エ〇ゲ世界で或る上位存在曰く「叫べ、太陽ォォォ!」 作:糸をなんとかしろ!
アルセゾン修道院に戻るとリーリアの事を即ハーニャに診せた。
なにぶん異形の卵を産み付けられたということもあり突然孵化した場合彼女もタダでは済まないことは目に見えていた。
Mは無事にアルセゾンへ送ることが出来たものの、リーリアはどうしたものか。
ハーニャ曰く、あのまま孵化した場合内側……つまり内臓を食い荒らしてから体を食い破ってヒルが産まれるのだという。太陽仔が速攻を掛けなければ帰還中孵化していた可能性があったとかなんとか。
彼女の容態を聞こうにも「治療中です!」とハーニャに修道院から追い出されてしまった。完全に手持ち無沙汰と化した太陽仔はその庭でただ立ち尽くしていた。
餅は餅屋。医療についてからきしの太陽仔に出来ることなど黙して待つことくらいだ。
「……Mか」
それからしばらくして、来訪者が一人。
グラサンの金髪男。そう、Mだった。仕事を終えたからなのか、それとも手ぶらになったからなのか肩の力が抜けているように思える。
リーリアかハーニャに用でもあるのかと悟った太陽仔はMを手で制した。
「悪いが今は出入り禁止だ。治療中だそうだ」
「あの嬢ちゃんのか」
「あぁ。ところで荷物の納品は済んだのか」
「無事な。報酬は弾んださ」
「物流、死んでそうだものな」
アルセゾンにおいて他の街や村へのアクセスが今となっては困難を極めるようになっていた。
事実、外に出ればゾンビやら巨大ヒルやら妙なスライムもどきやらに襲われる。純粋な武力では駆逐困難となれば当然アルセゾンに向かっての荷物が届かなくなる。
このような情勢でも荷物を届けに来てくれるMのような存在はこれ以上にない程に有難い存在と言えた。
「用心棒代を持ち逃げされた事が心残りだが贅沢は言うまい」
「先払いだったのか」
「半額程度な。用心棒として雇ったあのチンピラども、筋は良いと思っていたのだが結局何もせずに逃げやがった。まぁ、結果的にこうして助かったし
「それが良い。死ぬよりはマシだ。生きてりゃ銭は作れる」
「違いない」
いくらだったかは知る由もないがこうして聖職者の後始末に巻き込まれて無事助かったのだから安いものだろう。生きていれば銭は作れる。
太陽仔とMの乾いた笑いがこだました。
「そう言えばあんた」
「何だ」
そんな中、太陽仔が切り出した。
「あんた、一旦Mと呼べって言っていたが、あれはどういう意味だ」
言うまでもなくそれは偽名だろう。あの名前がアルファベットのMであることは明白だ。
太陽仔としては本名が知りたいわけではない。わざわざあんな状況で偽名を名乗った魂胆が知りたかった。
「あぁアレか」
なんの事もなげにMは口を開く。ややあって言葉を続けた。
それもひどく言いにくそうに。
「……俺には記憶がないんだ」
「は?」
そんなカミングアウトに太陽仔も思わず素っ頓狂な声を上げた。
記憶喪失。
真っ先に思い出したのがあの
「とはいっても、飯も食えるしトイレにも行ける。問題が俺が何者であるのか、ということだ」
かつて、旧世紀*1の先人はこう言った。
我々はどこから来たのか。我々は何者か。我々はどこへ行くのか。と。
「……哲学だな」
「深刻な顔をして茶化すな。記憶が断片的になっていた事もあって生活には困らなかったが、厄介な事があった。俺の名前が思い出せない、ということだった」
「Mっていうのは」
「そうだ。それは便宜上付けた
「何が」
神妙な顔持ちで太陽仔とMが睨めっこじみた牽制をずい、と始める。
よっぽど謎めいていて重要なことに違いない、と太陽仔は身構えていると、Mはひどくシリアスな声色でその答えを告げた。
「Mという、文字が……」
「…………そうか」
シリアスモード終了。と言わんばかりに太陽仔とMは睨めっこをやめた。
なんだよ、と言わんばかりに肩から力を抜いているとMは話を続けた。
「記憶がないとはいえ飯がなければ生きてはいけない。金がなければ飯も手に入らない。だからこうして商売をすることにした」
「
「少し語弊がある。物も売るし何かの手伝いもする。実態は
同時に疑念が浮かぶ。
この男、もしや以前やり合ったチンピラ連中の仲間なのではないかという事だ。あの時Mの姿は見かけなかったとはいえもし連中の仲間なら場合によっては……と太陽仔が身構える。
それを察したMは「な、なんだ?」と同じく身構えた。
「近くで棺桶は見かけなかったか」
「棺桶? お、オイ……まさかあれ、呪いのアイテムだって言うのか?」
何を想像したのか見当違いな反応。あの場所とは全く関係ない所で拾ったという事か。
ひとまず安心。下手に身構えた己の愚かさを太陽仔は呪いながらMの問いに敢えて頷いた。
「あぁ、
「ヴァ……ヴァッ!? アンタ……何者だ?」
乗ってくれたのか、本気で怯えているのか。たじろぐMに太陽仔はへらへらと開き直って見せた。
「ただの巡回牧師だよ」
「嘘をつけぇ! どう見てもお前それ……」
お前のような牧師がいるか。
そう言わんばかりに太陽仔の衣装を一瞥する。もう既にこの男は気付いている。己がこの地において異物であるように、太陽仔もまた異物であるという事を。
「それにその手に持った妙な銃に
「そういうアンタもだろう。そんな服装してるようなのをこの辺で見た事がない。アンタみたいに穴ぼこに記憶は吹っ飛んじゃいないが」
「…………」
「…………」
お互い苦労しているらしい。
このアルセゾンの地において太陽仔もMも異物。2人とも示し合わせたように大きくため息をついた。
太陽仔も薄々感づいていた。遠く離れた場所に飛ばされたとかそんな生易しいレベルの話ではない。世紀末現象ーーあれはありとあらゆる時代、場所が異なる場所から飛ばされる事がある。Mもおそらくは違う時代か遥か離れた場所からやってきた哀れな子羊だ。
おてんこさまがたまにする昔話で似たような話があった。
世紀末現象で
逆にジャンゴとおてんこさまが世紀末現象に巻き込まれて
それと似たような事が今、太陽仔の身に起きている。
あまりにも現実離れしていると一蹴しても現実は現実だ。
「薄々感じてたんだ。ここにいるのはちっとやそっと離れた場所とかいうレベルじゃない。迷い込んだこの場所が一体何なのか、戻るためにはどこへ行けばいいのか、皆目見当もつかん」
あのゾンビといいこれまで見てきた魔物といい、かつて見てきたアンデッドやモンスターとも系統が異なるように太陽仔には見えた。
「そうだな」
帰る場所は違うかもしれない。けれども元居た場所で成すべき事があるのはきっと同じ。勿論、アルセゾンでやるべきことはある。
ロストした太陽銃パーツを取り戻し、おてんこさまの安否を確認し、そしてあの骸骨頭の正体を暴く。行き倒れていた所をリーリアやハーニャに救われた借りを返さなければならない。
それらを終えた後で自分はどうするのか。当然『帰る』のだ。
あるべき場所に。それはMも同じで――
「なら提案だが、俺と組まないか?」
Mの提案に太陽仔は答えないまま青空一つない曇天を見上げた。
どれだけかき分けたら青空が見えるのだろう。そう思えるほどに暗く濁った雲だった。目標こそあれど行先不透明な太陽仔そのもののような空だ。
このままむやみやたらに動いてもあの暗雲を切り裂く事は叶わない。ならばこの男の力を借りるべきか。
太陽仔は、Mの方に向き直るとMは話を続けた。
「お互い帰る手段は持ち合わせていない。けれども単独で探るよりも複数人で探った方が効率が良いだろう。無論タダでやれとは言わん。俺もお前もこの地でやるべきことがある。そうだろう? 俺はお前の仕事に手を貸そう。これでも便利屋だ。情報収集やら何やらは出来る。そしてお前は――」
「用心棒としてあんたの稼業を手伝え、ということか」
「察しがいいな。俺の稼業を手伝って貰う。いわゆる
とは言え、この男の稼業の内容によっては太陽仔のありようを歪める可能性だってあるわけで。少し考え込んだその時。
ぎぃ、と立て付けの悪い木の扉がゆっくり開くとハーニャの小さな体が姿を見せた。
「治療は無事終わりました」
「いよぉし!」
「!?」
真っ先に喜んだのは何故かMの方だった。当然太陽仔だって無事に済んだことを喜ばしく思っている。それでもMの喜びようはとんでもなかった。ガッツポーズまでしている。
ハーニャからすれば知らない男がリーリアの無事をひどく喜んでいる事には困惑を隠せず目をぱちくりとさせていた。
太陽仔からしても出会って間もない人間の無事をまるで自分のことのように喜ぶようなMの仕草に
ーーもしかしてこいつ……底抜けのいい奴なんじゃ?
などと思わずにはいられず二つ返事でこの男の提案に首を縦に振ろうかと思ったその矢先
「美女が失われるのはおr……いや、人類の損失だからな」
「あぁそう……」
叩きつけられた現実がMがただの女好きだった訳だが。Mがその見た目通りのチャラい男だったオチに太陽仔は酷く脱力した。
ハーニャもMの言動に「なんだこいつ」と言わんばかりにジトーっとした目を向けていた。ややあって思い出したかのように太陽仔に言葉の矛先を向けた。
「太陽仔様、お話があります」
「ん? あぁ……でもそういやこいつ……」
だがMもここに用事があったのだろう、と太陽仔がMの方を見る。しかしーー
「また今度にするさ。で、あの提案の件だが今すぐ決めなくてもいい。だが、お前にとっても悪い話では無いだろう。しばらくアルセゾンにいるからいつでも声をかけてくれ」
「…………」
そういってMは背を向け、手をサッと一振りして修道院の庭から去った。
一旦Mとの取り引きは棚上げだ。それよりもリーリアの無事の方が気がかりだった。
もうこれを読んでいる諸兄は世代だったり伝聞系だったり誰かのゲーム実況だかでご存知かもしれないけれどもロックマンエグゼもよろしくね!
ジャンゴとおてんこさま。そして伯爵、小島監督のそっくりさんも出てくるぞ!
Q:ロックマンエグゼイベントをパラレルにせず過去にあった出来事にした理由は?
A:続以降にいた終始記憶喪失の???(ソリッド・スネーク)よりもわかりやすい前例だった為。本編にロックマンと熱斗が出るとかいう伏線ではないです。ごめんなさい……
Q:ところでMが修道院に向かった理由って?
A:リーリアを口説こうとしていた。以上。
主要人物リストと頻出用語の解説とか要りますかね……?
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いる。
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無くても大丈夫やない?