呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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Jの残滓、あるいは「螺旋は全裸で巡る」

「――いいかい。物語が終わったからといって、僕たちが『普通の人』に戻れると思ったら大間違いだよ」

 

最終決戦から数日後。物語の「完結」という名の最強の帳が下りたはずの教室に、五条悟の声が響いた。

しかし、そこにいたのは、いつもの白衣姿ではない。全身を透明なラッピングフィルムで包み、頭には「祝・完結」と書かれた電飾付きのくす玉を載せた、もはや生物学的にも法学的にも分類不能な「何か」だった。

 

「先生……。エピローグですよ。普通、こういうのは夕暮れの屋上で、これまでの思い出を語り合って、ちょっと泣きそうになりながら『またどこかで』って別れるもんじゃないんですか。なんでアンタは、完結した瞬間に『物理的に透ける』という新境地に達してるんですか」

 

伏黒が、手元にある「全62話・事案報告書」の束をゴミ箱に叩きつけながら、死んだ魚のような目で五条を指差した。

 

「恵、これが『J』の美学さ。螺旋の力はね、円を描いて元に戻るんじゃない。一歩ずつ、確実に『変態の深淵』へと登っていくものなんだ。見てごらん、僕が全裸で天を突いたあの日、銀河の彼方に置いてきたはずの『僕の目隠し』が、今や多次元宇宙の守護神として崇められているのを」

 

「それ、ただの宇宙ゴミ(スペースデブリ)として回収されてるだけだってニュースでやってましたよ」

 

釘崎が、すっかり使い古された「特級呪具・ハリセン」を丁寧にメンテナンスしながら、冷ややかに言い放つ。

 

「アハハ! 先生、俺の腹筋に刻まれたドリルの跡、消えないどころか、最近は腹が減ると勝手に回転して米を炊き始めるんだぜ! 螺旋力って、自炊にも便利なんだな!」

 

「悠仁、お前はそのまま炊飯器として第二の人生を歩め……。……先生。一応、これ。読者からの最後のお悩みです。『五条先生、結局、3年J組のJって何だったんですか?』。……これに答えて、マジで終わりにしましょう」

 

伏黒が差し出した最後の一通。五条はフィルムの隙間からそれを受け取ると、目隠しを少しだけずらし、六眼で「物語の向こう側」を見つめた。

 

「J、か。……それはね、ジャンプのJでも、実写のJでも、全裸(J-ENRA)のJでもない」

 

五条は、くす玉をパーンと割りながら、最高に爽やかな、しかし最低に不審な笑顔で言った。

 

「『次(NEXT)』だよ」

 

「……綴り、Jから始まってねーだろ」

 

伏黒のツッコミと同時に、教室の扉が開き、喪服姿(※ただし首から上はミラーボール)の夏油傑の幻影が現れた。

 

「悟。……You、最後にかっこいいこと言おうとして滑ったね。……さあ、私と一緒に、この物語を読んでしまった読者全員の記憶を、螺旋の力で『全裸の思い出』に書き換える作業に入ろう。……ちなみに私は、ナレーターのポジションでお願いします」

 

「傑……! 君、最後くらい主役を譲ってよ! よし、みんな! エピローグの目標は、読者の夢の中に全裸で乱入だ! 悠仁は寝ている読者の枕元でドリルを回せ、野薔薇は夢の中で藁人形の代わりにファンサを叩き込め! 恵は……影絵で『J』の文字を『終』に書き換えるフリをして、永遠に続くループ(再放送)の準備だ!」

 

「「「「結局、成仏できねーのかよ!!!!!」」」」

 

桜舞い散る高専の空に、彼らの絶叫が三度響き渡り、物語は本当の意味で「放送禁止」の彼方へと消えていった。

 

いつか、君がふと空を見上げた時。

雲の隙間に、ドリルで穴を開けたような全裸の男の背中が見えたなら。

そこが、新しい「3年J組」の教室だ。

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