エ〇ゲ世界で或る上位存在曰く「叫べ、太陽ォォォ!」 作:糸をなんとかしろ!
TRAP!
[トラップ解除方法]
敵を全て倒せ!
血呑み沼地
〜チノミヌマチ〜
ヒル人間の数はざっと見10体。
おそらくこのまままともに戦えば太陽仔もリーリアも忌み子を始末するだけの魔力を使い切るのは目に見えている。
ヒル系の敵は杖や近接格闘術による殴打はまともに通じない上に、魔法矢も太陽弾も微妙に通らない。
となれば魔力を使った近接攻撃。太陽仔ならサムライ、リーリアなら剣の魔法が有効となる訳だがコストは相応に嵩む。
ヒル人間はうねうねとその細長い体躯と体躯を絡み合わせて作り上げた足のようなものを動かしてリーリアと太陽仔の方へと向かってその身を捩らせる。
そしてそのまま腕を振るう。ぶん! と空気を裂く音を立てて伸びるそれは人間の腕の長さの何倍にも渡る長さで太陽仔を襲う。
即座に太陽銃で弾き返すものの、もう一撃が飛んでくる。これもまた弾く。
リーチもそこそこ長い。大雑把に槍1本分と言ったところか。
下手に距離を取ればやられる。
リーリアも同じくカウンター気味に杖で弾く。
連続で放たれる触手の鞭。反撃手段を持たない人間が一度でも捕まろうなら終わりだ。
──あの男、まだ捕まっていないよな?
あのグラサン男が無事かどうかを気にした一瞬の集中力の解れが命取りだった。
太陽仔の腕にぶよぶよとした触手が巻き付く。
──しまった!
あのグラサン男は無事だったものの、太陽仔は無事ではなかった。
抵抗すれば腕を引きちぎられる程の勢いで体が引き寄せられる。
「牧師さん!」
「チィッ!」
喰われるものか。リーリアの悲鳴にも似た叫び声に動じることなく太陽仔は太陽銃を拘束された手から空いた手に持ち替え、光の刃で即座にその触手を切り裂く。追い討ちに飛んでくる別の触手を弾きながらリーリアと再び合流する。
「取り敢えずこの男を頼む」
「何を……」
自棄になったんじゃあるまいなと言わんばかりのリーリアの視線に太陽仔は首を横に振った。
「彼が後ろにいると気になって仕方ないんだ。それと、あとちょっとの間だけでいい。おれを1人にさせてくれ」
「……何か秘策があるのね」
何かを察したリーリア。
察しが良くて助かると太陽仔は「へっ」と笑う。そしてその辺にあった石ころをヒル人間に投げつけた。
効くとは思ってもいなかった。
とはいえぺしっ、と触手で簡単に弾かれる光景を目の当たりにすると少しムキになって追加で石を投げつけた。
「……人間のフリをするのが下手くそなんだよ。バケモン共。そんなに人間にでもコンプレックス持ってんのか。
見え透いた挑発。
とはいえリーリアとグラサン男が戦線を離脱した事で標的は太陽仔だけになった。
銃口を向けながら近寄ると、早速ヒル人間が触手を伸ばす。
動きは単調、銃身で弾き飛ばす。
そして、黒い地面を蹴り出す。
無造作にヒル人間の触手パンチを時には弾き、時には飛び避け、動き回る。
そして太陽仔の背後から飛んでくる触手。そのまま行けば首を絞めて骨を折る事は出来るだろう。とはいえそれに気付かない太陽仔ではない。
首に触手が巻きつこうとしたその瞬間、太陽仔の姿がかき消えた。
瞬間移動を可能とする月光魔法。その名も
──ゼロシフト*1
ヒル人間の触手が届かない距離まで瞬時に移動した太陽仔に困惑したのだろう。ヒル人間の動きが僅かに止まる。
狙い通りだと太陽仔がほくそ笑んだ瞬間、心臓を針でチクリと刺されるような痛みが襲った。
月光魔法とは言うが、その性質は暗黒魔法寄りのものだ。
故に代償として太陽仔の体を傷つける。とはいえ首の骨を折られるよりはマシだ。
太陽仔にヒル人間もイラつき始めたのだろう。
あたり構わず振り回し始める。獣並みの知性はあるらしい。とはいえ獣は獣でもチームプレイはできないタイプの獣と見た。それを証拠に──
ヒル人間はヒル人間に絡みつき、引き寄せている。
太陽仔が敢えてヒル人間とヒル人間の間に挟まるように位置取り、触手を避ける。避ける。避ける。思う方向に太陽銃で弾く。
その結果何が起こったのかは言うまでもなく。
ヒル人間はヒル人間に絡みつき、引き寄せ、絡み合う。巨大なヒルの塊が出来上がっていた。
ヒル人間と言うには人の形を離れすぎている。ヒルの塊に出来ることは一つ。
あとは──丸々掻っ捌くだけ。
「やっちまえ。……カゲキに!」
そう、太陽仔が誰かに促した瞬間何かが青白い残光を残してズドン、と何かが空からヒルの塊に落雷した。
落ちて来たのはリーリアだ。
半ば沼に沈んだ小屋の上を足掛かりにそのまま落下の勢いでヒルの塊に剣の魔法で叩き切ったら訳だ。当然無数のヒルたちによって出来上がった塊に一撃入れたところで、まだ無傷のヒルがいる。
そのままリーリアは泥水を跳ね上げながら次に横、斜めと青白い閃光を放つ杖を振るった。
めった斬りだ。
その回数が両手で数え終わるよりも先にヒルの塊は細かな肉の山に成り果てていた。
「よかった。無事で」
返り血をちょっと浴びたリーリアが太陽仔の無事を確認するや否や微笑む。
なんとなくとはいえ意図を察していたのだろう。少し想定したより早い彼女の復帰に太陽仔はサムズアップで返した。
「逃げるのは得意なんでな。で、あの男は」
「物陰に隠れさせてるわ。下手に遠くまで連れて行っても危険だし、それに荷物を回収しておきたいと聞かないのよ」
「荷物って……あぁ、アレか」
荷台に積まれた木箱やら袋やらを一瞥してから太陽仔はため息をついた。
運び屋なのか商人なのかは分からないが、どちらにしても商売道具なのだろう。
彼にとって命に並ぶほど大事なものだと言うことは容易に察しがつく。
幸いあのヒルや魔物からすればどうでもいいのか完全に放置されていた。
「取り敢えず運んでやるか……」
「そうね」
2人が荷台へとつま先を向けたその時だった。──リーリアが足を止めた。
突然の彼女の行動に不審に思った太陽仔が彼女の名前を呼ぶ。
「リーリア?」
「………………来る」
「ッ!」
一歩遅れて太陽仔の肌が粟立つ。
この感覚は先日、妊婦の腹に触れた時の感覚。忌み子が近くに迫っているという合図めいたもの。
裏付けるが如く、地面から唸り声じみた地響きがした。
そしてそれは──現れた。
沼の忌み子。
予めハーニャが教えてくれたあのフォルムそのものの化け物が沼の底から突き破るようにして現れた。ヒルのように長く、人間の何倍ものある黒い体躯から不釣り合いな赤子の顔。
誰もがこの異形を見ればこう思うだろう。
『化け物』と。
どくん、どくん、とその身が静脈のように蠢いている。
あの妊婦が身籠った赤子の行き着く先がこれか。そう思うと太陽仔は身震いした。
眼前の異形のその口が大きく開け放たれたその時。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!」
獣の鳴き声と、赤子の夜泣き声、金属を擦り合う音を綯交ぜにしたような
耳がズタズタに切り裂かれそうな音に太陽仔とリーリアは思わず耳を塞いだ。
「チッ……塩でどうにかなるような奴じゃないか」
あんな体躯では太陽銃で焼き尽くすしかないだろう。太陽銃の銃口を向けたその次の瞬間。
足元に黒い光が弾けた。
「「!?」」
明らかに太陽仔を狙ったその光に太陽仔もリーリアも飛んできた方に視線を移した。
沼の忌み子。その頭上。
「骸骨頭……!」
そこにいたのは、夢見の森で突如として現れた骸骨頭。その手には見覚えのある黒い機械。
目の当たりにした瞬間、リーリアは目を見開き、太陽仔は絶句した。
リーリアは何故、太陽仔と同じ形の銃を持っているのかという困惑を。
太陽仔は何故こいつがその銃を持っている、という困惑を。
暗黒銃ガン・デル・ヘル。
太陽銃と対を成す魔法機械。その力はガン・デル・ソルと同等であるが太陽銃が太陽の力を借りるのに対してこちらは暗黒の力を借りる代物だ。
これを持つ者を太陽仔はよく知っている。──太陽仔の脳裏に黒いロングコートと、白いマフラーを纏う男の後ろ姿が浮かぶ。
──サバタ?
そんな馬鹿な話があるか。
あの男に限ってそんな話があるか。不意に浮かんだ思考を内心拒否している太陽仔に気付いたか骸骨頭はせせら笑った。
「なんでお前が暗黒銃を持っている? って言いたげな顔だなァ、兄弟」
──ではないな。
わざわざ中途半端に仮面を被る必要がどこにあるのか。そして暗黒銃をこれみよがしに見せつけているこの行為。サバタの性格からあまりにも程遠すぎる。
あの男なら他者を欺くにしてももっと周到にやる。
「魔法機械とはかつて存在せし一族の遺したロストテクノロジー。ワンオフの存在じゃない」
「暗黒銃も一つじゃないと言うわけか。わざわざそんなもん持ち出して何をする気だ、お前」
「なに、実験だよ」
「なんだと?」
骸骨頭は仮面に覆われているが故にその表情を窺い知ることは出来ないものの、ニヤケヅラになっているであろうことは太陽仔には容易に想像がついた。骸骨頭は銃口を太陽仔から流れるように沼の忌み子へと向ける。そして──
「あんこおおおおおおおおおく!」
黒いスプレッドを放射した。
攻撃とはまた違う。先のあの夢見の森で太陽仔が樹にやった事と似たようなことをしている。
太陽仔がアースの力で生命を吹き込んだように、あの骸骨頭は──ダークの力で何かを吹き込んでいる。その行為がまずい事を察知した太陽仔は真っ先に1発骸骨頭を狙い撃つ。
──外した!
「おっと、危ないな」
上体を軽く逸らすだけで避けられた。
その骸骨頭の横からリーリアが杖を振りかぶる。死角からの一閃。
修道女の浄化魔法は人間にはあまり通用しないらしいが、それでもあの暗黒物質を流し込む行為を止めるには充分な衝撃を与えられるはずだ。
しかし──リーリアの放つ一撃すら空を切った。
「なっ──」
リーリアは眼を大きく見開いた。何せ眼前に居たはずの骸骨男の姿はなく今この瞬間すぐ後ろで暗黒銃を彼女の背中に突きつけていたのだから。
あの技を太陽仔は良く知っている。
──コイツ、ゼロシフトを!
その上暗黒銃のフレームが提げ代わっている。色こそ違えどあの形状はヘビーショット型のフレーム:ファランクス*2だ。
「トロいな、母胎」
「あっ──」
よせ。
そう太陽仔が制止するより先にリーリアの唖然としたような声と共に銃声が木霊した。リーリアの身体が石ころのように宙を舞い、ゴシャア、と嫌な音を立てながら勢いよく地面に叩きつけられてから衝撃のままに転がる。
「野郎……!」
太陽銃の照準を骸骨頭に向ける。しかし弾丸は全てゼロシフトで躱される。相手が暗黒の力を持つというのならばゼロシフトもノーリスクで使えるのだろう。
とはいえ、あの骸骨頭の頭を吹っ飛ばすより先にリーリアの安否だった。
太陽仔も同じくゼロシフトを使い、吹っ飛ばされたリーリアへと向かうものの骸骨頭が立ちはだかる。向こうも使い手ならばこの魔法の弱点もよく知っているはずだった。故に──軌道を完全に読まれた上で太陽仔の目と鼻の先に現れる。咄嗟に太陽銃で骸骨頭の顔面目掛けて引き金を引いた瞬間、骸骨頭の手が太陽仔の手首に掌底。射線を逸らして躱したうえでそのまま掴んだ。
「そこをどけ、骸骨野郎」
空いた手で骸骨頭の顔面に一撃を入れようにも受け止められる。とはいえ純粋な力勝負で言うならば互角。
ゼロシフトは拘束状態では発動できない。つまりリーリアを助けるにはあとは近接格闘術で骸骨頭を投げ飛ばすか振り払うしかない。
「そういきり立つなよ兄弟。ほら、
当のリーリアは──触手に四肢を沼の忌み子の触手に掴まれていた。
それは磔にされた聖者か何かのようだった。しかし彼女の表情が恐怖に染まっていた。なにせ、今この瞬間──沼の忌み子が大口を開き鎌首をもたげていたのだから。
あのバケモノはリーリアを食おうとしている。
「あ……嫌……」
そしてそのまま──触手はリーリアを沼の忌み子本体に運んで頭からしゃぶりついた。そして麺類でも啜るかのように彼女の細いつま先までつるりと呑み込んでしまった。
「リーリアッ!」
「こいつはこのままあのデカいヒルもどきに卵を植え付けられる。そしてその体内の器官と融合し生きたままヒルどもを産み続ける器官の一部となるのさ」
「ほざけ。どういう理由で
双方片腕を封じられた状態での近接格闘戦だ。
やっとの思いで骸骨頭を捉えると、勢いよくそのぬかるんだ地面にその身を叩きつけるように投げ飛ばした。
「なッ──」
まさか自分が投げられるとは思わなかったのだろう驚愕の入り混じった短い声に太陽仔は少しばかり溜飲が下がるような感覚を覚えた。
あの骸骨頭の言う母胎にさせようならきっと、ハーニャが悲しむ。きっと教会で待っている仲間たちが悲しむ。
「そこで泥とキスしてろ!」
唾でも吐きかけてやらんとばかりに太陽仔の口から罵倒が飛ぶ。骸骨頭は先ほど投げ飛ばされて驚いたのは何だったのか、へらついた声色に戻っていた。
地面に横たわってもなおも余裕でいるつもりの態度は太陽仔の神経を逆なでするには充分だった。
「ククク……お断りだ。俺にも選ぶ権利がある。さて特等席で君の輝かしい抵抗を見物させてもらうよ。さぁ、太陽意思の代行者くん、興奮のバトルを見せてくれ!」
「!」
口の減らない骸骨頭に再び太陽弾を放つ。
しかし暗黒転移を発動したのか、命中するより先に骸骨頭の姿は掻き消え空振り地面に刺さった太陽弾がジュッと音を立てぬかるみの水分を蒸発させた。
──逃げたか。
とはいえ考え方を変えればリーリアを救い出すための邪魔が居なくなったことも意味していた。沼地の忌み子が次の餌である太陽仔目掛けて泥をかき分けて突き進む。
その体躯で体当たりされようなら、肋骨が砕けヴァンパイアハンター生命が断たれる事間違いなしだ。
とはいえ──太陽仔はそのまま逃げるそぶりもなくその迫り来る巨大な赤子の顔の形をしたそれに太陽銃を向けていた。
元々「カゲキに」ってところは「過激に」って漢字表記だったんですけど、発作が出ました。ゆるして
やっちゃるぜ!(幻聴)
そしてゼロシフトの件。
サバタ直伝のゼロシフトを発動するたびに太陽仔の身体は微量のダメージが入っています。ゲーム中で言うならヤツの身体の上に数ダメージ相当の数字が出てるわけです。
主要人物リストと頻出用語の解説とか要りますかね……?
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いる。
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無くても大丈夫やない?