俺の妄想術式短編集   作:大徳寺 一

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蟲毒って呪術として有名だけど呪術廻戦には出なかったよねって思って書いた。


私達しか知らない呪霊の味

呪霊高専東京校1年生の教室で、白髪のグラサンをかけた生徒が深くため息をする。

 

「はぁ~面倒くせぇな」

「どうしたんだい悟?」

「今度の交流会だよ。数合わせで参加しなきゃだろ」

 

東京・京都姉妹校交流会。東京校と京都校の学生同士で競い合う恒例行事で、2日間の戦いの中で仲間を知り己を知ることを目的とした呪術合戦。

基本的に2、3年生がメインのイベントだが、数合わせで五条と夏油も参加する事になった。

 

「そうだったね。まぁ私は少し楽しみだけど」

「なんで?」

「京都校に私と似た術式の術師がいるらしいんだ」

「ふ〜ん...どうせ雑魚でしょ。だって俺ら最強だし」

 

▽▽▽

 

交流会一日目。種目は区画内に放たれた15匹の呪霊を多く祓った方が勝ちの団体戦。

夏油と五条は二人で呪霊を祓っていた。

 

「これで4匹目。もう俺達だけでよくない?」

「悟、油断はよくないよ」

「そうそう足元掬われるよ」

「「は?」」

 

夏油に答えた知らない声。振り向くと夏油に拳が放たれ、そのまま夏油は吹き飛ばされた。

吹き飛ばされた夏油に気を取られて反応が遅れる。五条が術式を発動する前に拳を放った相手はそのまま夏油の方へ向かった。

 

「傑!」

「大丈夫だ悟!私のことはいいから呪霊の方を頼む!」

「分かった!負けんなよ!」

 

走り去る五条を見送り、視線を下げる。拳をくらう直前に防御のために出した呪霊が塵となった。自身が持つ呪霊の中でも防御力が高い呪霊が一撃で祓われた。もしも間に合わなかったらと思うとゾッとする。

 

「いや〜反応速いね。君って呪霊操術の夏油くんだよね」

「ええ。あなたは工藤累(くどう るい)さんですよね?蟲毒操術の」

「そう会ってみたかったんだよね。呪霊を操る者同士さ」

 

穏やかに笑うその姿は、とても数秒前に殴り飛ばしてきた相手とは思えない。

それ以上に夏油は気になる事があった。

 

(なんて呪力量だ。これほどの呪力なら隠していたとしても私と悟なら気付けたはず、何故気付けなかった?)

 

考えていることが分かったのか工藤は口を開いた。

 

「僕の呪力が気になるようだから教えてあげる。この呪力は僕のじゃないんだ。本来はこう」

 

そう言うとさっきまで迸っていた呪力が消え、弱々しい呪力が体に纏っていた。

 

「僕の呪力量はこれだけなんだよね。だから呪力ないぐらいまで隠せるんだ〜」

 

工藤は恥ずかしそうに頬を掻きながらそう言った。確かにこれぐらいの呪力量なら隠す事を徹底していたら気付けないかもしれない。そうなると一つ疑問が増える。

 

「じゃあさっきの呪力は何なんだ?って話になるよね。この呪力は僕が飼ってる子の呪力だよ。僕の術式は飼ってる呪霊の呪力使えるんだ」

 

(なるほど...私の術式の逆か)

 

呪霊操術は呪霊を複数操れるかわりに、取り込んだ時点で呪霊の成長は止まる。だが術師の呪力を呪霊に与えることで強化することができる。

蟲毒操術は自らを入れ物とし呪霊を取り込み共食いをさせ、呪霊を強化し操るというもの。言わば、一匹しか操れないかわりに呪霊を成長させることができる呪霊操術。

呪霊が成長すれば自身も成長できるということ。

タネは分かった。それによりまた一つ疑問が生まれる。

 

「それ呪霊を出してる間もできるんですか?」

「出させてみなよ。できるものならね」

 

夏油はイカ型の呪霊を弾丸の様に飛ばす。工藤はそれを手のひらで受けると呪霊が形状が変わり球体になる。それを工藤はパクリと一口に飲み込んだ。

 

「...あっ!ごめん!食べちゃった!夏油くんの呪霊なのに!」

「お気になさらず、沢山いるので」

 

(呪霊操術のようにある程度の呪霊なら調伏無しで強制的に取り込む事ができるのか。なら弱い呪霊を出すのは良くないな...なら!)

 

夏油の背後から白い龍が現れ突撃していく。目の前の龍を警戒するが、地面から呪力を感じ取り後ろに飛び退く。いた地面からワーム型の呪霊が飛び出す。

 

「流石ですね。まだまだ行きますよ」

「一年生なのに強い呪霊持ちすぎじゃない!?」

 

そんな事を言いながらも呪霊の攻撃を捌いている。余裕はあるようなので夏油は一匹追加する。

流石に等級の高い呪霊を複数相手にするのは厳しかったのか工藤の体勢が崩れる。

夏油はその隙を見逃さない。呪霊達に同時に襲い掛かるように指示を出すがその攻撃が当たる事はなかった。

 

「あっぶな~」

 

工藤は胸をなでおろす。巨大な鎧武者の呪霊が襲ってきた呪霊達を押さえつけていた。

だが夏油が狙っていたのはこの瞬間であった。

 

(やはり呪霊を出している間は呪力は元に戻る!この呪力量な低級呪霊でも!)

 

夏油は工藤の背後に回り、呪霊を弾丸のように放とうとするが目の前から消える。

消えた事に反応するよりも速く腹に強い衝撃が走る。吹き飛ばされる前に視界に写ったのは自分を殴った工藤の姿と黒く光る稲妻のような呪力だった。

何本か木を薙倒し吹き飛ばされたが夏油は何とか意識は保っていた。

 

「大丈夫?夏油くん?まさか黒閃がでるとは思わなかったよ。僕の術式じゃ難しいんだよ」

 

(呪力がさっきより増えている!?何故!?)

 

「答えは簡単。別の子の呪力だからだよ」

 

夏油は更に混乱した。夏油が知る蟲毒は小さな入れ物の中に大量の生き物を閉じ込めて共食いさせ、最後に残った一匹を呪詛の媒体に用いると言う呪術。蟲毒操術も同じものではないのかと。

 

「蟲毒って付いてるから勘違いしたんだと思うけど、僕の術式は一匹しか操れない訳じゃないよ。例えると呪霊操術はマンション。呪霊一匹ずつに部屋があって他の呪霊と関わらない。僕の術式はワンルームの一軒家。他の呪霊と関わるから相性が悪いと喧嘩しちゃう時もある。けど相性がいいとそんな事は起きずに仲良く共同生活できる訳」

 

目から鱗だった。蟲毒に対する先入観で蟲毒操術もそうだと思い込んでしまった。

 

「まぁ相性が良くても餌の呪霊をあげないと共食いしちゃうんだけどね~」

 

工藤は夏油の方に向き直ってニヤリと笑う。

 

「さて僕は何匹飼ってると思う?俺に切り札使わせてごらん」

 

ゾクリと寒気がする。相手の底が見えない恐怖。

静寂の中、それを破ったのはチャイム音だった。

 

『え~全ての呪霊が祓われました。生徒は集合場所に集まってください』

 

工藤はそれを聞いて肩を落とすと夏油は手を差し伸べる。

 

「終わっちゃったね~立てる?」

「はい、ありがとうございます」

 

夏油は手を取り立ち上がる。すると工藤は何かを思い出したのか「あっ!」と声を上げる。

 

「夏油くん?呪霊ってどんな味?」

 

質問の意図がよく分からなかったが、正直に話す。

 

「吐瀉物を処理した雑巾みたいな味です」

 

工藤の握る手が強くなる。何か間違えたかと夏油は不安になる。

 

「ほんっっっっっと不味いよね!呪霊って!いや~呪霊を取り込む術式の人知らないからさ!『えっ?こんな酷い思いしてる人、僕だけ?』って思ってたの!そしたら次の交流会に呪霊操術の子がいるって聞いて他の人の意見聞けると思って、ずっと楽しみだったんだ~!そうだよね!不味いよね呪霊!取り込む時は心を無にしてるよ!無!」

 

マシンガントークで話すものだから夏油はクスリと笑ってしまう。

そういえば呪霊の味を初めて話した気がする。

なぜだか心が軽くなった気がした。

 

「ええ、取り込む時億劫ですよ」

「ね!そうだ!夏油くん今度ご飯行こ!美味しいお店いっぱい知ってるんだ!」

「ええ是非」

 

▽▽▽

 

居酒屋のカウンターで工藤は目が覚める。

 

「うぅ...あれ?寝てた?」

「おはようございます」

 

塩顔イケメンのモーニングコール。なんで夏油くんがいるんだ?と思い、飲む前のことを思い出す。任務終わりにいい店を見つけたから飲みに行こうと誘ったのに飲みすぎて潰れたのだ。

 

「夏油くんごめんね~俺が誘ったのに~」

「いえいえ、幸せそうに寝てましたから」

「そう?よしっ!眠気覚ましにビール一杯!」

「はい水」

「わ〜ん!女将が冷たいよ〜!夏油く~ん!」

 

そう言いながらチビチビと水を飲む。女将は夏油の方に向く。

 

「夏油くんはこんな風になっちゃ駄目よ」

「なんてこと言うの!」

「ええ、そこら辺は注意しているので」

「夏油くん!?」

 

しょんぼりと椅子の上で体育座りをしている。

少し意地悪しすぎたかと思い謝ろうと声をかけようとすると工藤は顔を上げこちらを向いた。

 

「夏油くんって高専の先生やってるでしょ!」

「ええ、そうですけど」

「合わせて欲しいんだよね宿儺の器くん」

「...どうしてです?」

 

宿儺の器。虎杖悠仁のことだ。宿儺の指を取り込んでも死なない耐性持ちながら宿儺の意思をも抑え込む事ができる逸材。呪術規定により死刑を求刑されたが、五条悟の計らいによって死刑は保留にされている。だが上層部はすぐにでも虎杖を処刑したいだろう。そんな彼に何故会いたいのか?

 

「聞きたいんだよね。宿儺の指ってどんな味だったか」

「は?」

「やっぱ、不味いのかな〜?宿儺レベルだとどんだけ不味いんだろう?」

「ぷっ、アハハハッ!!!」

「夏油くん?」

 

そうだ。この人はこういう人だ。

 

「すいません。今度会わせあげますよ」

「本当!ありがとう!なんて名前?」

「虎杖悠仁くんです」

「虎杖くんか~どんな子?」

「良い子ですよ。後先輩に少し似てます」

「へぇ~どんな所が?」

「明るい所とか、素直な所とか、後...」

「後?」

「いえ、何でもありません」

「何だよ!聞かせろよ~!」

「それより美々子と菜々子は元気ですか?」

「元気だよ~有り余ってる」

「それは良かった」

 

本当にそっくりだ。真っ直ぐで人懐っこくて”人誑し”

この光にどれだけの術師が救われただろうか。

先輩と向かった村で保護した双子も真っ直ぐ育った。

だからこそ虎杖くんを紹介したくないと思ってしまう。

私達しか知らない呪霊の味に誰かが加わって欲しくない。

この呪いを私はずっと隠していくだろう。




なんかドロドロになっちゃった。

キャラ紹介

名前:工藤 累(くどう るい)

階級:特級呪術師

術式:蟲毒操術(こどくそうじゅつ)
自身を入れ物として呪霊を複数取り込み共食いさせて呪霊を強化し操る。
別に共食いは強制されるものではなく、呪霊同士が共食いしなければ複数操れる。
ただ、定期的に餌として呪霊は取り込まないといけない。しないと共食いを始めてしまう。

性格:犬っぽい。すぐ人と仲良くなれる。任務の時は必ず任務が一緒になった術師や補助監督とご飯を食べる。夏油の事はかわいい後輩だと思っているが『呪術師に向いてる性格じゃないな~』と思っている。心配だから定期的にご飯に誘って話を聞いている。
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