丑三つ時の森の中、少女は逃げていた。なぜこんな森にいるかというと、テレビで紹介された心霊スポットが近所で気まぐれで友人と二人で肝試しに来たからだ。
息も絶え絶え、今すぐにでも止まりたい。だがそんな事をすれば殺されてしまう。
「きゃっ!?」
少女は何かに足が引っかかり転んだ。少女が足を見ると黒いツタが足に巻き付いていた。
急いでツタを引き剝がそうとするが、ツタは足に巻き付いてくる。
「見~つけた!」
「ひっ...!」
見上げれば大柄な男がニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべて向かってくる。
「それは俺の術式。まぁパンピーには分かんねぇか」
「...春香は?」
「ハルカ?ああ、一緒にいた子か!生きてるよ」
友人が生きていた事を確認できて安心したが、雀の涙ほどだ。恐怖で体の震えが止まらない。
これから自分達がどうなるか分からない事が怖くてたまらないのだ。
「俺は怖がる顔がだ~い好きなんだ♪だから壊れるまで捨てないから安心して...ん?」
少女は気絶していた。あまりの恐怖から脳が強制的にシャットダウンしたのだ。
「気絶しちゃったか...まぁ隠れ家で楽しめばいっか♪」
少女を運ぼうと手を伸ばす。その時、自身に向かって何かが飛んできた。
飛んできたのはナイフだった。男はツタで飛んできたそれを掴む。
(呪力を感じる...術師か?)
ナイフが飛んできた方を見ると、高校生ぐらいであろう青年が立っていた。
「呪術高専3年渡辺和也。単刀直入に聞くが、この森で七人の行方不明者が出てる。犯人はお前か?」
「そうだよ」
「もう一つ聞く。その人達は生きてるか?」
「壊れたおもちゃは捨てちゃうでしょ?」
「...これが最後の質問だ」
渡辺はそう言うと刀に手をかけ、居合の構えを取る。
「どっちがいい?今ここで死ぬか。投降して後で死ぬか」
「どっちもイヤだよ!バーカ!」
男が渡辺を襲う為に一歩踏み出した時、まるで風が吹いたかの様に渡辺は一瞬で男の背後に移動していた。男は慌てて自分に異常がないか確認する。
「ハハッ!斬れてねぇじゃん!驚かせやg」
キンッと刀が鞘に納まる音が響く。それと同時に呪詛師の胴は真っ二つに分かれた。
「は?」
男は何が起こったか理解できなかった。ただ視界に写った自身の体が、斬られた事実を嫌でも自覚させられる。
(何が起こった?斬られたのか?俺が!?)
奴が移動した時に斬られた感触など全くなかった。鞘に納めた瞬間、力一杯に叩き切られた感触が襲った。
(まさか!こいつの術式か!)
男の想像通り、これが渡辺和也の術式
鞘から抜いている間、刀身は全ての物をすり抜け、納めた時に納めるまでに斬った物を同時に切断する
”
(すり抜ける術式!つまり防御不可能って事じゃねーか!)
死にかけの男はぼそりと呟く。
「チート野郎が...」
その言葉を最後に男は事切れた。
▽▽▽
襲われた民間人を保護し、補助監督の運転で帰路に就く。
「少し仮眠をとってもいいですか?」
「構いませんよ。もう遅いですし、ゆっくり休んでください」
「すいません。着いたら起こしてください」
そう言うと渡辺は目を閉じる。あどけない寝顔は彼がまだ子どもなのだと感じさせる。
(術師の中でも真面目で良い子だよなぁ渡辺くん。このままでいてくれ)
渡辺和也は一般家庭の出であり、癖のある術師の中でも比較的まともである。
だが彼は
~二年前~
呪術高専東京校のグラウンドで俺の術式をクラスメイトに見せる。
「これが俺の術式」
「ややこしい術式だね」
「星にだけには言われたくない」
「違えねぇ」
秤が笑いながらそう言うと星はぷくりと頬を膨らませる。
その光景を微笑ましいと思いながら俺は口を開く。
「術式は鏡だと思うんだ。自身を写す鏡。秤なんかは分かりやすいよな」
真剣に話す俺に、二人も真剣に聞いてくれる。
「昔から思ってたんだ。鞘に納めた瞬間に物が斬れたらバカクソカッコイイって」
数秒の静寂、クラスメイト二人は笑い始める。
「真面目な顔して何言うかと思ったら!」
「いい熱持ってんじゃねぇか和也!」
彼もまたしっかりと
名前:渡辺 和也(わたなべ かずや)
所属:呪術高専東京校 三年生 一級呪術師
術式:抜透術(ばっとうじゅつ)
鞘から抜いている間、刀身は全ての物をすり抜け、納めた時に納めるまでに斬った物を同時に切断する術式。渡辺くんはこれに加えて納刀までの時間を制限する縛りをして威力を上げている。
性格:優しい。後輩に慕われてる。任務に行くと必ずお土産を買ってきてくれる。
秤と星が停学になった際は一緒に行こうかと思ったが、高専で人助けする二人が大好きなので、いつでも帰ってこれる居場所を作ろうと高専に残っている。