魔界出身の子   作:覚め

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お前だって作られたんだろ?このゴミ山でよぉ。


不在

「聖、他のみんなは?」

 

「いませんね」

 

どうやらみんなそれぞれが用事を抱えていたようだ。星は毘沙門天に挨拶、村紗は湖に行って、一輪は人里に行ったらしい。お酒かな。お酒かも。ぬえは元から放浪癖があるし。そう言ったわけで命蓮寺は今のところ私と聖だけのようだ。…聖と背中合わせに座る。魔力の巡りが良くなるのを感じる。やっぱり聖のそばは落ち着く。魔力ってすげえな、魔界の環境がありがたすぎた。もしや私は魔界でなければ再生出来ないから、魔界以外では生きてられないと言われたのかもしれない。怪我しないのが一番では?

 

「今は写経中ですから、あまり騒がないように。」

 

「はーい」

 

「…ところで、清白は魔界に友人はいましたか?」

 

「いないよ。あそこは言葉が通じる方が珍しいから」

 

「…作り物、なんですよね?」

 

「一応」

 

「誰に作られたとかは覚えてないのですか?」

 

写経しながらよくもまあそこまで喋れるなぁ。私には多分無理だ。それにしても、魔界での出来事ね。覚えてないかな。でも私は魔界以外で生きて行けないとか水に浸ったら死ぬとか、そういうのは覚えてるんだよな。誰に言われたんだろ。作った人かな…それとも自分の取り扱い説明書でも読んだのかな。だめだ、本当にわからない。私ってどうして私のこと知ってるんだろう。遺伝子?それとも据え置き?OSなのかな?備え付けの家具と同じ感覚で覚えてるのかな。

 

「私の知る限りで言えば、あなたはゴーレムに近いです」

 

「ゴーレム?」

 

「魔法で作られた生き物です。魔力を動力源とし、与えられた命令をこなす、魔法使いにとっての式神のようなものです」

 

「…後半知らないけど、魔力を動力源とするのは私だ」

 

「主人のいないあなたは、従う命令がないのでは?」

 

「確かに」

 

適当に納得する。すると、聖から私に流れてくる魔力量が増えた。…あれ、大丈夫かなこれ。写経で失敗したとかないよね。…まあ、失敗したら南無南無ってね。冗談にすらならないけど。流れる魔力量が増えたからと言って私に変わりはない。怪我した時の治りが早くなるくらい。でも逆に言えばそれしかないし、微弱な魔力量でも時間さえあれば治るので、本当に意味がない。…あれ、じゃあ私はなんで動けてるんだ?魔力がないと動けないんだよね?…あれ、自己矛盾ってやつ?

 

「清白、こちらを」

 

「何これ」

 

「服です。」

 

「そうじゃなくて、なんの服?」

 

「僧侶服ですね。人里で頼んだものが出来たので。」

 

「…?」

 

サイズとか、そういうのいつ測ったんだろうね。…あんまり気にしない方がいいか。ゆったりめに作ったとかありそうだし。自室で着替えてから聖にお披露目すると、パチパチと拍手。一人相手のファッションショーは悲しいからすぐに辞めた。しかし、この服を頼んでいたのはどうしてなのかな。私を人里に連れて行くつもりなんて最初からなかっただろうに。…もしかして、信者がここまで来たりするのかな。その時はこの服装をしてれば良いのかな?…というか人間がここまで来れるの?

 

「格好だけですよ」

 

「なんだ」

 

「それはそうと、どこかで人里の布教に参加はしてもらいますが。」

 

「だろうね」

 

「大切な清白に危険が及ばない様、所属していることを分かりやすくする為のものでもあります」

 

「私、大切なんだ」

 

なんだか知らないけど、私は大切らしい。良かった、これで大切じゃなかったら怖かった。星もそう思ってるかは知らないけど、錯乱から落ち着いて来たし、私が聖を獲ったとかいう妄言も終わったんだろうね。心配要素は何一つとしてない。なんて考えていたら一輪が帰って来た。一輪に僧侶姿をお披露目したところ、驚いた声と共にパリンと何かが割れる音。駆けつける聖、汗をダラダラと流し顔も青く白く染まっていく一輪。割れた音と共に地面に広がる液体。やっぱりお酒だった。

 

「い、いや!ですね?あの、ほら僧侶服!僧侶服が出来て、清白もいよいよ本格的に命蓮寺の仲間だと思ったから、その、祝い酒を、と…ね、姐さん…?」

 

「そのお酒はいつ買いましたか?」

 

「きょ、今日!今日ですよ!」

 

「私の祝い酒だぁ」

 

「清白、水がダメならお酒はもっとダメでしょう?」

 

「えっそうなの」

 

「水分と共に蒸発するから乾燥して欠けやすくなるわ。ヒビが走るかも。」

 

「姐さん詳しいね」

 

「一輪は黙っててください」

 

お酒を飲んだ一輪は折檻された。私は床に落ちた酒瓶の破片と液体の片付け。お客さんが来ないにしても、玄関口がこんなふうに汚れてはダメだからね。破片がとても大きい。細かいのがないか確認してからぶちまけられた酒を拭う。…なんか匂いが異様に強いな。なんだろう…魔界でも少し嗅いだ気がする。まあ気のせいだろう。酒を拭って水を撒いて蒸発を待つ。…僧侶服を手に入れて初の仕事が、床に広がった酒の片付けだなんて。私は少し不幸だ。後で一輪に言ってやろう。

 

「これ歩きづらい!」

 

「慣れてください」

 

「私も姉さんの折檻にようやく慣れて来たからね。慣れは大事だよ清白」

 

「次は変えてみますか」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「お酒を呑む一輪が悪いのよ。大体祝い酒って…」

 

「良いじゃないですかお酒!」

 

「以前の一輪は戒律を破る様な子ではなかったのですがねぇ」

 

「隠れて破ってただけじゃない?」

 

「なるほど」

 

「破ってません!」




一輪の戒律関係の設定
聖が封印されるまでは戒律を破ったことのない良い子。聖が封印されて地底に閉じ込められた時からはお酒で紛らわそうとしてアル中に。流石にまずいと星達に止められて今現在。地底の頃よりは格段に良くなってるし、酒も抜けて来てる。
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