呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「――いいかい。4月だ。世間は入学式や入社式で『新しい自分』に酔いしれている。けれど、真に新しい自分に出会いたいなら、芝生の上で11人の男たちが球を追う、あの巨大な『J』の祭典に飛び込むべきじゃないかな?」
ロックの悲劇をナナミンに鎮圧された翌週。
五条悟は、各クラブのエンブレムを全身にタトゥーシールで貼り付けたような、見るからに「出禁確実」な出で立ちで教壇に立った。
「先生……。4月ですよ。せっかく新学期でフレッシュな気分だったのに、なんで朝からJリーグの順位表を黒板に叩きつけてるんですか。しかも、さりげなく自分の名前を得点王ランキングのトップに書き込んでるし」
伏黒が、新年度の教科書を盾にしながら、五条のギラついた六眼から目を逸らす。
「恵、甘いよ。今のJリーグを見てごらん。序盤の連勝で勢いに乗るチームと、補強が噛み合わず泥沼にハマる名門……この混沌(カオス)こそが呪術なんだ! いいかい、僕たちがやるのはサポーターじゃない。国立競技場で行われる**『新年度スペシャルマッチ』**に、突如として『12番目の選手』として全裸で乱入し、最新のAI搭載カメラすら追跡不能なステップで、全観客にファンサをする……これこそが、春のJ(ジャッジメント)だよ!」
「ちょっと待ちなさいよ! 今のJリーグはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)だけじゃないのよ! 2026年からは『自動オフサイド判定』もさらに進化して、あんたみたいな不審者がピッチに入った瞬間、スタジアム中のモニターに『UNKNOWN ENTITY(不明な個体)』ってデカデカと表示されて即刻排除されるわよ!」
釘崎が、いつの間にか渡された「2026年版・公式応援フラッグ」を叩きつけながら叫ぶ。
「アハハ! 先生、見てよこれ! オレの脚、勝手に海外移籍が決まったばかりの期待の若手みたいな、エグい軌道のシュートを再現し始めたんだけど! 呪力でボールに回転を加えれば、キーパーごとゴールネット突き破れるんじゃねーか!?」
「悠仁、お前はいいよな……。先生、一つ聞きたいんだけど。なんで乱入するのに『全裸』が必須条件なんだ? 4月の夜のスタジアムはまだ肌寒いし、普通にユニフォーム着て『期待の練習生』として潜り込めばいいだろ」
伏黒の真っ当な指摘に、五条は目隠しをずらし、満開の桜が舞い散る国立競技場の幻影を見つめた。
「恵、スポーツっていうのはね、ルールという名の『縛り』の中で戦うものだ。ユニフォームを着るという行為は、既存の戦術への屈服なんだよ。僕たちが目指すのは、VARの審判員たちが『あまりの美しさにカードを出すのを忘れた』と供述するような、全裸のファンタジスタさ!」
その時、教室の扉が静かに開き、審判のホイッスルを首から下げた夏油傑の幻影が現れた。
「悟。……You、2026年のJリーグはね、フィジカルコンタクトの基準がさらに厳格化されているんだ。そんな中で全裸で乱入して、相手ディフェンダーと接触(デュエル)してごらん。一発でレッドカードどころか、法的措置(JIGOKU)が待っているよ。……さあ、私と一緒に、ゴール裏で『特級呪霊による一糸乱れぬコレオグラフィー』の練習をしよう」
「傑……! 君、コールリーダーも似合うね。よし、みんな! 目標はハーフタイムショーのジャックだ! 悠仁はオーバーヘッドで桜吹雪を巻き上げろ、野薔薇はチアとして呪力のポンポンを起爆させろ! 恵は……影絵でマスコットキャラクターを召喚して、ピッチ上の全カメラを物理的にジャミングだ!」
「「「「結局、営業妨害じゃねーか!!!!!」」」」
結局、彼らは新年度早々、国立競技場へと向かう「J」の文字がデカデカと書かれた不審なマイクロバスに押し込まれた。
満開の桜の下、Jリーグの歴史に刻まれるのは、華麗なゴールか、それとも「4月の夜に現れた最も白い放送事故」として語り継がれる全裸の呪術師たちか――。
「……先生、一応確認だけど。今、Jリーグで一番『持ってる』って言われてる選手、誰だか知っててこれやってる?」
「もちろんさ、恵。……僕だよ!」