呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「はい注目ー。そこ、呪い合わない。先生を銀河系の果てで職質されている時空不審者で見ない」
時空の歪みが派手に弾け、教室の空間に銀色のノイズが走る。
今日の五条悟は、白衣の下にナノマシンで構成された透明な防護服(中身は全裸)を纏い、頭にはフリル付きの猫耳……ではなく、宇宙人シムリアの触角を模した「全宇宙共通Wi-Fiアンテナ」を三本生やし、右手には特級呪具・プラズマおしゃぶり、左手には「西暦2086年・最強の曾祖父」と書かれたホログラムのタスキをかけていた。
「……先生。まず、その呪術廻戦≡(モジュロ)という公式設定に便乗して、六十八年後の未来から遊びに来た乙骨真剣や憂花を、全裸で『高い高い』しながら成層圏まで放り投げている、銀河系追放確定の不審者の落とし前、つけてもらえます?」
伏黒が、もはや自分の家系図がこの男によって宇宙規模の怪文書に書き換えられるのではないかという絶望感とともに、空中を舞う真剣(のホログラム)を指差した。
「恵、君は相変わらず宇宙的な視点を分かってないね。今日は特別講義。読者から、五条先生。未来では真剣くんたちが地球人とシムリア人のハーフとして、反重力呪術を操っていますが、先生は彼らの前に全裸で現れて『僕が君たちのルーツ(全裸)だよ』と教え込むんですか? という、ペンネーム・乙骨家の歴史を守り隊さんからのお悩みだ」
「……その悩み、アンタが未来の教科書の挿絵を全部自分の自撮りに差し替えようとした結果ですよね」
伏黒が、ビーム定規を武器に構える。だが、五条は不可侵のモジュロ演算(≡)によって、教室内を強制的にシムリア・地球合同・親子教室へと作り変え始めた。
「いいかい、みんな! ≡というのは、割り算の余りが等しいこと。つまり、世代が何度巡っても、僕という存在は常に歴史の余白に残り続け、そして最強であり続けるという証明なんだ! 解決策は一つ。僕がこの教室を全宇宙最大の英才教育施設に作り変えて、僕自身が全裸で真剣くんたちの純粋な瞳に、僕の最強の遺伝子(全裸の記憶)を直接アーカイブ化する」
「……五条さん。私はなぜ、この、シムリア星人専用・対衝撃よだれかけ、を顔に貼り付け、宇宙の塵をハイハイしながら、真剣くんたちのオムツを替えに行かなければならないんですか。私の尊厳は、いつになったら光年単位の隔離から解放されるんでしょうか。私の給料は、なぜ現物支給のスペースプロテインなんですか」
伊地知が、過労で顔が流星群のように点滅した状態で、ホログラムの離乳食メニューを配る。
「伊地知くん、固いこと言わないの。ほら、悠仁! 今すぐ宿儺に代わって、全裸で未来の銀河評議会に乱入して、役員たちの前で、今日から真剣くんの必殺技は『全裸黒閃』にしろ! って叫びながら、全裸で超時空パンチを打ち込んで、全宇宙の資産価値を僕の筋肉にバックアップしてきて!」
「おう! 任せろ先生! 俺、これやれば、アンドロメダ銀河でも俺たちの絆(印税)が爆上がりなんだな!」
「銀河の資産がお前の筋肉に反映されねえし、お前の社会的信用がブラックホールに飲み込まれて消滅してんだよバカ! あと未来の子供たちの健やかな成長を全裸で妨害するな!」
伏黒の冷徹な事実確認とともに、釘崎のハリセンが、音速を超えて五条の不可侵(未来永劫)、伊地知の宇宙よだれかけ、そして背景で勝手に宇宙由来の植物で最強の未来酒を醸造していた家入硝子のバイオリアクターをまとめて物理法則無視で粉砕し、五条の脳天にめり込んだ。
もはやこの教室において、ツッコミこそが唯一の地球環境保護である。
「痛ーい! 野薔薇ちゃん、未来の教育方針(物理)を邪魔するなんて……これがヒット作を百年出し続ける、銀河規模の冷徹な選別(暴力)の力か!」
教壇でのたうち回る、銀色の最強。
教室の掲示板には、銀河系NO.1パパ(予定)のホログラムが踊っているが、この3年J組だけは、真剣や憂花が歴史に名を刻む前に、先生のせいで全人類が「全裸のエイリアン」として宇宙から抹消されそうな混沌に包まれていた。
「……ま、未来が不安なら、僕が領域展開で全宇宙の時間を僕の全裸の誕生日に固定してあげるからさ。タイトルは、週刊五条、銀河を≡!。来週から全編、シムリア語の生中継で行くよ」
「……そのままイベントホライゾンの彼方に消えて、二度と復元されるな」
伏黒が、窓の外でなぜか本当に光の速さでおぎゃあと叫びながら走り出した虎杖を眺めながら、深くため息をついた。
この作品に、完結という名の出口は存在しない。