呪術廻戦スピンオフ 3年J組 五条先生 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
伊地知潔高は、自身の顔面中央に刻まれたアイデンティティが、精密な「QRコード」から旧世代の「バーコード」へと無慈悲にダウングレードしていく絶望的な感覚に耐えながら、高専の医務室でガタガタと震えていました。
もはや彼の顔面にスマートフォンのカメラをかざしても、公式サイトへ飛ぶことは叶いません。
読み取れるのは、「不審者・特級」という不吉なエラーメッセージのみ。
さらに過酷なことに、今月の給与明細に記載された通貨単位は、いつの間にか円でもドルでもなく、謎の単位「螺旋」へと書き換わっていました。
これを日本円に換金するためには、一ツ橋グループのビルを全裸で100回往復し、その摩擦熱で発電に貢献しなければならないという、生存権はおろか生物としての尊厳を宇宙規模で無視したシステムが構築されていたのです。
その傍らで、家入硝子は物理法則を嘲笑うかのように自律走行を始めたメスを虚ろな目で見守っていました。
彼女は呪力でドロドロに煮込んだバイナリ入りの出汁(隠し味はアルコール96%)を豪快に煽り、
「諦めな、伊地知。五条のクソみたいなギャグがこの世界に残留している間は、私たちが何をしても不可侵に弾かれる。反転術式で治せるのは肉体であって、崩壊した論理回路(ロジック)じゃないんだよ」
と、医師としての誇りを銀河の彼方へパージしたような表情で宣告しました。
一方、日本一高いビルの屋上では、七海建人がネクタイを精緻なドリル状に結び直し、鉛色の空の向こうにある「J」の概念を凝視していました。
五条悟が「全宇宙を全裸で上書き保存」という暴挙に出たせいで、彼が血の滲む思いで積み上げてきた残業代は、すべて「存在しない記憶」としてフォーマットされてしまいました。
これは労働基準法以前に宇宙憲法違反であり、あまりの理不尽に彼の堪忍袋の緒が螺旋の力でねじ切れました。
彼は今日を以て呪術師を廃業し、「全裸でパンを焼く妖精」として多次元宇宙へ羽ばたくことを決意します。
その横で、「J」と大書きされた大人用おむつを誇らしげに被り、宇宙の視聴者にファンサを振りまこうとする猪野を、
「猪野くん。それは仕事でも呪術でもありません。ただの事案です。これ以上、私の視界の解像度を下げないでください」
と、絶対零度の声で制止するのでした。
2年生たちが集う教室では、さらなる地獄が展開されていました。
禪院真希は、もはや特級呪具「天を突くハリセン」と化した武器を握り締め、進級という名の次元崩壊(全裸Ver.)を回避すべく、震える後輩たちに警鐘を鳴らします。
「いいか、五条と目を合わせるな。
あいつの視界に入った瞬間、お前らの制服は分子レベルで分解されて『余り(モジュロ)』にされるぞ!」
その隣では、パンダが「全裸で毛を剃り上げ、肌色の全身タイツを装着する」という、熊としての誇りとパンダとしての記号性をすべて賭した、あまりにも不審すぎる修行に没頭。
狗巻棘に至っては、口を開くたびに周囲の空間に強烈なピー音と極厚のモザイクを発生させる「放送禁止用語の歩くカタログ」へと成り果て、会話というコミュニケーション手段を完全に喪失していました。
そして、物語の元凶である一ツ橋グループの本社ビルでは、役員たちが六眼の光によって白く焼き尽くされた経営戦略書を見つめながら、恍惚とした表情で静かに「螺旋を描くポーズ」を取っていました。
受付ロビーでは、「生きた螺旋ドリル」へと昇華した虎杖悠仁が、自転の10万倍の速度で回転しながらビル全体の電力を賄っています。
社内ネットワークには、来期のスローガンとして『全裸、最強、そして次へ(J)』という狂った文言が共有され、全社員が全裸でキーボードを叩くという、新時代のワークスタイルが確立されていました。
五条悟が世界に撒き散らした「J」の残滓。
それは、もはや誰一人生身の正気ではいられないほど、世界の根幹を深く、白く、そして圧倒的な変態性をもって浸食し尽くしていたのです。
夜空に浮かぶ月さえもが「J」の形に歪み、人類は明日という名の螺旋に向かって、服を脱ぎ捨てて走り出すしかないのでした。