呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
教室のスピーカーが、突如として鼓膜を震わせる「ヌー」の咆哮を吐き出した。
第3期「死滅回游 前編」オープニングテーマ、King Gnuによる新曲『AIZO』――。
その、絶望と熱狂が綯い交ぜになった破壊的なイントロに合わせ、五条悟は教壇で一人、拡声器を構えて激しく体を揺らしている。
「……先生。何ですか、その『最先端の絶望を予約しました』みたいなドヤ顔。あと、その目隠しの下、絶対『愛』と『憎』が入り混じったドロドロの感情をフラッシュバックさせてますよね。鼻をすする音が無下限を突き抜けて聞こえてるんですけど」
伏黒が、教科書を閉じて深い溜息をつく。
「恵、いい質問だね。これは呪力じゃない。僕たちの物語を新たなデスゲームへ引きずり込む『King Gnu』の魔力さ。いいかい、『廻廻奇譚』で始まった疾走は、『青のすみか』で過去を抉られ、『SPECIALZ』で渋谷を地獄に変えた。……そして今、この『AIZO(愛憎)』が、僕たちの剥き出しの感情を白日の下にさらけ出すんだよ!」
五条は、ドラマチックに拡声器を掲げ、教室の壁をリズムに合わせて叩く。
「ちょっと先生! 曲が変わるたびに、私の脳内で『オシャレな線画の私が、血走った目で誰かを追い詰める映像』が再生されるんだけど! 誰がサビの『AIZO』の瞬間に、実写合成みたいな背景で、私に『逆夢』を見せていいって言ったのよ!」
釘崎が、いつの間にか手に持っていたポテトチップスを、常田さんばりの気だるい表情で咀嚼しながら叫ぶ。
「アハハ! 先生、見てよこれ! オレの身体、サビが流れるたびに勝手に『死滅回游』の参加登録ボタンを連打しちゃうんだけど! この重低音、マジで『一途』に殴り合いたくなるわ!」
「悠仁、お前はOP映像の演出に感化されすぎなんだよ! ……先生、まさか僕たちに『King Gnuの新曲MVみたいなノイズ混じりのカット割りで、全裸でポイントを稼ぎに行け』とか、そういう前衛的な暴走をさせに来たんじゃないでしょうね」
伏黒の冷徹なツッコミに、五条はパッと顔を上げた。
「恵、正解だ! どんなに無惨な殺し合いでも、この『AIZO』さえ流せば、それは『最先端のカルチャー』として成立するんだ。……というわけで、今から全員で、サビの瞬間に『全裸でコガネを肩に乗せて、カメラに向かって愛憎(AIZO)に満ちた微笑みを浮かべる』練習をするよ!」
「「「「結局、曲名にかこつけて脱ぐんじゃねーか!!!!!」」」」
その時、教室の影から、イヤホンを耳にした夏油傑の幻影が、静かに『燈』を口ずさみながら現れた。
「悟。……君の演出はいつも騒がしいね。だが、私と君の『青い春』を、そんな新期の全裸カオスで上書きしないでくれないか。……You、ベースの音が重すぎるよ」
「傑……! 君だって、死滅回游のキービジュアルで一人だけ『more than words』な雰囲気を出しながら、僕への『AIZO』を拗らせて暗躍してるじゃないか!」
「それは物語への献身だよ、悟」
夏油が呆れたように消えると、五条は再びチョークを握り、黒板に大きく書き殴った。
『J(次回予告)』
「いいかい諸君。歌が変われば、地獄も変わる。ヌーの群れが新たな絶望を連れてきても、僕たちの『J』の旋律は止まらない。……さあ、明日は全員で『AIZO』のビートに合わせて、全裸でポイント争奪戦だ!」
「「「「もう新曲を聴くのが怖いわ!!!!!」」」」
彼らが「J組」という名のプレイリストから解放される日は、King Gnuが僕たちの愛と憎しみを美しく塗り替え続ける限り、永遠に来ないのかもしれない。