね、その『助ける側』のトップが、一番醜悪な呪いを子供たちに振りまいていたとしたら? その『J』の王国で、You、やっちゃいなよなんて軽い言葉一つで、どれだけの魂が摩耗していったと思う?」
「……。……それって、僕たちが今受けている『3年J組』っていう呪いも、その一部なんですか」
伏黒の問いに、五条は静かに首を振った。
「いや、僕たちは『3年じゃない』。そこが唯一の救いさ。僕たちはそのシステムの外側にいる。でもね、この『J』の名前を冠して遊んでいる以上、その暗部から目を逸らすのはフェアじゃない。……いいかい、本当の恐怖は、特級呪霊じゃない。権力を持った人間が、自分を神だと勘違いした時に生まれる、逃げ場のない密室の呪いだ」
その時、リビングの隅に、またしても夏油傑の幻影が現れた。
だが、今度はいつものような軽口ではない。
「悟。……それは、私たちがもっとも嫌った『非術師の闇』そのものだね。弱者を食い物にして、美しい虚飾で包み隠す。君がその六眼で見抜きながら、何もしなかったわけじゃないことは知っている。けれど、この物語の『J』は、もう取り返しがつかないところまで来てしまったんだ」
「ああ、わかってるよ傑。だからこそ、僕は壊したいんだ。この、キラキラした皮を被った醜悪なシステムをね」
五条は、手に持っていた「J組公式ロゴ(ダサい)」を、力任せに握りつぶした。
「……先生。なんか、難しいことはわかんねーけどさ。オレたちが裸で雪山走ったのは、そんな暗い話のためじゃねーだろ? 腹いっぱい食って、笑って、バカやって……。そういうの全部、誰かの犠牲の上に成り立つ『嘘』にしたくないだけだよ」
虎杖の真っ直ぐな言葉が、張り詰めた空気をわずかに緩める。
「……悠仁。お前、たまに良いこと言うわね。……そうよ。誰が何をしたとか、そんなクソみたいな過去に私たちの『今』を汚されてたまるかっての。Youだか何だか知らないけど、そんなの呪ってやるわよ」
釘崎が、いつものように五寸釘をテーブルに叩きつける。
「……結局、僕たちは『3年J組』を名乗りながら、その名前に一番中指を立ててる存在ってことですね」
伏黒が小さく溜息をつくと、五条はいつもの「最強」の笑顔に戻った。
「そう。僕たちは、誰の指図も受けない。Youも僕も、関係ない。……さて、重い話はここまでだ! この『Jの呪い』を完全に祓うために、明日は全員で――『事務所の解体』をテーマにした、泥まみれの障害物競走でもやろうか!」
「「「やっぱりそうなるのかよ!!!」」」
三人の怒号がログハウスに響き渡り、夏油の幻影は苦笑いしながら消えていった。