クラス内投票が発表された翌日。
私、櫛田桔梗はあいつ曰くお禿様に会うために綾小路君と二人でお昼休みのAクラスへと訪れていた。
そしてお禿様を相手にとある取引を持ち掛ける。
「あいつがクラスには不要な人は消えてもらった方がいいっていうけど、私は友達を誰も見捨てたくないの。干支試験でのポイントも集めたけど救済するには1000万ポイントがどうしても足りないの。だからどうか私たちにポイントを貸してください」
「俺からも頼む。あいつに退学にさせられるとしたら、おそらく櫛田と仲良くしている俺だからな」
お禿様は、現状かろうじてAクラスのリーダーである。だが未だちっこいのの派閥を突き崩すことはできていない。なのでお金を出すとしたら自分の派閥の分から出すことになり、1000万貸し出すとかなり苦しい状態になる。だからこそ、心情は察するがと言いつつ、苦しそうな顔をして考え込んでいる。
そこに「では私の派閥から出しましょう」とちっこいのが話に割って入ってきた。
『坂柳有栖は櫛田桔梗に1000万ポイントを貸す。9月のポイント支給日に坂柳有栖へと1000万ポイントを返済する。出来ない場合は櫛田桔梗は自主退学する。返済するまでは櫛田桔梗は各特別試験毎に坂柳有栖の要求を一つ実行する』
実にシンプルな契約だ。
どこにも悪意や解釈の違いを紛れ込ませない為に必要最小限の契約内容になった。
「リーダーの櫛田さんを抑えることができました。これで綾小路君と存分にワルツを楽しめますね」
ちっこいのは自分の思惑通りにいったと上機嫌だ。
綾小路君はいつもの無表情顔であんな条件を受け入れて良かったのかと言ってくるが、大丈夫。彼女はどうせもう何もできないのだから。
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すこし時は巻き戻り…。
"一之瀬帆波は犯罪者だ"
そんな噂が流れてからおっぱいピンクが引きこもって出勤(売り子)しなくなった。
そのせいで売り上げがガクッと減った。
特に毎日朝昼晩の3食を欠かさず買っていたおっぱいピンククラスの信者どもがパタリと来なくなった。
38人(信者じゃないやつもいるらしい)の3食分の売り上げ1日あたり45600ポイントが丸々なくなったわけだ。
他のクラスのおっぱい星人どもの売り上げもなくなったしそれらを合わせると1日20万ポイントの売り上げ減少だ。
腹黒天使と急遽助っ人で用意した同じクラスのおっぱい地味眼鏡のおかげでなんとか壊滅的なダメージは防いでいるがそれでもいつまでもつか。
おっぱい地味眼鏡については確か夏前の早朝だったか。まだ夜も明けきっていないというのに寮の裏手でキモイ男と乳繰り合っていて、これからこっちは出勤だっていうのに幸せそうなのが気に食わなかったので男の剥きだしになった股間を力の限り蹴り上げてやったんだ。
その後から何故か彼女に慕われるようになって、おにぎり作るの手伝ってくれている。
せっかく可愛いんだから売り子もしてくれと言ったんだが真っ赤になって無理無理言われて普段から想像もつかないような速さで逃げられた。そんなに俺に可愛いとか言われるのキモくて無理ですか。産まれてきてすいません。
それが今回は腹黒天使と二人で在庫の山に呆然としていたところに現れて眼鏡をはずし芋くさい髪を下ろし、グラドルスタイルに変えて売り子してくれたんだ。在庫? 一瞬でなくなったわ。
だがこれも所詮一過性のブームにすぎない。それだけおっぱいピンククラスの固定客という需要は大きいのだ。
腹黒天使におっぱいピンクの噂のことを聞いて、そういえば原作でそんな事件あったな、とようやく思い出す。
特に興味もなかったし忘れてたわ。
たかが万引きでしかも立件もされていないんだろ。なんでその程度でダメージを受けるのか理解できん。
これが万引きを見とがめた店員を事務所で滅多刺しにしてお金を奪って警察から逃げるためにここに入学したとかならまだ理解できるのだが。
その程度暴露されても、まじでだからどうしたとしか思わんだろう。
そんなことより売り上げだ。
今日で出勤拒否3日目だ。もうこれ以上は我慢できん。
俺はもう我慢ならんと朝の販売を終えた後、寮へと向かった。
寮のおっぱいピンクの部屋前ではおっぱいピンククラスのイケメン面がなにやら説得しているようだが、邪魔だから蹴り飛ばしておく。
そして俺は来る途中に管理人から買った合鍵で彼女の部屋の鍵を開けて問答無用で押し入った。
ベッドの上で体育座りしていた全裸のおっぱいピンクは突然のことに唖然とした顔だ。おまえ、裸族だったのか。
まぁそんなことはどうでもいい。
もう十分休んだだろ。昼から出勤だ。さあ、おにぎり握りに行くぞ。
そう告げて俺は彼女の腕をつかんで立たせようとするが、彼女は狼狽えながら自分は人前に出れるような人間じゃないとごねる。
それがどうした。お前が人前に出られないような人間なら、おれはどうなんだ。日の光を浴びただけで溶け死んでも可笑しくないような妖怪人間だとでもいいたいのか。早く人間の顔になりたい。いやまて、さすがにそこまで酷い顔じゃない・・・と思いたい。とりあえず隣で微妙な顔をしているイケメン面のイケメン面が憎たらしいので殴って部屋から叩き出しておく。
顔じゃなくて? ああ、万引きの件か。何で知ってるかだって? お前みたいな真面目ちゃんができるのなんてそんぐらいだろ。
別に起訴されたわけでもないだろうが。店員にも謝罪して許されているのに何をごねている。罪深い? そもそも馬小屋産まれのCさんが言うには人間は産まれた時からみんな漏れなく罪人だから気にするな。軽蔑? するわけないだろう。俺にはお前が必要なんだ。こんな弱い自分がクラスを率いていくなんてできない?
ああーーー、もうごちゃごちゃうるせーー!!
『お前が迷ったら俺が必ず殴りに来る。だから安心しろ、お前の傍には俺がいる。お前を信じろ!俺が信じるお前を信じろ!!』
カミナの兄貴の言葉を借りた俺の発言に、おっぱいピンクが顔を真っ赤に染めてうなずいた。
俺は顔を赤くしている彼女の手を握り立たせた。
どうせこんな噂を流しているのはあのちっこいのだろう。よく覚えてないけど。本当にやることちっせぇなぁ。あんなのにいいようにやられてていいのか? いいわけないだろ。だから行こうぜ、今からあいつを殴りに。いまからあいつを、これからあいつを、殴りに行こうか。
おっぱいピンクもあのちっこいのに腹が立っているのか顔を真っ赤に染めてうつむいたまま、俺にひっぱられて部屋を出る。
この俺に合鍵代500ポイントも使わせたんだ。これからはずっと俺がこきつかってやるから覚悟しろ。ん? 合鍵はそのまま持っていていい、だって? おまえまた引きこもる気だな。そうはいかん。お前は高育の柱になれ。あんなちゃちな過去なんざ吹き飛ばすようなツイストサーブをきめてやるんだ。そんな力はないって? 馬鹿野郎。押してダメなら押し倒せ。
ちなみに寮を出て校舎まであと少しのところでおっぱいピンクの制服と下着を抱えて走ってきたイケメン面に止められた。そういや全裸だったな。
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公園にいつも通り杖の音を響かせながらちっこいのがあらわれた。
ちっこいのはニヤニヤしながら、おっぱいピンクが無事に復帰できたことについておめでとうとか言ってきやがった。
そして次はあなたの番ですよと、俺の隣で不機嫌そうな顔をしているドラゴンボーイに笑いかける。
俺のことはその後、1年間かけて自主退学したくなるぐらい念入りにすり潰してあげるとか言っているが、あまりできもしないことは言わない方がいい。
ドラゴンボーイはちっこいのに頭だけは良いんだから俺が活用してやるからCクラスに来いと誘いをかけるが、自分より下の人のところに行くなどありえないと返すちっこいの。そして…
「もし、万が一もありえないでしょうが、私の想定を超えて私を倒すことができるのでしたら、あなたがたのクラスに移籍してあげてもいいですよ。無理でしょうけどね」
言質は取った。これでチェックメイトだ。
ムフーと擬音を発しそうな勝ち誇った顔を浮かべながら側近を連れて去っていくちっこいの。あ、神室ちゃん今度デートしてほしいんだけど、え? ダメ? 刺されたくないから勘弁してくれ? どういう意味?
そういえば、とドラゴンボーイって俺には絡んでこないよね? と尋ねると、個人での勝ち抜けしか考えていないような奴に喧嘩を売って何の得があるんだ? そんな無駄なことをするヤツは馬鹿しかいないだろう、としかめっ面で言われた。うむ、全くもってごもっともだ。俺もそう思うよ。じゃあ、その馬鹿には消えて貰おうか。
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そしてクラス投票当日。
いつも通りAクラスの教室に入った坂柳有栖は真嶋先生に告げられた。
「坂柳有栖。君は今日からBクラスへ編入になった。Bクラスの教室に行きなさい」
「へ?」
そしてクラス投票の結果。
「Bクラスの批判票1位は坂柳有栖さんです。退学の手続きがありますので準備をしてね」
「へ?」
「もし2000万ポイントがあれば退学は取り消せますが・・・ないですよね?」
「ふへっ!」
既に坂柳派閥はちっこいのが引き抜かれたことで崩壊し、そもそも腹黒天使に1000万を貸し出していたちっこいのは素寒貧であった。
そして魂が抜けたようなちっこいのが職員室にドナドナされたと、おっぱいピンクから報告を受けた。
あの日の公園での話し合いはドラゴンボーイと俺、そして隠れていたお禿様の腰巾着とイケメン面の4人によって録音及び録画されていた。
そしてクラス内投票の投票日前日にBクラス代表としておっぱいピンクが俺ら4人を引き連れて、よっぱらいとお茶柱からちっこいのをBクラスへと移籍させる権利を2000万ポイントで購入した。本人の同意が必要かどうか不明だったので、AからDの4人で録音及び録画した本人の移籍承諾『あなたがたのクラスに移籍してあげてもいいですよ』という発言を証拠として提出したのだ。
意図を察したよっぱらいやお茶柱は実に快く権利行使を認めてくれた。
これで腹黒天使の借金も貸主であるちっこいのが退学になることで契約消滅だ。原作通り何事もなく退学になった山内は救済する価値はないので借りた金はDクラスと綾小路で分けてくれと言っておいた。
おれの金蔓に手をだしたんだ。退学程度で収めてやるんだからありがたく思ってほしい。
これで心置きなくまた稼げるぞ。残り数日だが今日も頑張って売って売って売りまくろう。
おっぱいピンクとおっぱい地味眼鏡が腹黒天使に負けないからとか言っていたがあいつらなんか勝負でもしてるのか?
時は流れ、腹黒天使、いや、桔梗ちゃんが卒業して1年後、なぜか俺の部屋にはおっぱいピンクとおっぱい地味眼鏡が住み込んでいる。
順調に3人目を孕んで子育てが大変だろうと住み込み家政婦として押し掛けたのだ。そして押し倒されたのだ。おい、子育て手伝いのお前らが孕んでどうするんだよ。桔梗ちゃんには蹴られるし。本当に災難だ。おっぱいピンクに綾小路の事はいいのかと聞いたが、卒業間際になってうちのクラスに編入してきた綾小路君? 彼がどうかしたの? とかキョトンとして言われた。原作フラグどこで折れたんだ? どうでもいいけど、俺と桔梗ちゃんの家なんだから服は着てくれ。
そういえば今年の日本の高額納税者ランキングのトップ5にいきなり現れて話題沸騰の現役高校生“綾小路清隆”って・・・あいつ、原作そっちのけで株ぶん回してるみたいだな。もう学校ごと買い取っちゃえよ。
自分のことでは怒らないけど、他の人のためには怒ってくれる情熱的な人・・・と女性陣には思われています。そんなことはない。主人公は自分のことでしか怒りません。
追記編集
神崎隆二って何故か鬼畜メガネとかそんな感じでメガネかけているイメージがあったんだが公式サイト見たらそんなことはなかったので修正。イケメン面のイケメン面になりました。