エ〇ゲ世界で或る上位存在曰く「叫べ、太陽ォォォ!」 作:糸をなんとかしろ!
作者の理性「普通に考えて百合じゃないですかね……」
狂気「公式的に説明が無いならワンチャン」
理性「彼女の名前的にないです(無慈悲)。アマナとオオアマナは違うんやぞ」
狂気「(´・ω・`)そんなー」
そんなこんなでお待たせしました。
ゆらり、ゆらり、と。
体が揺れている。暗闇の中で揺れている。
ゆっくりと、不規則に揺れている。
ちょっとだけ急な浮遊感も感じる。つま先が時々何かに触れる。
けれども落ちたりはしない。決して落ちやしない。
花の匂いがする、何か細く温かい何かに支えられていた。
……自分が何をされているのかを理解した時、太陽仔は口を開いた。
「捨てとけよ。無駄に重いんだから」
「……」
よいしょ、と。
太陽仔が目覚めて第一声が憎まれ口を叩くや否や彼女は背負い直す。先ほど以上に強く脚を捕まえる彼女の手に力が入っていた。
視界は変わらず暗かった。彼女が頭に被った黒いウィンプルが完全に視界を塞いでいた。首を動かすと地面がゆっくりと、歩くような速さで移ろいでいるのが見える。
夢見の森からもう抜けたらしい。
夢見の森は別に浄化されたわけではない。
こんなにのそのそ歩いてはゾンビに見つかろうなら逃げ切れないだろうに。そう、言外に太陽仔は訴えかけるものの彼女は──リーリアは聞くことはなかった。
事実、降りて歩こうにも全身が悲鳴をあげて動ける気がしない。
「……悪い」
「最初からそう言ってください」
鼻を鳴らしながらリーリアは言う。
彼女の腰には小さな袋が結び付けられている。夢見の花粉は無事回収したらしい。
「ずっと、こんなことを?」
命がいくつあっても足りないでしょう。と言わんばかりのリーリアの呆れ混じりの物言いが飛んでくる。
「……たまにやってるだけだ」
「たまに」
嘘をつくな。ほぼ毎日やってるでしょう。
と言いたい感情を抑えてるのがありありとするオウム返し。
言われてみればアルセゾンにやって来てから戦闘後毎度倒れていると太陽仔は回顧する。とはいえ相手というか状況が悪いのだ。俺は悪くない、と心の中で自己弁護してみる。
……虚しくなって来た。
実を言えば、太陽仔はおてんこさまに怒られた時があった。
『お前は自らの命を軽んじ過ぎている!』
そんなつもりなどなかったというのにと太陽仔は言うが第三者からすれば軽んじでいるように見えるようで。
その昔、イモータルを初めて倒した時に半死半生に陥った事がある。それが先程のおてんこさまの怒号に繋がるわけだが。
「……この後、妊婦の夢の世界に行くって事か。夢の世界ってどんなのだ?」
無理やり話題を逸らした。
流石に強引過ぎるだろうという自覚は太陽仔にはあったし、リーリアに何かを言われる予感はしていた。けれども意外にもリーリアはこの事に何も言うことはなかった。
「私も一度も行った事は無いし説明は出来ない……かな。けれどもあまり楽しいものではないのは確かね」
「無いのか」
「そもそもこのようなケース自体稀。基本的に完全な手遅れだったりするし、修道女も万が一の時も不妊の加護を受けているし。事実上必要はあまりなかったとも言うのだけれども」
だが、あの夢見の木にいた修道女は妊娠していた。あれはなんだったのだろう、と。
そんな疑問が太陽仔の頭の中で過ぎる。それに──
「先触れって奴もどんな奴なのかもわからないって事か」
前もって敵がどんな奴か分かれば太陽銃を
とはいえ、未知の敵と戦うことなぞ日常茶飯事だ。その程度で逃げるつもりもないのだが。
「噂で聞いた話以外は……そうね。聞くところによるとナメクジに似ている、とか」
「なんじゃそりゃ」
どうしてナメクジなんだ。
たまに栽培やらしていると湧いてくるにくいあんちくしょうの事を思い出す。
あまり強いイメージこそはないものの、見てて気分の良いものではないのは確かだ。
「塩でもぶち撒けたら溶けるかな……」
太陽仔のあまりにも身も蓋もない感想にリーリアは「ふふっ」と笑う。
ナメクジは塩をかけたら溶けて死ぬのはいつ、どこでも共通認識として人の頭の中にあるのだ。
「そうだと楽でいいわね」
「帰ったら買ってくか」
いたずら小僧じみたやり口だ。それを自覚したリーリアと太陽仔の抑え笑いが人通りのない街道だとお互いによく聞こえた。
太陽仔の身体は相変わらず悲鳴をあげている。まだ動くには少し時間がかかりそうだ。
「悪い、ちょっと休む」
会話が途切れた時、太陽仔は体をリーリアの背中に預けた。それに気付いたのか、リーリアももう一度背負い直す。
その動きはちょっとぎこちなかった。
◆◆◆◆◆
「おかえりなさい……っ?」
修道院に帰った時、ハーニャは豆鉄砲を喰らった鳩の如き目をした。
何ぶん、太陽仔を背負っていたリーリアというどこか既視感のある光景を目にしたからだ。
「一体何が」
「少し、ね。花粉は回収出来たわ」
リーリアは成果物の袋を差し出すと、そのままハーニャは中身を改めるより先にあらかじめ用意したのだろう材料たちのもとへと持っていった。
「このまま報告は秘薬を作りながら聞きます。あまり時間はかけられませんから」
そこからはハーニャの手際は良かった。
こうして今のように浄化の姉妹の片割れとして動くまで膨大な量の治療魔法や、薬の精製などを頭に叩き込んだ彼女だ。
リーリアはこういった事はからっきしだ。故にハーニャの事を尊敬していた。
太陽仔は一旦、壁際に寝かせておく。
幻惑が収まったとはいえ、自らを太陽銃に食わせた反動が来ている。
もう歩けるとはいえ安静だ。
「……で、彼はまた滅茶苦茶をやったのですか。今度は太陽銃の燃料になって。この人は自分の命を軽んじ過ぎてませんか」
リーリアの報告を一通り耳にしたハーニャのコメントがこれである。その瞬間ピクリ、と太陽仔の肩が動いた事に気付いたリーリアは苦笑いした。
「まったく、そうね」
「いや、貴女も人の事言えませんよ」
「えっ」
「え???」
双方、要領を得ず沈黙。
リーリアは自分が自分の命を軽んじた記憶はない。荒事が多いのだから当然の傷ならいくらでもついたもののそこに軽んじているつもりなどなかった。
ハーニャはリーリアも太陽仔も同じ穴の狢と思っていた。
当然の如く他人のために命を投げ出すような、気付けば死にかけている。言い方を変えれば死に好かれている。
そういう星周りの下にいるように思えた。
それでも解決してみせるリーリアの事を、ハーニャは尊敬していた。けれどもうっかりすれば死にそうな事もあってか説教はするが。
今回の場合太陽仔も本格的にハーニャからすればリーリアと同類と見た。このまま死なれたら彼女が悲しむ事になる。
リーリアは気付いていない。太陽仔に対してシンパシーめいた目線を送っている事を。ハーニャは気付いている。
「……夢見の木には細工がされていた様子だった。牧師さんの太陽銃の部品が夢見の木に寄生していた魔物が取り込んでいたわ。それに──彼を知るらしい何者かが私たちに接触をしてきた。……髑髏の仮面をしていた黒ずくめ。それでいて私たちの知らない未知の転移魔法を使っていた。今のところそれくらいしか分かる事はないのだけれども」
あの髑髏の仮面については太陽仔もリーリアも要領を得ない回答しかできないのが実情だった。とはいえ太陽仔が思い切り不愉快そうな顔をしていた事はリーリアの脳裏に深く焼きついている。
「随分ときな臭い状況ですね。……出来ました」
気付けばハーニャの手元には薬瓶。
手渡されるとずっしりとした重さがリーリアの手に伝わった。瓶の重さか、それとも薬液の重さか。
「いつのまに」
「あまり悠長にはしていられませんからね。兵は拙速を尊ぶ、このような言葉もありますから」
ハーニャは博識だ。
リーリアの知らない言葉をよく知っている。とはいえ言わんとしている事はなんとなく理解は出来た。
「俺も行こう」
その時、壁際で倒れていた太陽仔がむくりと立ち上がりふらふらとハーニャとリーリアのもとへと赴く。そんな身体で戦うつもりなのか、とリーリアは驚愕を。ハーニャは呆れを覚えた。
「駄目です」
当然、即答。
ハーニャの突っぱねるような物言いに太陽仔は首を傾げた。首を傾げたいのは自分の方だ、とハーニャは心の中で思うものの口にはしない。
「え」
「報告によると夢見の花粉に対する耐性が貴方の場合ほとんどありません。そんな貴方に有毒性を取り除いたとはいえ夢魔の秘薬を使えばどうなるのか、安全の保証が一切出来ません。それに何より、今の状態の貴方を行かせるわけにはいきません」
ピシャリと跳ね除ける。
太陽仔の状態は素人目から見ても異常、もとい満身創痍のそれだった。
「現実世界じゃないなら現実のダメージとか踏み倒し出来ないのか」
「現実世界の状態はそのまま夢の世界に持ち込まれます。そして夢の世界での物理的なダメージは現実世界に持ち込まれませんが精神がどうなるか──最悪廃人になりますよ」
何かしらの冗談や嘘の類ではない事はハーニャの目を見れば分かる事だった。
リーリアはアルセゾンではない修道院にて廃人と化したシスターを知っている。
不妊の加護を破られ、何処とも知れぬナニカに子種を植え付けられた修道女の末路を、リーリアは知っている。
あの夢見の木の養分にされた修道女の亡骸もそうだが、仮に夢見の花粉を手に入れたとしても先触れを倒せなければ意味がない。
忌み子を孕んだ修道女は胎の中のそれを始末すべく夢の中に飛び込みそして──その精神は現世に還らず。廃人となった。
今でも覚えている。その胎が胎動してまるでスライムのように蠢いてるその様を。そして、まるで糸の切れた人形のように四肢をだらしなく放り投げ、足の付け根から血混じりの──あらゆる体液が入り混じった水溜りを作っていたのを。
そして、他の修道女がせめてもの情けと廃人と化したその修道女だった肉塊の生命を、胎の中の忌み子共々断ったことを。
忌み子が一つでも産まれれば、母は力尽き、その地は瘴気に満ちる。
短い時間で人間の何十倍もある体躯の異形となり、人を喰らい、時として苗床にする。
あの妊婦を厄災の火種にはしたくはない。
そして、あの太陽仔をあの修道女のようにはしたくはなかった。
ハーニャの忠告に対しても不服げな太陽仔を、リーリアは手で制する。
言葉は不要だった。双方無言の睨み合いが始まる。そしてハーニャが同じく太陽仔をじとー、と見る。
「…………」
「…………」
「…………」
2対1。
否。
「なぁ、牧師さん。素人の俺が言うのもなんなんだが……休んでおいた方がいいと思うぞ。素人目から見ても干からびた大根みたいだし」
一連のやり取りを黙って見ていたはずの妊婦の弟が追い討ちをかけた。
「ひ、干からびた……大根……」
最終的に折れたのは、太陽仔だった。
弟の忌憚のない物言いに近くにあった立て鏡を見ながらぺたぺたと手で干からびた大根呼ばわりされた自分の顔に触れていた。
リーリアとしてはそれが好都合だった。多少メンタルに傷が入る程度なら、廃人になるよりはずっと安いものだ。
「これより
一応前知識として多少の情報はリーリアも耳にしてはいる。けれども古い文献と直近の失敗例しか知らないし知る術も持ってなどいない。だが……
「先触れと交戦して真っ当な状態で生還した記述は多くはありません。やられても怪我こそしないかもしれませんが、精神に何かしらの悪影響を受けるかもしれません。私たちには加護が備わっていますが、限度があります。何処まで通用するか……」
とはハーニャは言うもののリーリアを止めるには不十分過ぎる警告だった。
無言で頷くリーリアにハーニャは少し深呼吸をする。これまで何が起こるかわからない事にずっと首を突っ込み続けてきた。──今更迷っても仕方がない。
夢魔の秘薬は一口含んだだけでも効果がある、ある種の劇物だ。
眠った状態の妊婦の前でリーリアがそれを一口含んだ次の瞬間だった。
その透き通るような瞳が虚に濁り、ぱたりとその身を床に伏した。
「だ、大丈夫なのか?」
突然得体の知れない薬を飲んだ途端に倒れたようにしか見えない光景を見せられた妊婦の弟は思わず不安を口にする。
「後は……彼女次第です」
それにハーニャは神妙な顔持ちで、倒れたリーリアの体勢を整えてから妊婦共々、1人祈ることしかできなかった。
それは──太陽仔も同じであった。
リーリア→太陽仔
シンパシーめいたものを無意識的に感じている
なんかすごい頑固
ほっとくと死にそう
太陽仔→リーリア
目のやり場に困る。その姿で修道女は無理があるだろ
なんかすごい頑固
ほっとくと死にそう
こんな感じの距離感
主要人物リストと頻出用語の解説とか要りますかね……?
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いる。
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無くても大丈夫やない?