流星たちのヒーローアカデミア 作:ハルカンドラの呪物
自由に走り回りたい。色んな場所を見てみたい。
富士山の頂上に親に連れて来られて、そこで初日の出を見たとき思ったことだった。
それから僕は外へよく自ら出かけることが増えた。母さんはそのことに心配していたが父さんが一緒にいてくれたから問題ないと思っていた。
「ぱぱ!はやくはやく!」
「はーい、元気だねぇ
父の手を引っ張り、色んな場所を見る。窓ガラスに反射してみれる鳩の群れ、目に優しく染みる並木道、ドーナツの形をした雲、木を一生懸命登って自分の頭に落ちてくる毛虫。そしてヴィランを圧倒するヒーロー。どの景色も華やかで良い情景だった。
「そういえば翔はヒーローは好きかい?」
「…そんなにかな?」
「そうか?」
「つぎこっち!こっち!」
「あーほら危ないってば!」
早く次の景色へ。父さんの手を引き剥がして、横断歩道を渡ろうとしたとき…
キキイイィィーー!!
僕の目の前に大型トラックが迫っていた。
目が覚めたとき僕がいた場所は病院だった。目が覚めて早々に、父さんと母さんが涙を流して僕に抱きしめてくれた。
「良かった…本当に良がった…」
「ごめんな翔ゥ…父さんが悪かったァ…」
僕の無事に歓喜する両親に、僕はすぐに思ったことを言った。
「ねぇ」
「…どうしたの?」
「足の感覚がないんだ。」
僕がそう言ったとき、まるで部屋が凍りついた感覚がした。固まっていた両親がお互いに顔を見合わせてコクリと頷くと、お医者さんを連れてきた。
「さて坊や、今から君に伝えることは…その、君にとってとても悲しいことなんだ。そしてそれに対して、何をやっても、何を言っても、もうどうしようもないことなんだ。だから…だから、どうか落ち着いて聞いてほしい。いいね?」
「…うん?」
「…じゃあ言おう。
君の足はもうどこにもない。もう自力で歩くのは無理なんだ。」
♢
お医者さんにそう言われてから、2年が経過していた。だがその2年は僕にとっては永遠と言える年月だった。まるで時が止まっているかのようだった。
車椅子での生活を余儀なくされた。父さんか母さんに押してもらえなかければ、満足に移動することができなかった。そんな状態でも景色を見ることができた。けどそれが嬉しいかと言われると…
公園で鬼ごっこをする子供たち。キレイな海の波に乗るサーファー。空を自由に飛ぶ鳩、蛙、蝉、蝶、そして流れ星。
「…みんな、みんなの思うようにあるいている。あるいているのに…」
「…翔?」
「なんで…なんでぼくだけがうごけないの?」
「!!……ごめん、ごめんなァ、翔ゥ!!」
大粒の涙を溢しても、僕の足は帰ってこない。分かっているはずなのに、涙は止まる気配がしなかった。
♢
時々、夢を見ることがある。大量の流れ星が落ちてくる夢だ。それぞれが独特な形と色をしていて個性的だった。一体どこから、あんなたくさん流れてくるのだろうと思った。
それを見ているうちに、あれになってみたいと思って手を伸ばした。けど届くわけがない。もう歩けない自分には不可能だと思っていた。
『………!?』
だが何度目かも分からないその夢で、僕は遥か空高くから落下していた。一体何がと思ったそのとき、視線の先に流れ星が落ちていくのが見えた。それは光を帯びておらず、まるで昏睡しているような状態だった。そんな流れ星を見て、僕は叫んだ。
『危ない!起きて!』
流れ星からの応答はなかった。僕はその星を助けようと必死に身体を動かした。軌道が合わなかったり、掴みかけたりを繰り返し、ついにその星に乗ることに成功する。
『お願い!動いて!動いてよ!』
そう訴えるが、依然沈黙を続ける流れ星。叩いて起きないか試そうとして手を滑らせ、遠ざかってしまう。
離れてしまう
死んでしまう
嫌だ
まだだ
『まだ諦めるもんか!!』
決死の思いで身体を動かして、また流れ星に乗った。
『動いて!動いて!動いて!』
動いてよ。動いて、僕と一緒に…
『僕と一緒に
《____!!》
その瞬間、甲高い声のような音とともに灯火の如く星が輝いた。エンジンのような物が生え、轟音をあげて高速で突き進む。向かう先は、一筋の白い光…
「………はっ!」
そこで目が覚めた。周りを見渡しても、いつもの僕の部屋なのは変わらなかった。
部屋の中央で浮かんでいる星を除いては。
「君は!さっきの_っうわ!?」
本物かと間近で見ようと体勢を崩してしまいベッドから落ちそうになるが、すぐにその星が全身でキャッチしてくれる。
「た、たすかった〜…ありがとう!きみのなまえはなに?」
そう問いかけてるが、声を出すことはない。だがその星から意思が伝わってきた。
「ええと、『ワープスター』…って言うの?」
その通り、という意思とともに横に一回転。続けて意思が流れてくる。
「…え?さっきのお礼がしたいって?窓を開けて…?」
何をしたいのか分からなかったが、言われた通りに窓を開けると、ワープスターから何か溜め込んでいるような音がし始めた
「え、ちょっと待っ_」
僕の制止も虚しく、僕とワープスターは外へと飛び出した。
「うわああぁぁーー?!!」
物すごい速度で振り落とされそうになるも、目を瞑って必死に踏ん張る。一体いつまで続くのか、と思った瞬間、体に掛かっていた圧力が小さくなっていくのを感じた。
_目を開けて。
ワープスターがそう言ったので恐る恐る目を開く。
「……!!」
目の前に広がっていたのは、雲より高い空から見えている大地だった。あんなに大きいかった建物は豆粒のように、川の流れも全体が見通すことができた。そんな情景を見ていると、横を鳥が通り過ぎていく。
「わぁ……!」
あの事故の前より壮大な景色に、荒んでいた僕は感動した。歓喜の涙が溢れ、でもまだ景色をみたいと手で涙を拭き取って見続ける。
「…ありがとう、ワープスター!またぼくに、こんなきれいな景色をみさせてくれて、ほんとうにほんとうにありがとう!!」
どういたしまして、とワープスターが伝えてきた。
そのとき僕らの下で桜の花びらが、空高く舞い上がっていたらしい。
「翔おはよ…何処へ?!」
「待って窓なんで開いているんだ!?」
「まさか身投げして…は、早く下にゲボァ!!」
「ふくら!?気をしっかり保って!ふくらあぁ〜!!」
投稿は遅いですが頑張ります。