魔界出身の子   作:覚め

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何も手に持ってはいけないのに、手に何か持たないと寂しい。その間を彷徨うあなたへ。
うんち。
手がない私より。


正体不明のあの子

星の錯乱から数日。なんか知らないうちにぬえって子が現れた。いつのまにかいた。どうやら命蓮寺に入りたかったらしい。村紗と友達なんだって。…ところで、地底って何。わかんないな…。私には関係のない話として処理出来るけど、色々と知識欲がある。…そのくせ魔法は扱えないけどね。そして星の錯乱で気付いたことがある。多分だけど私は脆い。顔面どころじゃなくて、全身が。あの後風呂に入るときに尻が少し欠けていた。どうやら組み敷かれた時に欠けたらしい。…脆い。

 

「どうしてこんなにも脆いのか」

 

「私達から聖を奪ったからでは?」

 

「奪ってないし知り合ったのほんと最近だからね。多く見積もっても一ヶ月。」

 

「長く生きている者ほど感覚は信用できませんから」

 

あと、なんか星が馴れ馴れしくなった。訳がわからないな。あと私はここ10年以内に生まれたはずだからね。1000歳超えてそうなみんなと同じにしないで。全く困ったものである。というかさっきからめっちゃ話しかけてくるけど本当に何?どんな心境でそんなに喋るの?訳がわからないよ。今聖はどこにいるのかな。今のこの状況を見てもらいたい。聖の前だと全然話しかけて来ないんだもん。事情を知ってる一輪もこちらを見てギョッとしている。私も多分、同じ立場ならそうする。

 

「あれ、珍しい」

 

「ぬえ、どうしました?」

 

「いや…二人が話してるところなんてあんまり見たことないし」

 

「そうですかね」

 

「ま、実際私と星はそこまで話さないし」

 

「どっちなの?」

 

「…好きな方?」

 

そう言うと、星はさっさと立ち上がって道場に籠ると言い出した。私も鍛錬しないとなぁ、なんて思いながら見送る。ぬえに背中を小突かれる。…今度はなんだろうか。背中が欠けた時は鏡を見ないと分からないからやめてほしい。が、注意するには遅かったようだ。私の破片が地面にパラパラと落ちていた。ぬえと顔を合わせる。目を逸らされたので深くため息を吐く。ぬえ、そんなんだから命蓮寺の中で浮くんだよ。私?私はわかんない。浮いてるのかな。浮いてたら…まあ…新参者だからかな。

 

「いや、ほら、正体不明にすればさ!バレないから!」

 

「その周辺も欠けやすくなるからくっ付けないと。」

 

「うぅ…」

 

「くっつけるくらいはなんとかなるでしょ」

 

そんなことを言って気まずそうなぬえに破片を拾わせる。でも背中で良かった。コレが耳とかだったらもう目も当てられない。肩なら最悪。くっ付ける方法を間違えれば、聖が帰ってくるまで動けないから。尻が欠けた時はもう…全然前に進めなくて。尻ってなんであんな変なんだ。動くたびに違和感があった。聖がいたから良いものの。背中の欠けた部分をくっつけ、ぬえに用件を尋ねる。どうやら一輪から私の話を聞いたらしい。そして私がなんなのか知りたくなったらしい。何言ってんだ…?

 

「私より正体不明なんて許せないってだけ」

 

「ふぅん…尻と股はやめてね」

 

「やらないよ…私のことをなんだと思ってるの?」

 

「正体不明」

 

「正解」

 

正体不明なものを正体不明と名付けた時点で、ジャンルが出来たのだからもはや正体不明ではないと思う。…まあ、そんな難しいこと言っても仕方ない。私も自分が何言ってるか分からない。もう良いや。ぬえに体をじっくりと見られる。能力?周りの魔力を吸う。出来ること?…低空飛行と魔力の放出。…なんでそんなにぬえは頭を抱えるんだ。変なこと言ったかな、私。まあ良いか。ぬえと互いに睨めっこをしていたところ、横から一輪登場。私とぬえの二人と同じくらいの距離を取って、睨んできた。

 

「え、そう言うゲームじゃないの?」

 

「違うと思う」

 

「大体一輪が言ったことでしょ!?」

 

「何が!?」

 

「こいつのこと!」

 

「清白のこと?…あー、村紗がろくろ首じゃないかって」

 

「はぁ!?」

 

「そもそも妖怪じゃないけどね」

 

私の主張も虚しく、何故かそのまま私の首が外れるかどうかの議論になった。二人の目がこちらを見る。否応なしに私は逃げ出した。いや、流石に首が千切れたら死ぬ気がする。雲山とかが引っ張ったらまず間違いなく取れる。そもそもが脆いのに、あんな太い腕で取ろうとされては死ぬ以外がない。ふざけるなよ、あまり私を可哀想にするな。というか、生きていたとしても直るのには聖が必要だからね。大体、そんな大怪我ここの魔力量で補える訳ないでしょ。魔界の何分の一なの。ここ薄いよ。

 

「疲れたぁ」

 

「や。」

 

「お、ネズミの人。」

 

「…名前、言わなかったかな」

 

「多分忘れた」

 

「…はぁ。私はナズーリン、命蓮寺にいる毘沙門天代理の監視役だ」

 

「あいつ精神安定してないからすぐ監視に行け」

 

「清白こそだろう」

 

あっはっはっ。そんなことより一輪とぬえが私の頭剥ぎ取ろうとして来るんだけどどうすれば良いのか聞いてみた。星曰く、部下は優秀らしい。だから聞いたんだけど、帰ってきたのは『君が悪いだろうから謝れば?』だった。もうナズーリンなんて嫌い。星に顔面殴られて欠けた話は知ってるかな。知らない?ならば教えよう。何故か私が星に組み敷かれて殴られた話を……いや、今の言葉でぜんぶ話したかな。とにかく、脆い体だから危ないんだよ。私をろくろ首だと言い張る一輪とぬえを止めてくれ。

 

「何故ろくろ首と呼ばれてるのかは分かっているのかな」

 

「…まずろくろ首って何?」

 

「えっ」

 

「妖怪なんだよね。多分。…私は妖怪じゃないのにね」

 

「えっ?」




それぞれの推測
一輪→顔面壊されても平気な顔してるから丈夫、または再生力のある妖怪だと思ってる
ぬえ→魔界の生物なので、魔物とかそう言う感じかなと思っている
村紗→ろくろ首だと思っている
星→魔界にいる得体の知れない生き物だと思っている
聖→妖怪と同じような存在だと思ってる。
ナズーリン→聖のように封印された妖怪だと思っていた
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