すんません。
一輪のお酒を眺めながら、こんなものの何が良いのかを考える。一度飲んでみた。そりゃあ何事も、体験せずに否定するのはね。結果、わからなかったけど。私はこの酒を飲んでも酔わなかったし、何も忘れなかった…と思う。記憶が飛んだわけでもない。だから多分大丈夫だ。まあ一輪に私が飲んでるところを見つけられたら仲間だとか思って一緒に飲もうと言ってくるだろうね。樽だから関係ないかもだけど。見つからなければ良い話だからね、仕方ない仕方ない。
「お酒、飲んだよね」
「バレてたか」
「清白もお酒に興味があるなんてなぁ〜、私は嬉しいよ」
「もしかして酔ってる?」
「少し」
そう言いながら寺の中を歩く。…さて、どうしよう。聖に告げ口をしたいのだけれども、今この場に聖はいない。さらに言えば、星もいない。なんなら多分私と一輪しかいないんじゃないかな。え、それやばくね。私はとても困った。が、どうしようもない。あ、でも響子はいた。…まあ、門前を動くつもりはなさそうだけど。一輪は私に絡み続ける。最近お酒を飲む頻度が増えた気がしてならない。一体何故かは私もわからないし、多分聞いたら面倒くさそうだ。やめておこう。
「いやね?一人でさ、呑むのも良いんだけど…ほら、たまには寂しいし。」
「だからってお寺で呑むの?」
「呑む!…まあ、一杯だけ。姐さんも最近は一杯までなら許してくれるし」
「その大きさを一杯で済ますの?」
「えっへへ」
一瓶のうち半分は入りそうな大きさを一杯で済ますのか。一輪の一口も大きいに違いない。…聖は多分、一口までと言うのが正解だったんだろう。私は小さいコップ一つで終わる。作り物が酔うのか少し疑問な部分もあるけど、まあなんとかなるんでしょ。今までの経験から私知ってるよ。こう言う起こるかどうかわからない事柄は大半考える必要がないこと。と言うわけで一気に口に放り込んで後は一輪の話を聞くだけ。昔話をふんふん言って聞き流す。残念だけど私にはよくわからない話だから。
「…あの太子とか言うやつも、絶対姐さんを封印するために来たのよ」
「どうして?」
「姐さんがいるとあいつの活動が上手くいかないから。選択肢が二つ、何も取らないを取るか、選びたくない物を取るかだったら後者を選ぶ人間が多いから。」
「よくわかんない」
「清白は分からなくていいよ。ただ、あの太子とか言うやつは私たちのことをよく思ってないと思う」
「妖怪だからかぁ」
物部布都も、妖怪が営む寺なんぞと言っていた。太子とやらの目は明らかに私達を良く思っていない目だった。一輪は布教活動でたまに会うらしいが、その時も大して変わらないらしい。態度は一貫、良いことだとは思う。アレも元人間らしいので、そう言うところが…一輪と聖も元人間だった。危ない。平安とかそこら辺は妖怪が猛威を振るっていたような時代だろう。それなら嫌っていてもおかしくはないと…思う。民を率いる地位にいたとかであるならば、むしろそうなっていなければおかしい。率いる民はもういないけどね。
「…今度は絶対、阻止してやる」
「物騒だね」
「少なくともあの布都とか言うやつ。アレは封印についてとやかく言う」
「私はされても良いけどね」
「なんで!?」
「一人じゃないし」
「…まあ、そうだけど…」
「あ、でも狭いのは嫌かも」
沈黙が少し。その後に少しの笑い。よかった、笑ってくれた。アルコール濃度なんかは知らないけど、アレだけのお酒を呑んだのだから当然寝た。聖のつけた制限はやっぱり間違いだ。一口に限定すべきだった。口を大きくして来る?縫い直して終わりね。どこかで聖に進言しておこうかな。寝ている一輪を眺めていたら、響子が門前の掃き掃除が終わったと叫んできた。その声量なら部屋のそばまで来なくても聞こえたよ。響子にご褒美としてのおやつ。…妖怪なのに人を食わなくて良いなんて、便利な妖怪。
「山彦は人間を食べません!」
「あれ、声量ちっちゃ」
「最近できるようになりました!」
「…じゃあなんで部屋の前であんなに大きかったの?」
「寝てるの見えたから!!」
なるほど私も寝ていると思われたのか。失礼な、私にお酒で眠る機能はない。と言うか酔うのかも疑わしい。まあそんなことは放っておき、お酒で寝てしまった一輪を布団にしまいに行く。まだギリギリ私の方が力があるのかな。響子のムキムキ化を阻止せねば…まあ、ムキムキになっても良いんだけどね、別に。私は私で魔力があればいつでも強くなれるし。多分。多分だからね。制作者がいるわけでもないし。…まあ、私の感覚の話なので間違っているかも知れない。間違ってないことを祈ります。
「どうしました!」
「一輪に掴まれた!!」
「…そう」
「ちょ、響子!?助けて!?」
「私は一輪より力ないもん!」
「ん〜…」
「離せ酔っ払い!あっ、響子!?」
拘束された。もう私も寝てやろうかな。うたた寝くらいなら今でもできると思う。私だってまだ…いや、無理だこれ。体勢がきつい。きついので離して。私が壊れる。…雲山も助ける気はなさそうで、と言うか雲山も酔っ払ってる?もしかしてそこが同期されるの?変なの。いや、変なのは今の私か。これは流石に聖か星を待つほかない。私も酒に酔うことが出来れば少し楽だったと思うんだけどね。残念ながらそんなこともなく。制作者様がいらしたら、是非とも取扱説明書を置いてもらいたい。使用用途も添えてね。
「…あれ、もしかして私、清白とやった?」
「何を?」
「…じゃあ違うか。気にしないで。」
「ところでいつ離してくれるの」
「ん〜…誰かが起こしに来るまで?」
夕飯まで離してくれなかった。そんな話。