呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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陽だまりの再会、あるいは 10年越しのファーストネーム

放課後の校門前。

虎杖悠仁は、あくびをしながら「今日の夕飯、何かな」と、いつものように屈託のない顔で歩いていた。だが、校門の脇、一本の桜の木の下で誰かを待っているような、背の高い一人の少女の姿を見た瞬間、彼の足が止まった。

 

「……あれ。……小沢、さん?」

 

その声は、驚くほど小さく、そして優しかった。

小沢優子は、少しだけ照れたように微笑み、長い髪を耳にかけた。

 

「……久しぶり、虎杖くん。……急に来ちゃって、ごめんね。……どうしても、もう一度、今の虎杖くんに会って、言いたいことがあったから」

 

小沢の瞳には、かつての弱気な少女の面影はなく、一人の女性としての凛とした決意が宿っていた。その瞳に見つめられ、虎杖は特級呪霊を相手にしている時よりもずっと、全身の神経が研ぎ澄まされるのを感じた。

 

「……そっか。……わざわざ、来てくれたんだ。……嬉しいよ。……小沢さん、なんか、もっと綺麗になったね」

 

虎杖の無自覚な、しかし心からの言葉。その破壊力は、小沢の頬を一瞬で朱色に染め上げた。

二人の間に流れる時間は、呪力も術式も介在しない、ただの「男の子と女の子」としての、あまりにも瑞々しく甘酸っぱいものだった。

 

「……虎杖くん。……私ね、あの時からずっと、虎杖くんが言った言葉を、お守りにしてたんだよ。……『お前は、お前だろ』って。……だから、今の私がここにいるの」

 

小沢が、一歩、虎杖に近づく。その距離、わずか15センチ。

手の甲が触れそうで触れない、その絶妙な空白が、今の二人にとっては宇宙よりも広く、そして愛おしく感じられた。

 

その時、校門の上、不自然なほど高い位置に座っていた五条悟が、ひょっこりと顔を出した。アイマスクを外し、最高級の「青春の蜜」を吸いにやってきた 余計な特級 の登場である。

 

「はーい! 運命の再会(ハッピーエンド) してるね諸君! 先生、空気を読んで 恋のタイムカプセル という名の特級呪術を持ってきてあげたよ! ほら、このスイッチを押すと、二人の周りに 中学時代の思い出の背景 が強制的に投影されて、当時の本音を叫ばないと結界から出られなくなるんだけど……」

 

「「「「今すぐ高専の敷地から出て行ってください、五条先生(最強の人)!!!!!」」」」

 

虎杖の全力の叫びと、小沢の驚きに満ちた(しかし凛とした)拒絶が重なり、五条は「えー、最強の僕が最高の舞台監督になろうとしてるのに。純情派はガードが固いなあ」と、わざとらしく肩をすくめて、空の彼方へと消えていった。

 

静寂が戻った校門前で、虎杖と小沢は、どちらからともなく顔を見合わせて、小さく笑った。

 

「……五条先生、いつもあんな感じなんだ。……ごめんね、小沢さん」

 

「……ううん。……なんだか、虎杖くんらしいなって、安心しちゃった。……ねえ、虎杖くん。……帰り道、少しだけ、一緒に歩いてもいいかな」

 

「……当たり前だろ! ……今日は、俺の奢りで美味しいもん食べに行こうぜ」

 

虎杖が、少しだけ照れながら、小沢の歩幅に合わせてゆっくりと歩き出す。

彼らが 3年J組 という名の、あまりにも真っ直ぐで、あまりにも透明な季節から卒業できる日は、まだ、ずっと先のことのようだ。

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