呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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根源のJ、あるいは「感情という名の全裸」

教室の黒板には、いつものふざけた図解ではなく、ただ一言、大きく「呪」という文字が書かれていた。

五条悟は教壇で、アイマスクすら外した真剣な面持ちで、静かに生徒たちを見渡している。

 

「……先生。何ですか、その『今日は真面目に授業をします』みたいな空気。逆に怖いんですけど。あと、その黒板の文字、呪力が漏れすぎてて見てるだけで目がチカチカします」

 

伏黒が、不気味なほどの静寂に耐えかねて、警戒しながら声を出す。

 

「恵、いい質問だね。今日は原点に立ち返ろう。……君たちは、そもそも『呪術』とは何だと思う? 負の感情、漏れ出した呪力、それを術式で練り上げる技術……。教科書的にはそうだ。でも、それはあくまで表面的な現象に過ぎない」

 

五条は、教壇からゆっくりと降り、生徒たちの机の間を歩き始めた。

 

「ちょっと先生! 急に哲学的にならないでよ。私たちが聞きたいのは、どうすれば効率よく呪霊をブチ叩けるかって話であって、存在論みたいな小難しい話じゃないんだけど!」

 

釘崎が、いつの間にか手元に置かれた「呪術概論」の分厚い本をパラパラとめくりながら叫ぶ。

 

「アハハ! 先生、オレはなんとなくわかるよ! 呪術って、なんかこう……胸の奥がギュッとなるような、アイツを助けたいとか、自分が情けないとか、そういう『ドロドロした気持ち』が形になったものだろ?」

 

「悠仁、正解だ。……呪術の本質とは、人間が隠しておきたい『剥き出しの感情』そのものなんだ。誰もが見せたくない、触れられたくない、心の奥底にある醜い欲望や恐怖。……それを引きずり出し、世界に叩きつける行為。それが呪術だよ」

 

五条は、虎杖の机で足を止め、ニヤリと笑った。

 

「いいかい諸君。自分の感情をさらけ出すということは、精神的に『全裸』になることと同義なんだ。羞恥心を捨て、虚飾を剥ぎ取り、魂を真っ裸にしてこそ、真の呪術は完成する。……つまり、僕が今まで君たちに強いてきた『全裸での雪山行軍』や『変態速攻(ボレー)』は、すべて呪術の根源を理解するための崇高な修行だったんだよ!」

 

「「「「結局、そこに着地するのかよ!!!!!」」」」

 

伏黒が、椅子を蹴って立ち上がろうとしたその時、教室の隅に夏油傑の幻影が、静かに紅茶を飲みながら現れた。

 

「悟。……君の理屈は相変わらず極端だね。だが、呪術が『非術師には見えない、人間の醜悪な内面』を扱う仕事であることは否定できない。……You、その全裸の理論は、さすがに無理があるよ」

 

「傑……! 君だって、かつて『猿(非術師)』を蔑んだ時、君の魂は憎悪で真っ裸だったじゃないか! それこそが最強の呪いだったんだよ!」

 

「それは否定しないが、物理的に脱ぐ必要はなかったはずだ」

 

夏油が呆れたように消えると、五条は再びチョークを握り、黒板の「呪」の文字を豪快に塗りつぶした。

 

『J(JUTSU-SHIKI)』

 

「いいかい諸君。呪術とは愛であり、憎しみであり、そして究極の自己解放(露出)だ! さあ、今日の課題は、自分の最も恥ずかしい記憶を大声で叫びながら、全裸でグラウンドを3周すること! これで君たちの呪力は飛躍的に向上するよ!」

 

「「「「もう呪術師やめたいわ!!!!!」」」」

 

彼らが「J組」という名の、あまりにも剥き出しすぎる教育現場から卒業できる日は、呪術という名の狂気が世界から消え去るまで、永遠に来ないのかもしれない。

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