呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「――いいかい。今日からこの教室は『3年J組』。そして僕は担任の五条悟。……なんて、新学期らしい新鮮な挨拶をしてみたけれど、実はこの設定には、僕たちの運命を左右する重大な秘密が隠されているんだ」
4月6日。桜の花びらが舞い込む高専の教室で、五条悟は教壇を叩きながら、いつになく「爽やかな、しかしどこか寂しげな」笑顔を浮かべていた。
全身から放たれていた螺旋の光は鳴りを潜め、白衣も目隠しも元通りだが、その雰囲気は以前とは違っていた。
「先生……。その話、もう1話から聞いてます。ジャンプのJだの、全裸のJだの。でも、今日僕が言いたいのは一つだけです。……先生、拾ったんですよ、廊下で」
伏黒が、冷徹な手つきで一枚の紙を教壇に置く。そこには**『J組、卒業おめでとう』というロゴと、『舞台:多次元宇宙』**という文字が、はっきりと記されていた。
「先生。……これ、もう終わったんですよね? 私たちが全裸で天を突いて、編集部の意志をねじ伏せて、多次元宇宙にファンサを届けた、あの最終決戦。……私たちは、卒業したんですよね?」
釘崎が、いつの間にか支給されていた「J」の刺繍入り制服を脱ぎ捨てようと暴れる……ことなく、静かに五条を見つめる。
「アハハ! 先生、顔真っ赤だぜ! そういえばオレたちのやり取り、なんか伝説のロックスターの最期に近いと思ってたんだよ! 先生が内村さんのポジションを狙ってたなんて、呪術師としてプライドねーのかよ!」
虎杖だけは、あまりの「パクリっぷり」に腹を抱えて笑っている……が、その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「ち、違うんだ! オマージュだよ! 尊敬(リスペクト)を込めたサンプリングだよ! 4月6日、新年度が始まるこのタイミングで、国民的番組のパワーを借りて僕たちの好感度をブチ上げようとしただけなんだ!」
五条は必死に言い訳をしながら、黒板の「3年J組」という文字を消そうとする。しかし、その時、教室の扉が静かに開き、白いシャツを爽やかに腕まくりした夏油傑の幻影が現れた。
「悟。……You、パクリは良くないよ。特に日テレさんの看板番組の設定を、高専で私物化するのはリスクが高すぎる。……さあ、私と一緒に、番組スタッフに謝罪の菓子折りを持っていく練習をしよう。……あ、ちなみに私は高地くんのポジションでお願いします」
「傑……! 君、ちゃっかりレギュラー枠を狙わないで! よし、こうなったらヤケクソだ! 設定がパクリなら、内容で超えてやる! 悠仁は若林さんより鋭いツッコミを磨け! 野薔薇は橋本環奈よりキラキラした笑顔で螺旋力を練れ! 恵は……影絵で『J』の文字を『Z』に書き換えて、別のパロディ(銀魂)に偽装するんだ!」
「「「「もっと酷くなってんじゃねーか!!!!!」」」」
彼らのツッコミが響き渡った瞬間、教室が、高専が、そして多次元宇宙が、爽やかな桜吹雪とともにゆっくりと崩壊し始めた。螺旋の力が、因果律を元に戻していく。
「……先生、一応確認だけど。来週のサブタイトル、『全裸でめぐる呪術界縦断』とかになってないよね?」
「もちろんさ、恵。……来週からは、君たちが全裸で天を突く、新しい物語の始まりだよ!」
五条は、そう言ってニヤリと笑うと、生徒たちの前から静かに姿を消した。
後には、桜の花びらと、どこか「いつか見た、全裸で天を突く、頼もしい男の背中」の幻影だけが残されていた。